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第2回『平原の厄介者・ディグラビット2』

この小説に目を留めていただきありがとうございます。

皆様の暇つぶしになれば幸いです。

 さて、そんな話をしている間に巣穴の一つからディグラビットが出てきました。

 まずは掘った巣穴から耳だけを出し、周囲の音を伺います。



「彼らの聴覚は、通常のウサギよりも強化されています。通常のウサギが3kmほど先の音まで聞こえるのに対し、ディグラビットの耳は集中すれば5km先まで聞こえると言われています。

 視覚に頼れないからこそ、聴覚がより強化されたのではないでしょうか」



 ディグラビットを主食としているモンスターは多く、彼らはそういった天敵の接近をいち早く察知するため、聴覚を更に強化するように進化しました。

 さらに、強化された聴覚は草が風に揺れる音も逃しません。

 もし巣穴の近くに餌が無い場合、そういった音を頼りに餌を探すのだそうです。



「ただ、聴覚の良さは彼らにとってメリットばかりではありません」



 ディグラビットを狩猟する場合、必ずと言っていいほどに使われる方法があります。

 それがバインドボイスというスキルを使うことです。このスキルは、大きな声を出して相手を一瞬怯ませることを目的として使われるものですが、ディグラビットには必殺のスキルとなります。



「耳がいいからこそ、大きな音も普通以上に聞こえてしまい、気絶してしまうんです。

 中には驚きすぎて死亡する個体もいるくらいですよ」



 聴覚を強くするように進化したからこそのデメリット。

 彼らにとって耳が良いということは、必ずしもプラスに働くだけとは限らないようです。

 


 そういった彼らの聴覚事情はともかく。穴の中から出てこようとしているディグラビットは怯える様子はなく、耳に続いて顔をのぞかせます。

 周囲を伺うように出した頭をせわしなく動かしていますが、これは決して周囲を観察しているわけではありません。



 ディグラビットの視力は、真っ暗な巣穴の中にいるせいもあって決して良くはありません。

 人間でいうなら、近眼の人の視界を想像して貰えれば、おおよそイメージできるでしょう。

 ですから、今こうして巣穴から顔をのぞかせて辺りを見回しているのは、昼か夜かを判別するためなのです。



「彼らは基本的に夜は眠り、昼間に活動をするモンスターです。

 巣穴が暗いので、夜の方が活動しやすいのではと思われがちですが、実際には暗くて視界が悪いと巣穴の位置はもちろん、自分の現在位置さえ分からなくなってしまいます」



 これは何もディグラビットの知能が低かったり、目が悪かったりということだけが原因ではありません。

 我々人間でも、真っ暗な夜に動き回れば自分がどこにいるのかさえ見失ってしまいます。

 ディグラビットもそれは同じ……いえ、聴覚を頼りに動くことが多いからこそ、夜の闇は大きな敵になってきます。



「夜は昼に比べて視界が悪いだけでなく、夜行性のモンスターも活動していますからね。

 視界がそこまで頼りにならず、音だけで判別しなくてはいけない以上、ああして昼夜を確認し、夜ならまた巣穴に戻っていくんです」



 そうして解説をして貰っているうちに、昼であり安全だと判断したのかディグラビットが巣穴から這い出てきます。

 やはり目立つのは後ろ脚に負けずとも劣らない、太く逞しい前足。

 巣穴として深い穴を掘ることが多い彼らの前足は、素早く移動するための後ろ足と同じほどに筋肉が発達し、穴掘りに特化した形へと進化してきました。


 さらに我々の目を引くのは、その前足から伸びる10㎝ほどの長さを持つかぎ爪。

 しかしかぎ爪状になっているのは外側だけで、内側は空洞になっています。我々が知っている道具に例えるなら、シャベルの両端を折り曲げた形、といえば想像しやすいでしょうか。



「彼らの爪がこういった特殊な形状をしているのは、土を掘りやすくするためだけではありません。

 もう一つの理由として、爪を収納しやすくなるためというものもあるんですよ」



 大きな個体でも体長が40㎝ほどまでしか届かないディグラビット。

 そんな彼らにとって、10㎝以上の爪を出したままにしておくというのは、どうしても巣穴での生活や移動の邪魔になってしまいます。

 だからこそ彼らは普段爪を前足の中に収納して、過ごしやすくなるようにしているのです。


 ですが、その際に太く鋭い爪では収納できなかったり、前足の中を傷つけてしまう危険もあります。

 そうならないよう、彼らは爪の中身を空洞にし、前足の指に被るようにして収納しやすくするようにしました。

 こうすることですぐに収納することができ、収納中や足の指を保護してくれるケース代わりにもなるのです。



「それから、爪の中が空洞になっているからこそ攻撃力も高くなっているんです。

 少しでも引っかければ、空洞部分に相手の肉を巻き込んでごっそりと削り取ることができますからね」



 脅かすように言う博士に、取材班は顔を青くします。実際のところ、ディグラビットは掘った穴による被害だけでなく、その爪によって多くの探索者や街の住人に被害をもたらしている存在でもあります。

 どのような硬い地面でも掘ることができるよう発達した強力な前足と、コンクリートさえも掘り抜く強度を持った爪。


 そんなディグラビットの前足による攻撃は、厚さ3㎝の鉄板ですらいとも容易く切り裂いてしまいます。

 気付いた瞬間には足を切り裂かれてしまい、その場から動けなくなって失血死してしまった、という探索者の事例も後を絶ちません。



「質が悪いのは、ディグラビットによる被害の多くが穴に足が落ちてしまった時のものという点です」



 平原のあちこちに空いているディグラビットの巣穴。

 この巣穴に足を取られてしまうと、ディグラビットが巣穴の内外どちらにいようと敵と判断され、その鋭いかぎ爪の餌食になってしまうのです。

 これは、探索者だけでなく農村部では大人子供と問わずに被害が続出している問題でもあります。



「これもまた、彼らが平原の厄介者と呼ばれる所以でしょうね」



 ただ穴を掘るだけでなく、それに付随する深刻な被害も及ぼすモンスター。

 カメラの前で長く立った耳を動かし、あたりを観察している見た目こそ愛らしいディグラビット。しかしその実態は、見た目の愛らしさとは真逆の厄介さを持ったモンスターなのです。






最後までお読みいただき、ありがとうございました。

作者のラモンと申します。


ディグラビット紹介の続きとなります。

穴を掘るだけと思われるかもしれませんが、それこそ毎日歩く道路に穴が開きまくってたらと思うと、かなり邪魔だと思いませんか?

そんなことを思って作り出したモンスターだったりします。



それではまた、次回でお会いしましょう。

ラモンでした。



※何度も書き直し、書き足しを行っているため、内容がおかしな場所があるかもしれません。

もし内容が繋がっていない、矛盾している、誤字脱字などお気づきの点がありましたら、感想などでご指摘ください。

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