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第11回『探索者の登竜門・ホーンシープ4』

この小説に目を留めていただきありがとうございます。

皆様の暇つぶしになれば幸いです。

 平原を歩くホーンシープを撮影していると、前方からもう一匹のホーンシープが歩いてきました。

 大きさとしては、我々が撮影している個体よりも少し大きいため、あちらの方が年上なのかもしれません。取材班はそのまま二匹のホーンシープがすれ違うと思っていましたが、突然体が小さいほうのホーンシープが頭を下げ、角を大きい個体へと向けて荒い鼻息を吹き出しつつ、地面を右前足で強く蹴り始めました。



「あれは威嚇行動ですね。ホーンシープは敵だと思った相手に向かって、まずああして威嚇し、自分に近づくと危ないぞ、こっちにくるなら攻撃するぞと警告するんです」



 小さなホーンシープは何度も何度も足で地面を蹴り、俺は危険だぞと大きな個体へ向けて警告します。

 しかし、威嚇された大きな個体はそれを見て逃げ出すわけでもなく、それどころか同じように角を相手へ向けて地面を蹴り始めました。

 正面から睨み合う二匹のホーンシープ。

 まるでこれから縄張り争いでも始めそうな雰囲気です。



「確かにそう見えますよね。でもあれ、ただ単にお互いがお互いに怯えているだけなんですよ」



 先ほど博士が言った通り、ホーンシープは非常に臆病です。ですから、小さな個体は大きな個体に怯えて威嚇をはじめ、その威嚇に驚いた大きな方の個体もまた、怯えて威嚇を始めたといういたちごっこのような状態になってしまっていたのです。

 何とも間抜けな構図に見えてしまいますが、それこそ岩にさえ怯えて暴れるホーンシープならと思えば、何故か不思議と納得できてしまいます。


 しばらくお互いに睨み合い威嚇をしていたホーンシープですが、ほぼ同時にそれぞれ全く別の方向へ向けて駆け出してしまいました。

 我々取材班もまた、先ほどまで観察していた個体の後を追って動き出します。

 しかし、岩に対してはあれだけ執拗に攻撃していたホーンシープたちが、どうして先ほどはお互い何もせずにこうして別方向へと逃げ出したのでしょう。やはり同種族だから、ということなのでしょうか。



「ある意味ではそれが正解ですね。ちょっと違うのは、単純に同種族で戦う意味がないからという点です」



 ホーンシープ同士で争うことが不毛というのは、どういうことなのでしょう。

 同種族で戦うことで、個体数が減ってしまうという心配はモンスターならありません。例え共倒れになったとしても、そのうち再び発生しているからです。

 博士が言う意味がないというのは、どういうことなのでしょう。



「彼らの体を覆っているふわふわとした体毛。これは刺突や殴打といった攻撃に対して、極めて高い耐性を持っています。

 そして彼らの攻撃は角による刺突ですから、お互いにどれだけ攻撃したとしても、まったく意味がないんです」



 自分の体を外敵から守るために生えているホーンシープの体毛。

 これは通常の羊と見た目こそ似ていますが、その材質は大きく違っており、クッションのような柔らかさと衝撃吸収性、そして、突き刺しなどの攻撃を包み込む柔軟性を持っています。

 そんな体毛で覆われたホーンシープは、角での刺突や体当たりといった攻撃手段しか持たない同種族で争っても、それこそ一生争い続けることになると本能で理解しているのです。


 確かに決着がつかないのであれば、争うだけ体力の無駄になってしまいます。

 一見ただ怯えて暴れまわっているだけに見えるホーンシープですが、しっかりと分別を付けている部分もあるようですね。






読んでいただき、ありがとうございます。

その5へ続きます。


※誤字脱字などありましたら、感想などで教えてください。

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