表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごっどぶれすゆー スサノオ様本気出す?  作者: 宮城 英詞
何事も、水に流すが世の習い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/44

切り札、大祓!

 結局、なにが起こるのか知らされないまま会議は終了した。

 俺はなにかもやもやしたものを抱えたままその後の業務に打ち込むことになった。

 なぜ、俺に話そうとしないのか?

 そのモヤモヤがどうにも取れない。

 その話を聞いた社長は、いつもの祖霊様と将棋を打ちながら、なるほどと、だけ答え。将棋の盤面から目を離すことはなかった。

「……ほんで、あいつらはどうしたんや?」

「会議が終わったら、懇親会やるって、お供え物持って旅行に行っちゃいましたよ。」

 社長の問いに俺が呆れと疲労の混ざった回答を返す。

 そうなのである。

 朝早く会議が終わるや否や、皆各々にお供え物を持ち出し、皆で懇親会をすると言っていずこかに消えてしまったのである。

 まるで事態がすでに解決したかのような能天気さだった。

 徹夜明けで疲れるとかはそもそもないのだろうが、その勢いで自分の守備範囲から集団で姿を消すとは、ちょっと神々のやることと思えない。

 二、三日頼むといわれても、こちらは人間である。徹夜明けはさすがにつらい。

 そして社長は、

「そうか……。」

 と、言いつつ、ぴしゃりと駒を指す。

 それに俺はさすがに社長に問いたださざるを得なかった。

「社長、「大祓」って、お祓いするときのアレですよね?神様にとってはそんな大技なんですか?」

 さすがに俺もこの業界で仕事をしているのでその知識はある。

「大祓」とは神社で行われる穢れを落とすよう神に祈る儀式だ。だが神々の口からそれが出るのは考えてみれば初めてな気がする。

それにあの神々の様子。ただ事ではない、事態を解決するのにそれほど有効な手段なのだろうか。

社長はそれにしばし手を止め、やがて俺に向き直って口を開いた。

「人間の側の大祓っちゅうのはワシらにお願いする儀式でな。で、ワシらが「大祓いする」となると実際にそれをやることになる、ちゅうことかな?まぁ、確かにあれは神々の仕事や。与根倉の言う通り人間の榊君がかかわるべきことではない。まぁ、ひとまずは結果を見守ろうやないか。」

そういうと、社長の意識は盤面の中へと落ちていった。

どうにも、俺がかかわるといろいろ問題が起きることらしい。

一体何が起こるんだ?

その疑問は数日後、帰ってきた明石さんによってもたらされた。



「……海に流してきた!?」

 帰ってきた明石さんたちに種明かしをされ、俺はさすがに声を上げた。

「そうやねん、みんなでスサノオさんを誘い出して、日本海側で大宴会。……ほんで、酔いつぶれたところを筏に乗せて。瀬織津比売神せおりつひめさんにお願いして海の向こうに流してきてん。あとは、まぁ、速開都比売はやあきつひめさんがそれを受け取って、気吹戸主神いぶきどぬしさんが根の国に送り速佐須良比売神はやさすらひめさんが浄化をして完了。と、いうことやな。この手だけは使いたくなかったんやけど、この際しゃーないわ。 」

「さすがにあの霊威ですから、総がかりで酔いつぶすのも大変でしたよ。」

「……今頃は、海流に乗ってる。」

 浮き輪やら水着やらを片付けながら、物騒なことを言っている神々に俺は言葉を失った。

神々なら許されるかどうか知らないが、人間なら完全に犯罪クラスの所業である。思えば神話の時代、スサノオ様は高天原から追放されたというが。おなじような手法を使ったのであろうか?

「……え?これでいいんですか?パチンコ屋さんどうするんです?」

「それもちゃーんと手を回しておいたで。ほら、入って。」

 明石さんがそう言うと事務所に少女漫画から飛び出してきたような石鹸の匂いのする男性の神が入ってきた。

一体どういう神かわからず俺は顔をしかめる。

「あの?このお方は……?」

「難波神社からきてもろた。奇麗なスサノオさんや。」

「どうも、奇麗なスサノオです。」

「……自分で「奇麗」とか言わないでくださいよ。」

 元の穢れたスサノオ様とはキャラも何も違いすぎる穢れなきスサノオ様が握手を求めてきた。

 そういえば難波あたりにお社があるとは聞かされていたが、よく連れてきたものである。

 俺は握手に答えつつ、複雑な思いで穢れなきスサノオ様をながめた。

「パチンコ屋は当分こっちのスサノオ様に任しといたらええやろ。ええ感じにあっちのスサノオさんに穢れが集中しとったから、この辺も清らかになっていくで。これにて一件落着や!いやー、よかった、よかった。」

そう言って満面笑みの明石さん。

確かに穢れを水に流すのは人間も儀式でやるのだが、神ごと海に流すとは、想像もつかなかった。

確かに凝縮された穢れをまとめて流してしまったのだから、ここ数年の懸念は一挙に解決したわけである。

……しかし。

「……これでいいんですか?」

 なにか異様なお祝いムードの中。

 俺のつぶやきは答えのないままかき消されていった。





 そして、結論から言うと、良くなかったのである。

 俺は後日、今日の出来事を後悔の念をもって思い出すことになる。




穢れはすべて水に流し

一先ずこれで一件落着!

スサノオ様は海の向こう

世はすべて事も無し

だけどもこれでいいのかな?

なんだかこれじゃ終わらなそう?

果たして次の展開は?

続きは次章のお楽しみ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