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第11回『探索者の登竜門・ホーンシープ5』

この小説に目を留めていただきありがとうございます。

皆様の暇つぶしになれば幸いです。

「ただ、刺突と殴打に対して高い耐性を持つ彼らの体毛ですが、それ以外の攻撃への耐性はほとんどありません。

 特に火炎魔法などを受けると、非常に燃えやすいのであっという間に全身が燃え上がってしまいます」



 博士が語ってくれた弱点は、ホーンシープが脅威とされていない理由でもあります。

 大量発生したとしても、魔法によって一斉駆除をすることが容易ですし、斬撃による攻撃でも簡単に体毛の防御を突破することができるからです。

 怯えて暴れることが分かっていて、かつしっかりとその攻撃を防御できるなら、大した脅威にはならないわけです。



「ちなみに、こんな風に怯えても暴れないという状況は極めて稀です。

 恐らく彼らは、目の前にいるのが同族でない限り、例えドラゴンが相手だとしても攻撃するでしょうから」



 ドラゴンと言えばまさにモンスターを含めた生物全ての頂点に立っている存在です。

 それが相手ですら、怯えてしまえば暴れるあたり、ホーンシープというモンスターの臆病さと凶暴性をある意味如実に表しています。

 まあ、当然ですがドラゴンに攻撃したとして、一切ダメージは与えられませんし、一撃で倒されてしまいますが。


 さてそんな説明をしている間に、小柄なホーンシープは森林部の外側まで到達していました。

 そして目の前に現れた木々に驚いたのでしょう。そのうちの一本に向かって、必死に角での攻撃を繰り返しています。



「ああして常にあちこち攻撃しているため、ホーンシープが攻撃した角の跡で、どこにいるのかを判別することができるんです。自分の居場所を自分でバラしてしまっているんですね」



 確かに付近の木々を見てみれば、今攻撃されている木以外にも多くの木に角で攻撃されたと思われる痕跡が残っています。

 これの新しさを見ることで、探索者はホーンシープが近くにいるかどうかを判別しています。また、平原にいる肉食モンスターの代表格であるスケイルウルフもまた、この痕跡で判断することが多いようです。

 臆病だからこそ、安心するために目の前に現れた物に対して攻撃をするのに、それがかえって自分の居場所を敵に知らせてしまっているというのは、何とも間の抜けた話に聞こえます。



「まあ、ホーンシープからしてみれば衝動的に行ってしまう行動ですからね。

 あまりそれによってどのような影響があるかまでは、考える余裕がないのでしょう」



 カメラの向こうではホーンシープが木への攻撃を終えて、どこか満足そうに別の場所へと移動していきます。先ほど草を食べたばかりなので、今は草や葉を食べる必要がないのでしょう。

 しかし、これだけ多くの障害物がある森林の近くを移動していると、いちいち木に驚いて攻撃してしまうのではないでしょうか。そんな疑問を取材班は博士へとぶつけてみました。



「彼らは臆病ですが、逆に一度攻撃をして安全だと分かると、非常に高い認識能力を発揮します。

 ですから今あそこを歩いている個体は、周りに広がっているのが自分が攻撃したモノと同じだと理解しているんです」



 なるほど、確かに先ほどまでは移動中もあちこちキョロキョロと忙しなく周囲を見ていたホーンシープが、今は前だけを見つめてのんびりと歩いています。あれは、周りにあるのが自分に攻撃をしてこないモノだけだからと、理解しているからこその落ち着きなのでしょう。



「ああしてあちこち攻撃をして、その周りで食べ物を食べ、そしてまた移動をする。

 ホーンシープは毎日それを繰り返しているんです。恐らくあの個体もまた、ここから移動した先で何かを見つけて、驚いて攻撃してから食事をするんでしょうね」



 臆病さゆえに多くの探索者の命を奪うホーンシープも、その凶暴性を除いてしまえば普通の羊と同じようにのんびりとした暮らしをしているようです。

 いちいち何かに驚いて攻撃するのは大変なようにも思えますが、彼らからしてみればそれも日常の一部なのです。

 これ以上観察をしても、恐らく同じようなことを繰り返すだけになるため、我々取材班はこれでホーンシープの観察を終わり、トーキョーへと戻ることにしたのでした。






読んでいただき、ありがとうございます。

その6へ続きます。


※誤字脱字などありましたら、感想などで教えてください。

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