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ごっどぶれすゆー スサノオ様本気出す?  作者: 宮城 英詞
光の戦士

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光明は見えるか?

 数時間後、俺たちは岩倉さんを大阪郊外の寺のお堂に連れていくことに成功していた。

荷物と共に広い伽藍の真ん中に座る岩倉さんを確認して障子を閉めると、俺はお寺の廊下でほっと胸をなでおろす。

その隣で、千住院は不満げに首をうなだれていた。

「……なんでウチの寺やねん。」

 どうやら、なんだかんだ自分の実家に来ることになったことが不満であったらしい。

 俺はそれにここに来るまで何度も繰り返したことを言う。

「仕方ないでしょう!大阪市内の神社はスサノオ様に占拠されているし、飲食店はどこも閉まっているんですから。神降ろしなんて目立つ事できるのはにここくらいしかないんですよ!」

 疫病のせいでカラオケボックスはじめサービス業が壊滅状態な上、外でマスクでもしていなければ人が集まることもままならない。

 やったこともない神降ろしのような儀式を公園でやるわけにもいかない。

結果、ここに来たのは消去法の結果であった。

ここであれば適度な広さもあり、霊的加護もある上、宿泊施設としても活用可能だ。

「……緊急避難的処置。」

 そして、その隣で、急遽駆け付けた与根倉さんが相変わらずの仏頂面で頷く。

 それに千住院は頭を抱える。

「本名は晒したない言うてるのに……。」

 そう嘆く千住院の背後からお茶を持って千住院のお母さまが顔を出す。

「まぁまぁ、ヨシ君が友達連れてくるなんて珍しいからおばちゃんうれしいわ。榊さんもゆっくりしていってな。」

「……おかん、頼む。今だけはその名前で呼ぶな。」

 ああそうか、「千住院」って榊と同じで偽名だっけ。

 お母様の善意はあっても配慮のない言い方に俺は千住院の苦悩を理解した。

 どうも、与根倉さんが見えていない様子からして彼女も霊能力はないのだろう。

「……ところでヨシ君、あの別嬪さん誰?ひょっとして彼女?」

「仕事の上役って言うとるやろ……。ええから粗相のないように……ほんで、いらんこと言わんようにしてな。」

「まかしといて。」

無邪気にほほ笑みながら、岩倉さんの居るお堂に入っていく千住院母。

多分、この状況はあまり理解していないだろう。

ヨシ君の個人情報を開示しそうだが、この際は致し方ない。

「……で、ゆっくり話が聞けそうな環境は整いましたけど。どうすれば?」

「……憑依するには依り代の意志が邪魔。神々に近い心もしくは無の境地が必要。」

 俺の疑問に与根倉さんが答える。

 なるほど、神も降りてくるにはそれなりの下地が必要という事だろう。

変に我が強いと、先ほどのようになってしまうらしい。

「しかし、あの調子やと、無の境地からは程遠い感じやなぁ。」

「……神職の資格は持っているそうなんですけどねぇ。」

 千住院の言う通り、実にやり手な感じではあるが、裏を返せば自己顕示欲と都会の垢にまみれた感じがぬぐえない。本人に事情を説明しても急に心を無にすることなどできそうもない。

「たとえば、意識が無い時とかはどうでしょう?寝ている時とか……。」

「……それもあり。」

 俺の問いにそう答える与根倉さん。それに千住院はよし、と頷いた。

「ひとまずたらふく酒でも飲まして、今日はぐっすり寝てもらおう。その上で夜にでもゆっくり話を聞こうか。」

 確かにそれしかないようだ。

 俺たちは静かにうなづき。千住院の母に膳の支度をお願いすることにした。



「ああ、私お酒飲まないわよ。」

 そして、お堂での夕飯開始直前、いきなり計画は頓挫した。

 いい感じで話を盛り上げ、お酌しようとした千住院がお銚子を持ちながら見るからに硬直している。

「気を使ってもらって悪いけど、特に疫病が流行っている今、出先で飲み会とかして病気になったら大変じゃない?最近はマスコミもうるさいしね。そもそも、お酒なきゃコミュニケーション取れないって今時じゃないと思わない?大丈夫、お茶で十分よ。」

