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ごっどぶれすゆー スサノオ様本気出す?  作者: 宮城 英詞
光の戦士

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勅使の役目を直視する

「勅使?勅使って……何ですか?」

 素朴な疑問。

 俺の言葉に千住院と岩倉さんがガクリと首を落とす。

「つまりや、天皇さんのお言葉を直接伝える使いや。世が世なら、お上の代理人として殿様が頭下げてお迎えせんならんほどの話なんやぞ。」

 そんなことも知らないのかと言いたげに千住院は答えた。

「……でも、今は違うんですよね。」

「まぁ、今の憲法やと法的な意味も拘束力もあらへんけどな。意味あるとすれば、霊的な儀式やろなぁ。」

 そう言う千住院の言葉に、岩倉さんはさらに胸をそらした。

「そう!この疫病の流行に対抗するために、宮内庁は勅使を各地の神社に派遣しているのよ。今回はここ大阪の今宮戎に来たというわけ!」

「つまり、神様に疫病が収まるようにお願いしに来た、と。」

「そういう事!」

 そう言いつつ、意識してるのか知らないができる女ポーズをとる岩倉さん。

それに俺は複雑な顔で眺めた。

確かに、国の霊的立場の代表なのだから、名誉ある立場と言えるだろう。

だがしかし、毎日神様と話している俺からすれば何をいまさらという気がしてならない。何しろ神様だってあの手この手で頑張っているのである。

「……これ、何か効果あるんですかね。」

 そっと小声で千住院に尋ねると千住院はなんとも言えない顔をする。

「まぁ、勅使という事になると、言ってみりゃ日本国民全体の意志を伝えることになるからなぁ。ワシら一人一人が話しするよりはパワーはすごいやろうけど……。」


 とそこまで言ったところでカタカタと音を鳴らしながら岩倉さんが震えだした。


 立ったまま白目をむいて痙攣する彼女がそのまま倒れそうになったので俺は慌てて彼女を抱きとめる。俺に抱き支えられてもいまだ痙攣は収まらずアワアワと声を上げている。どう考えても異常な状況だった。

「大丈夫ですか!岩倉さん!救急車を……」

 そこまで言ったところで俺の肩を千住院が掴んだ。

「待て!なんかが憑依しとるぞ。」

 どうも霊的な異変であると察知したらしい。彼は岩倉さんを二人で近くのベンチに腰掛けさせると、静かに語り掛けた。

「あなたはどなたですか?」

 千住院の言葉に岩倉さんの痙攣がぴたりと収まる。

 そして彼女は聞いたことない声で言葉を発した。

「ワガナハ……アマ、テ、ラス。」

「アマテラス!?」

 その言葉に俺たちは顔を見合わせた。

「……ハ、スサノオ……イサメル……キタ。」

 どうにも、無理やり言葉を発しているようで、実に聞き取りにくい。

「……モノヲ……リシ……テ……レヲハラ……ツイテハ……。」

「ああっ!聞き取れん!何が言いたいんじゃ!」

 電波状態の悪いラジオのようなとぎれとぎれの言葉に苛立ち、岩倉さんの肩を掴んでゆする千住院。

 揺さぶられ、岩倉さんの頭と手足ががくがく揺れる。

「ちょ、ちょっと、電化製品じゃないんですから!」

 さらに斜め45度の角度で手刀を入れそうになったのでさすがに千住院を止める俺。

 そして、もう一度彼女の声に耳を傾けようと目を向けると、そこには居眠りから覚めた後のような表情の岩倉さんがいた。

「……ああ、ごめんごめん。意識飛んでたわ。最近多いのよねぇ……熟睡できてないのかしら。」

 どうも、先ほどの記憶がないらしい。

ハンカチでよだれを拭き、首を傾げる彼女を確認すると。俺たちは彼女を尻目に少し離れた場所に移動し、小声で話し始めた。

「……今の、天照大御神様でしたよね?」

「そうや、皇祖神にして、大日如来の化身や。あのスサノオの姉、天敵と言ってもええ。これが勅使に降りてきたとなると……。」

「……社長の要請が届いて縁がつながったんですかね。」

「なんにせよ。強力な援軍なことは間違いないな。国家単位の霊的な援助や。」

 どうも宮内庁の職員に神の加護を与え、各地に派遣しているらしい。

言わば霊的な受信機みたいなものだろう。

 どうやら、我々は見捨てられてはいなかったようである。これを有効に活用しない手はない。いや、先ほどの霊障は、おそらく活用しろのメッセージなのだろう。

 それにしても……。

 俺たちは、後ろのベンチで呑気に化粧を直す彼女の様子を見た。

 どうも彼女は霊的な都合はほとんど理解していないようだ。

「……なんか、不完全な神降ろしやった気がしたが。あいつ大丈夫なんか?」

「……あの人、霊能力無いですからね。神様も憑依し辛いのでは?」

 俺の言葉に大体の状況が理解できたらしい、千住院は渋い顔でうつむいた。

「修行もしてない、煩悩まみれの人間やったらあんなもんか。多分ノイズがひどいんやろな。」

「……今時、霊能力で公務員試験は受かりませんからねぇ。」

 昔はどうだか知らないが、宮内庁も世俗的な機関である。今回のような災厄を想定して能力者を普段から集めるようなことができるはずもなく。こんな処置になったのだろう。

「なんにせよ、もう少し話を聞いて方針を固めたいな。どこかでもう一度じっくり神降ろしできればええんやが……。」

 確かに、これはもはや神の与えたチャンスに他ならない。ここでハイ、さよならというわけにはいかないだろう。

 そこまで話したところで、いい加減放置されていたことに気づいたらしい。背後のベンチの岩倉さんがこちらに声をかける。

「ねぇ、この辺で泊まれるところ探してるんだけど、どこかいい所ない?休業中や満室で部屋とれなくて困ってるのよ。」

 その声に、俺たちは顔を見合わせ彼女を案内することに決めた。

 せっかく派遣された勅使である。

 ぞんざいな扱いなどできようはずもなかった。


勅使の役目を直視すりゃ

神の言葉が降りてくる。

でも雑然邪念が多ければ

何すりゃいいかわからない

さて神の声を聴くためにゃ

一体どうすりゃいいのかな?

はてさてどうする榊君

続きは次回のお楽しみ!

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