第12回『山岳地帯に潜む大蛇・多頭蛇6』
オーガを完全に胃袋へと収納し、再び動き始めた多頭蛇を見送り、我々は今回の観察を終えることにしました。
今回の取材では、博士に驚かされることもありましたが、今までじっくりと見ることが無かった、多頭蛇の新しい生態を知ることができました。
最後に我々は、レナード博士に多頭蛇から採れる素材について尋ねてみました。
山岳部の中腹では最強と呼ばれる多頭蛇、その素材は結構高値で取引されるものも多いのではないでしょうか?
「実は、多頭蛇から採れる素材で高値で取引されるものは、まったくないんです」
驚きです。
危険度が高く、生存能力の高さから討伐の難易度も高いとされる多頭蛇。
だというのに採れる素材で高値で取引されるものは一切ないとのこと。それはいったい何故なのでしょうか。
「まず一つは、単純に人気のある素材がないということですね。
彼らから採れる素材は、皮と副頭の目です。そのどちらも服飾関係で需要がありますが、人気がそんなにないんです」
赤黒い色をした多頭蛇の皮は、確かに服やバッグなどに使われるなそこまで見栄えが良いとは言えません。
しかし副頭の目が服飾関係で需要があるというのは以外です。あの目にどのような価値があるのか、我々は博士に聞いてみました。
「副頭の目は非常に透明度が高く、美しい黄色をしています。そのため宝石の代替品として需要があるんですよ。
ただあくまで代替品でしかないので、そこまで価値が高くないというわけですね」
多頭蛇の副頭の目は、博士の言う通り宝石の代替品としてよく使われています。
しかし、あくまで代替品でしかなくダンジョンで多くの宝石を入手できる現在では、そこまで需要そのものはありません。ですから当然、その価値も低くなってしまっているのです。
これは多頭蛇に限らず、危険度が高いモンスターにはよくあることだと博士はいいます。
危険度が高いモンスターはそのぶん討伐報酬が高いため、素材の値段が低いモンスターでもあまり気にされないのだとか。
「それと、皮の場合は一匹から過剰なほどに採取できるというのも、価格が安い理由になりますね」
体長20mという巨体。そんな多頭蛇一匹から採れる皮の量はかなりのものになります。
そして需要がないからこそ、一匹から採れる皮でかなりの需要を満たすことができてしまいます。それもまた、価値を下げる一因となってしまっているようです。
また副頭も合計で10個ありますから、そこから採れる瞳は20個になります。
需要が低いわけですから、採取できる量が多いほど価格が安くなるのは当然と言えるでしょう。
「肉も大量に採取できるのですが、単純に不味いんですよね。多頭蛇の肉って」
以前、試しに食べたことがあると語る博士の顔は、その時の味を思い出したのか非常に嫌そうな表情です。
ちなみに多頭蛇の肉は、泥の混じった焼肉などと表現されることもあるほど、不味い食材として有名です。20mという巨体から大量に採取することができるとしても、それこそくず肉として買い取って貰えるかどうか。
そんなものをわざわざ採取する探索者はいないでしょう。
「採取依頼がなければ、死体はそのまま放置される。それが多頭蛇というモンスターですね」
山岳部中腹で最強と呼ばれる多頭蛇。
しかし、採取できる素材まで最強とはいかないようです。
険しい山岳部中腹の蟲毒の中、最強と呼ばれるまで至ったモンスター……多頭蛇。
20mという巨体と、その巨体から想像もできない運動能力で獲物を襲うその姿は、まさに中腹最強と呼ばれるのにふさわしい威厳を持っています。
12個もの頭を持ち、広く鋭敏な視界で獲物を見つけて陰から襲い掛かる多頭蛇。下手をすればドラゴンよりも恐ろしいと語る人さえいます。
一方で、そんな彼らの素材はまったく求められていないという、悲しい一面も持っています。
強いモンスターの素材はそのまま高価になるという、我々一般人の思い込みを否定するかのような多頭蛇。
彼らは中腹の王者として、今日もまたその巨体を隠すことなく、悠然と過ごしているのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
作者のラモンと申します。
今回はヒドラなどのような、頭が複数あるタイプのモンスターを紹介してみました。
頭が複数あるのに、なんで普通に動けるのかなと考えて、私なりの結論としてこういった生態にしてみましたがいかがでしたでしょうか。
感想などをお聞かせいただけると嬉しいです。
それではまた、次回でお会いしましょう。
ラモンでした。
※何度も書き直し、書き足しを行っているため、内容がおかしな場所があるかもしれません。
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