「……はぁ。」

 お堂にお膳という和式スタイルでそれなりに距離は離しているのだが、やはり疫病が気になる……と、いうか公務員としていつでも気を抜かないという事らしい。

「ウーロン茶とかあります?」

 なんの悪気もなくそういう岩倉さんに

「……そうですね。取ってきます。」

 そう言って、笑顔で外に行く千住院を俺は手伝うようなそぶりで追いかけた。


「……なんやろ?腹立つわー!」

 廊下に出るなつぶやく千住院。

 まぁ、あれがごく一般のできる公務員の今時の対応という事だろうか、しかし、ゆっくり熟睡してもらいたいこちらとしてはイラつく言いようであることは間違いがない。

「どうします?深夜まで待ちますか?」

「女性の部屋に忍び込む趣味はないけどこの際仕方ないか……。」

 今日の帰りは遅くなりそうだ。

 そう覚悟した時、俺の後ろにいた与根倉さんが俺の肩を叩いた

「……任せて。」

 彼女はそう言うとお堂の中に入っていった。

 さすがは神、これで何と神を降ろせそうだ。

そう二人で頷き思って二人で与根倉さんの後を追いかけだ俺たちは。

与根倉さんが与根倉さんの首を絞める光景を目の当たりにした。

多分岩倉さんの視点では与根倉さんは見えていないので、急に息苦しくなったように感じただろう。

俺たちが止める間もなく、岩倉さんは短いうめき声と共にその場に崩れ落ちた。

「……頸動脈を圧迫すれば数秒で昏倒。」※マネしないでください

「神のやることか!」

 神の奇跡どころかひどい実力行使である。

 さすがの千住院もその光景に引いている。

「……お前ら人の寺で事件起こす気か。」

 頭を抱えながら、岩倉さんを介抱するために駆け寄る俺たち。

 だが、岩倉さんは糸でつられた人形のような奇妙な姿勢でむくりと身を起こした。

「……ご面倒を、かけ、ま、した。我名は、アマテ、ラス。」

 首を項垂れながらではあるが、今回ははっきりあの声が岩倉さんから発せられる。

 どうやら神降ろしには成功したようだった。

 俺は、慌てて駆け寄ると、慎重に語り掛ける。

「あなたはアマテラス……天照大御神ですか?」

 俺の問いに岩倉さん……いや、アマテラス様が頷く。

「今、日本中ニ、対応するたメ、力を温存しテ、イマス。」

 先ほどよりはましだが、圏外ぎりぎりのラジオのような、とぎれとぎれの言葉。

 なるほど、直接来ずにこういう形で降りてきているにはそれなりに事情があるようだ。

 おそらく他の地域に穴が開かないようにするため、また消耗を防ぐための処置なのだろう。

 さらに、岩倉さんを受信機代わりにしているのでどうやらこのような状況になっているらしい。

「我々が、すべきことは何でしょう?」

 細かい前置きはこの際抜きにした方がよさそうだ。

 俺は無線機に答えるように、大きな声で、端的に質問を投げた。

「勅使ヲ、穢れた地へ誘イ、我ヲ、呼ぶべシ。イットキ、その場に降りリ、穢れを払わン。」

「……つまり、今のような神降ろしをやればいいんですね?」

 俺がそう言うと、アマテラス様はうなづき、そしてそのまま倒れ伏した。

「……あれ?私また意識失ってた?」

 そして間を開けず、頭を抱えて起き上がる岩倉さん。

 どうも交信はこの辺りが限界のようだが、文字通り光明が見えてきた。

 俺たちは顔を見合わせ。希望に満ちた表情で頷いた。


勅使をアレコレしてみれば

光明降りて光指す。

いよいよこれから反撃だけど

一体どうすりゃいいのかな?

神の言葉をどう示す?

それは次回のお楽しみ!

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