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ごっどぶれすゆー スサノオ様本気出す?  作者: 宮城 英詞
災い転じて福と成す

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福の神の戦い方

 数日後、電気街の外れには、あちこちでど派手なスーツを着て周囲に睨みを効かせるお不動さんを見かけるようになっていた。

 極道な出で立ちの明王様が町中をうろうろする姿は、なんとも治安が悪くなったような感じを受け取るが、これは千住院の作った結界の効果である。

 彼曰く、間を払うため。お不動さんはあんな恐ろしい姿をしているそうである。

 そんな結界を街の数か所に配置し、文字通りにらみを利かす。

 すると、嘘のように関公様による居座り問題も起こらなくなっていた。

 俺と共に結界の様子を見回っていた千住院はその様子にほっと胸をなでおろしていた。

「どうにか今の縄張りは守れそうやな。あいつらこっちに手を出したら不味い事が解ったらおとなしいもんや。」

「感情的になってとびかかってこない分、手ごわさはありますけどね。」

 千住院の言葉に俺は条件付きながら同意した。

 何しろお不動様はじめ仏教の仏様は、仏法の守護者である。

 向こうから襲い掛かってくるものならともかく、遠目で見ているだけで何もしないモノを魔と断じることも懲らしめることもできない。

 そうと分かっているのか、関公様はこちらが結界を構築するや、ぱたりと越境行為をやめたのである。

 流石は武人。

 やみくもに喧嘩を売るわけでもなく、毎度やることが戦略的で隙が無い。

「ほんで?福の神の方は美味いことやっとるんかいな?」

「はい。もうだいぶ影響が出始めてきたころです。」

 そう言うと、俺たちは現在対策本部になっているホテルへと向かった。

 


 対策室の中は並ぶパソコンの前に神々が座り何やら作業をしている光景が広がっていた。24時間体制で働いているのか、向こうには仮眠を取っている神々もいた。

さながら締め日や締め切りを控えた月末の事務所のような空気である。足を踏み入れた俺は、仕事をしてすっかり元の体形に戻った明石さんに声をかける。

「どうですか調子は?」

「上々や!見てみぃ。トイレットペーパーにマスクに消毒液にゲーム機にプラモ。あいつらが買い占めてそうなもんの値段がガンガンに下がってきてるわ。特にマスクなんか、山のように在庫がダブついて、投げ売りが始まっとる。」

言いつつ、パソコンでグラフを見せてくれる明石さん。

そうなのである、福の神たちが行ったのは、その力を使って値段が吊り上げられたものを大量に供給するように働きかける事だった。

まずはマスクが無用で配られ、やけくそのような量が生産された。

結果、価格が暴落し、一時は一箱数千円でも手に入らなかったものがひどく安い値段で売られるようになってきたのである。

この戦法は他の商品にも使われ、値上げ作戦は確実に在庫を大量に抱えるリスクに変貌し始めたのである。

物資の過剰供給でダメージを与えるという。

福の神の力を存分に発揮した戦術であった。

「ようこんな嫌がらせ思いつくなぁ。加減間違うと物価がおかしなるで?」

 千住院もほめていいのか呆れていいのかよくわからない様子である。

 確かに、市場では通常起きえないことが起きつつある。

 様々な神々の干渉があるのでこちらの思い通りいくとは限らないのだ。

 いきなり状況が変わったら、今度はこちらが在庫の山を抱える羽目になるのである。

 だが、明石さんはそのリスクも承知の上のようだった。

「まぁ、向こうが不自然な行いをして値段を吊り上げとるんやから。ある程度こっちが元に戻してるみたいなもんや。多少は仕方ないやろ。プラモやマスクなんか腐るもんやないしなぁ。せいぜい高値掴みしてもらお。」

 なるほど、商売の神ならではの対抗手段である。無茶な値上げと品不足に困る消費者と生産者を加護する形で、値上げを企む神に大損を背負わせようという訳である。

「あと、手の空いたもんで転売しとる奴を利用せえへんような空気をネットを中心に作り上げ取るところや。これも消費者をまもるためやな。」

「……モノは言いようですね。」

 流石に天変地異クラスのど派手な天罰を下すわけにはいかないとはいえ、やってることがどこかのネット配信者のそれである。

神の仕業なのでまぁ、正義なんだろうが、しかし、人間視点で見るとなんともやり口が陰湿である。

 そして、説明をして気分がのってきたのか明石さんは満面の笑みでトドメとばかりに俺たちにパソコンの画面を提示する。

 そこには最新のゲーム機の発売を示唆する表示があった。

「そして、トドメはこれや!ウチらの力で、最新ゲーム機の発売を前倒ししたったで!これで、今まで在庫抱えてた分は、みんな型落ちになるわ!」

 そう言って高らかに笑う明石さん。

 向こうが反則ギリギリの手を使ってくるならこちらも対抗するという事らしい。

 千住院の物言いではないが、良く思いつくものである。

 俺たちは二人で顔を見合わせた。

「……しかし、この程度で向こうが値を上げるんやろか?」

「たしかに、あんな強引な手を使って居座ってるくらいですからねぇ。」

 千住院の疑問に俺も頷いた。

 確かにこの嫌がらせは向こうに損はさせるだろうが、果たして撤退を決させるまでに至るのだろうか?

 何しろ相手が今まで手段を選ばずに仕掛けてきているのだ。

この程度で撤退を決意するようにも思えないし、なんのリアクションもしてこないとも考えにくい。

それには明石さんも楽観的では無いようだった。

「あれこれ考えとるけど、こちらとしては、あの電気街を占領してもええ事が無いと思わせるように仕向け、ほどほどで手打ちにするのが一番ええんやけどなぁ。このままエスカレートしたら最終的には街そのものを焼け野原にすることになってまうからなぁ。お互いが我慢比べのチキンレースや。」

「……神々による焦土作戦ですか。」

 なるほど、どんな手段であれ、土地なり市場なりにダメージが残る。明石さんとしてはできるだけ後に問題が残らいようにマイルドな形で手打ちにしたいのだろう。


 だが、事態は意外なほど速く動いた。

 数日後、定期的に交渉の機会をうかがっていた恵比寿様から朗報がもたらされた。

 それは、条件付きで南さんの身柄を返した上で交渉に応じるというものだった。

「なんとか、うまい事手打ちできそうで良かったですわ。」

 そう言ってえびす顔で書面を持ってきた恵比寿様。

だが、俺と明石さんそして社長は互いに顔を見合わせ、厳しい顔で頷いた。

こちらの攻撃がきいたのか?

しかしこれはおそらく厳しい交渉になる。

勝負はこれからだ。

俺たちは、この油断ならない交渉に覚悟して挑むことにした。


福の神の嫌がらせ

効いたかどうだかわからんが

一先ずできるよ話し合い

さてさて相手はどう出るか?

続きは次回のお楽しみ!

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