第11回『探索者の登竜門・ホーンシープ7』
この小説に目を留めていただきありがとうございます。
皆様の暇つぶしになれば幸いです。
「モンスターの中には、専用の道具を使わないと素材の採取が難しいモンスターもいます。そういったモンスター用の器具を買い揃えるために、ホーンシープの素材を売る。そうしているうちに経験を積んで、駆け出しを抜けていくわけです」
専用の器具が必要となるモンスターは、例えばシルバーベアなどが挙げられます。
彼らの体毛は需要があり、高値で取引されています。しかししっかりと専用の器具で毛を狩らないと、魔力を流すことで銀色に光るという特性が台無しになってしまうため、専用の器具を用意しなくてはいけないのです。
ホーンシープの体毛はそこそこの価格で買い取って貰えるので、スライムやディグラビットよりも効率的に稼ぐことができます。そうして専用の器具を買えるくらいにお金を貯める頃には、すでに駆け出しを抜けて下級探索者として生活できるようになっているわけです。
「経験を積むということは、何も戦い方を覚えるというだけではありません。
ホーンシープと安定して戦い続け、そして稼げるようになるということは、探索者に向いているかどうかの試金石でもあるんですよ」
これもまた、ホーンシープが探索者の登竜門と呼ばれる理由です。
明確に殺意を持った敵を安定して討伐し続けることができるかどうか、これは探索者として生きていくためには切っても切り離せない要素となります。
明確な殺意に晒され、一つの油断が命取りになる状況で戦い続けるというのは、精神的に大きな負担となるのです。
そのため探索者の中には、肉体的な理由での引退だけでなく、精神的な理由での引退をする人も少なくありません。
ホーンシープと安定して戦い続けて経験を得る、それは駆け出しから下級探索者、そして中級以上の探索者として生きていくためには避けては通れない道なのです。
「彼らから採れる素材の話をしていたはずが、少し逸れてしまいましたね。
そうそう、ホーンシープから採れる素材は他にもあって、あの長い角もまた素材として重宝されていますよ」
ホーンシープの特徴ともいえる長い一本角。
あの角もまた、ホーンシープから採取できる素材として探索者ギルドでは買取を行っています。しかし角は何に使うのでしょうか、武器にするならもっと頑丈かつ鋭利な素材の方が良いと思うのですが。
「ホーンシープの角は、薬の材料になるんです。使われるのは主に風邪薬や湿布など、市販されている商品ですね」
どちらかというと探索者よりも、私たち一般市民が使うことが多い風邪薬や湿布といった市販薬。
その材料にホーンシープの角が使われているというのは初耳です。いったい、ホーンシープの角を使用することで、どのような効果があるのでしょうか。
「ホーンシープの角を削った粉末を混ぜることで、薬の効果を高めることができます。
ただ、効果が強くなりすぎるという副作用もあるので、市販薬の場合は角の粉末入りかどうでないかで、商品が分かれているんですよ」
効果が強くなりすぎると言っても、人体に有害なレベルまで効果が強まるというわけではありません。ですが、法律で注意書きを付けるようにと決まっているそうで、しっかりと別の商品として販売されているそうです。
普段の生活で使われている薬の材料として、あの何人もの探索者の命を奪ってきた角が使われているというのは、何だか複雑な気持ちになります。けれど、それもまたこの世界における生命の循環のひとつなのでしょう。
「体毛も角も確保が簡単です。そういった部分は、やはり平原のモンスターということなんでしょうね」
駆け出し冒険者でも気軽に稼げる平原部。
それは、何も生息しているモンスターの危険度や脅威度が低いという理由だけではなく、素材の確保がしやすく初期投資をしなくても素材を確保できるという点も含まれているようです。
そしてそれは、ホーンシープというモンスターもまた、同じなのでしょう。
探索者の登竜門、探索者として生きていけるかの試金石など、さまざまな呼ばれ方もされているモンスター……ホーンシープ。彼らは持ち前の臆病さと獰猛さで、多くの探索者の命を奪ってきたモンスターです。
しかしその一方で、彼らの素材は探索者を守るためにも使われ、私たち一般人の生活を守る製品にも使われています。
一度怯えれば相手が何だろうと構わず攻撃を仕掛ける、平原一の臆病者。
しかしその実態は、探索者になったばかりの者が平原地帯で初めて出会う、明確な殺意を向けてくるモンスターでもあるのです。
自分を殺そうと襲い掛かるモンスターと、それを撃退し討伐する探索者。
その関係を初めて経験するからこそ、その後も探索者として続けていけるかどうかを試されることになるのです。
羊のように穏やかな生活を望みながら、生来の臆病さのせいで一生叶うことがないホーンシープたち。
彼らは今日も平原部を移動し、目についた物に驚いて攻撃をしかけています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
作者のラモンと申します。
今回はちょっと強い平原モンスターを紹介してみました。
弱そうだけど強い、という意外性を重視して羊をモチーフに考えたモンスターです。
あくまで駆け出し探索者には辛い相手というだけで、普通に雑魚ではあるんですがw
それではまた、次回でお会いしましょう。
感想などいただけると嬉しいです。
ラモンでした。
※何度も書き直し、書き足しを行っているため、内容がおかしな場所があるかもしれません。
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