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第10回『人類を狙う深夜の狩人・ヒューマンキャッチャー3』

この小説に目を留めていただきありがとうございます。

皆様の暇つぶしになれば幸いです。

「その原因は、今回タナカさんに同行をお願いした理由にも繋がります」



 探索者であり、魔法を使うことができるイチロー氏に同行して貰った理由。

 最初にも述べた通り、万が一に備えてということは知っていましたが、一体どのような理由があるのでしょうか。我々取材班が疑問に思っていると、その理由についてイチロー氏が説明をしてくれました。



「奴らは獲物を見つけると、鳴き声を上げるんだ。これがちょうど子供が泣いているように聞こえる声でな。

 まあ、それだけなら無視してしまえばいいんだが……この鳴き声は精神魔法の類でな、それが厄介なんだよ」



 ここで、レナード博士が事前に録音していたヒューマンキャッチャーの鳴き声を聞かせて貰いました。当然ですが、録音された声には魔力が籠っていませんから精神魔法にかかってしまう危険性はありません。

 実際に聞いてみると、なるほど確かに普通の人間の子供が泣いているようにしか聞こえません。

 これが深夜の街道で聞こえてきたら、例えそれが獲物を誘うための罠だと分かっていても、思わず立ち止まってしまうでしょう。そして立ち止まってしまえば、その時にはもうヒューマンキャッチャーの精神魔法にかかってしまっているのです。



「精神魔法にかかってしまうと、疑似餌が本物の子供だと思い込んで、助けなきゃいけないと思ってしまうんだ。

 そして疑似餌に近づいたところを襲われて、そのまま食べられちまうんだな」



 罠だと分かっていても被害者が続出している理由、それは彼らが使う精神魔法にありました。

 精神魔法は条件さえ満たしてしまえば、即座に効果が出るものばかりです。彼らが使う精神魔法の条件は、恐らく鳴き声を聞いたしまうこと。つまり鳴き声が聞こえてしまった時点で、すでに影響を受けてしまうのです。

 そして精神魔法にかかってしまえば、そこから自力で逃れる術はほとんどありません。

 疑似餌を本物の子供と思ってしまい助けようと近づいたところを、ヒューマンキャッチャーは待ち構えているのです。人間の善意に付け込んだ、恐ろしい手段と言えます。



「そして、精神魔法にかかってしまった場合、マジックユーザーしか解除することはできません。

 だからこそ今回、万が一に備えてタナカさんに同行をお願いしたというわけですね」



 魔法に対抗できるのは、一部の高価なアイテムを除けば基本的にマジックユーザーだけです。

 マジックユーザーであるイチロー氏に同行して貰ったのは、彼らの生態を説明してもらうためだけでなく、万が一の事態に備えてということも理由でした。

 しかし、鳴き声が魔法であるのならば防音してしまえばいいのではないか、そんなことを思う人もいるでしょう。



「当たり前ですが、街道を移動している途中で完全に音を遮断してしまうのは命取りです。

 車なら事故の原因となりますし、探索者ならば襲ってくるモンスターの前兆を感じ取ることができなくなりますからね」



 確かにヒューマンキャッチャーの鳴き声を防ぐには防音魔法などで、完全に音が聞こえなくしてしまうのが最適かつ確実な手段です。しかし音が聞こえないというのは、我々人間にとって多くの情報をシャットアウトしてしまうことにもなります。

 対策をすることが、別の問題が起きる原因となり得る。これもまた、彼らの厄介さと言えるでしょう。


 そこで我々取材班は、ひとつの疑問が浮かびました。

 ヒューマンキャッチャーたちはその鳴き声をどういったタイミングで出しているのでしょうか。獲物が効果範囲内に近づいてきた時なのか、それとも何か彼ら独自のタイミングがあるのか。

 博士とイチロー氏に尋ねてみると、二人はカメラに映っているヒューマンキャッチャーの目を指さしました。



「あいつらは目が凄くいいんだ、その気になれば1km先にいる人間の子供でもしっかりと見ることができる」


「そして彼らの目は視界も広く、おおよそ180°をカバーしています。

 しかも、その角度内ならば全て1km先まで見ることができるため、遠方にいる獲物もすぐに見つけられるんですよ」



 ヒューマンキャッチャーの目は、ちょうど草食動物と肉食動物の中間。

 おおよそ前面から斜め45°くらいの場所に存在しています。これは草食動物のような広い視界と、肉食動物のように正確に獲物との距離を見極めるという両方を可能とするために、このような位置になったのだと言われています。

 そのおかげで彼らは遠方から接近する獲物を見極め、自分の使う精神魔法を使うことができるのです。

 少しでも魔力を無駄に消費しないよう、効果範囲ぎりぎりまで待つあたり知能の高さが伺えます。



「しかも高い視力を持つことで、彼らは精神魔法に指向性を持たせることも可能となっています」



 精神魔法に限らず、魔法は使用する範囲を変えることができます。広範囲になるほど効果は弱く魔力消費の効率も悪くなりますが、しっかりと指向性を持たせて範囲を狭める程、魔力効率と効果が高くなっていきます。

 彼らの精神魔法が多くの人から恐れられる程に効果が高いのも、こういった理由からなのでしょう。

 さらに、精神魔法……つまり彼らの鳴き声に指向性を持たせることは、もう一つの副産物も生み出しています。



「指向性を持ったことで、鳴き声自体もちょっとした防音対策くらいなら貫通してしまうんだ。

 そうだな、例えば厚さ10㎝くらいの防音性の板なら軽く貫通してしまうだろう」



 ヒューマンキャッチャーの鳴き声が精神魔法であることが分かった当初、探索者たちの間では耳栓などをして防音対策とする者は少なくありませんでした。

 しかし指向性を持たせた彼らの鳴き声は、その耳栓が意味をなさなかったという記述が残っています。

 そのくらい、彼らの鳴き声は浸透性が高いものなのです。


 完全に聞こえなくするならば、それこそ物音ひとつ聞こえなくなるくらいの防音対策が必要となります。

 先に述べたとおり、だからこそ彼らの対策を完全にすることは不可能に近いんですね。






読んでいただき、ありがとうございます。

その4へ続きます。


※誤字脱字などありましたら、感想などで教えてください。

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