第13回『ダンジョンに蠢く怪物・ロックスパイダー4』
そうしてロックスパイダーの体の構造について博士から説明を受けている最中。
不意にロックスパイダーから小さな機械音が聞こえ始めました。
「あ、いけない。すぐにカメラを遠ざけてください」
慌てる博士に言われるがまま、魔力球カメラをロックスパイダーのいる巣穴から脱出させます。
そのまま、博士の指示に従って魔力球カメラを暗視モード……つまり光源となる光を消した状態での撮影へと切り替えることに。
突然の指示に驚いた我々でしたが、博士は神妙な面持ちで言葉を続けます。
「先ほど説明した通り、ロックスパイダーが擬態をやめるのは獲物が糸に引っ掛かった時です。つまり……」
なるほど、つまりは獲物が引っ掛かったからこそロックスパイダーが動きだしたということ。
そこに魔力球カメラがあっては、彼らの狩猟の邪魔になるだけでなく、カメラを邪魔ものとして攻撃してくる可能性まであります。それでは観察にならないので、こうして慌てて移動させたというわけですね。
「ロックスパイダーが獲物の方へ動きだすまで、カメラはなるべく壁の近くに移動させて、動かさないようにしてください。
彼らはとても目がいいですが、実は止まっている物体はほとんど見えないんです」
四つの視界で獲物を見つけるロックスパイダー。
しかし、実は動いていない物体を視界に捉えることはほとんどできないのだそうです。
これは洞窟という動かない物体の方が多い場所に生息しているからこそ、余計な物を見て獲物を見逃さないように進化したのが原因だと言われています。
「さあ、体を擬態状態から戻したロックスパイダーが巣穴から出てきましたよ」
壁に空いた穴から、小さな駆動音を立てつつロックスパイダーがその姿を見せます。
丸まっている時は30㎝ほどの岩にしか見えなかったロックスパイダーですが、しっかりと足を開いたその体長は実に1mにも及びます。
それだけの大きさでありながら、洞窟内を縦横無尽に素早く移動して獲物を追い詰めます。
巣穴から這い出てきたロックスパイダーは、あたりを観察するように数秒ジッとしていましたが、何もいないことを確認したのか素早く糸を辿って動き出しました。
「追いかける時は、このままロックスパイダーの腹に隠れるよう、後ろから追いかけましょう」
ロックスパイダーの腹は、通常の蜘蛛と同じように大きく、カメラが隠れるのに適しています。
博士に言われた通り腹の後ろにカメラを隠し、我々はロックスパイダーを追跡し始めました。
狭い通路の中をゆっくりと足を動かして移動していくロックスパイダー。
逃げられる心配などないとでも言いたげに、ゆったりと糸を辿って移動していきます。
すると、穴からそれほど離れていない場所で獲物となる相手と見つけることができました。
糸に捕らわれていた獲物、それはこういった洞窟のダンジョンではロックスパイダーと同じくらい見かけることの多い、ゴブリンでした。
ゴブリンは身長1m前後の大きさをした、緑色の肌と額に生えた角が特徴的なモンスターです。
洞窟型のダンジョンの通路をよくうろついており、こん棒などの武器で攻撃してきます。
ゴブリンは右足で糸を踏んでしまったのでしょう、右足を振り上げたり地面にこすりつけたりして、必死に糸を剥がそうとしています。
「ロックスパイダーが糸を地面に置いておく理由は、こうして踏ませることで移動を封じるためなんです。
非常に粘着性の高い彼らの糸は、踏んでしまえば適切な処置をしない限り剥がれることはありません」
なるほど。薄暗い通路の中で地面に彼らの糸が置いてあれば、確かに踏んでしまう危険は高くなります。
下手に剥がそうとしても、手で触ればそちらも貼りついてしまうので手に負えません。
通路全体を塞ぐように巣を張るより、こうして相手の意識の穴をつく方法にしているのは、やはりダンジョンという危険地帯で生きるモンスターだからこそなのでしょうか。
さて、そんな話をしている間にも、ロックスパイダーは悠々と獲物に近づいていきます。
自分に近づいてくる敵に気付いたゴブリンは、慌てて武器となるこん棒を振るって応戦を始めました。
「当たり前ですが、ロックスパイダーの体はとても硬く、生半可な攻撃は通じません。
あの程度のこん棒なら、何発殴ったとしても体を欠けさせることすらできないでしょうね」
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その5へ続きます。
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