第9回『愛されるペットモンスター・岩ヒトデとエアフィッシュ2』
この小説に目を留めていただきありがとうございます。
皆様の暇つぶしになれば幸いです。
岩を少しずつ削り取って食べるという岩ヒトデ。
削り取れる量はわずかですが、体長10㎝しかない彼らにとってはそのわずかな量でも、十分すぎるほどにマナを体内へと補充することができます。しかしある程度の量は食べる必要がありますから、長時間岩に張り付いて少しずつ削り取って食べるというわけです。
「彼らの歯は二重になって、しかも上下で少しズレるように生えています。それらを同時に動かすことで、岩を上手に削り取ることができています。さらにとても頑丈で、ちょっとしたナイフなら刃こぼれさせることもできるんですよ」
金属よりも固い岩ヒトデの歯、しかしそんな歯が生えているなら岩ではなく生物を捕食することもあるのではないでしょうか。疑問に思った我々取材班は、その疑問を博士へとぶつけてみました。
「その答えは簡単で、彼らは口を小さく開閉させることで削り取って食事をするため、食べる速度が遅いんですよ。
ですから他の生物に襲い掛かったとして、皮膚を齧っている間に剥がされて殺されてしまいます。ちなみにあの石は、この岩ヒトデの餌として5時間ほど前に入れたばかりのものです」
博士が持つ岩ヒトデが先ほどまで張り付いていた石を見てみれば、確かに一部分……ちょうど口があっただろうあたりの石が円形に削れているのが見えました。削れているといっても、2㎜ほど削れているかどうか。
5時間で2㎜しか削り取れていないのであれば、なるほど確かに食べる速度は非常に遅いのでしょう。
岩に張り付いて、ゆっくり少しずつ削り取るという彼らの食事方法を考えれば、他の生物を襲う利点はまったくないように思えます。博士が言うように、齧っている間に自分が餌にされてしまうのが関の山でしょう。
実際、博士が手に持っている岩ヒトデも、手から逃れようともぞもぞ動いてはいますが、一向に掌に噛みつくような兆候は見せていません。彼ら自身も、自分の口で相手に怪我をさせることは難しいと理解しているのでしょうか。
「実は、彼らは思考をしていません。何故かといえば、岩ヒトデには脳が存在していないからなんです」
岩ヒトデは体の構造上脳が入る余裕が無く、体の中にあるのは口から送られてきた岩を消化する胃と消化器官、そして消化した岩の成分を皮膚へと送り出す器官だけです。
脳が無いのにどうやって体の各器官を動かしているのかはわかりません。
今、博士の手の中でもぞもぞと動いているのも、ついさっきまで張り付いて食べていた岩がないので、5本の触腕を動かしてどこにあるのかを確認しているだけなのです。
そして、脳が無いからこそ彼らは基本的に思考的な行動はとらず、本能に従って動いています。その代表的な現象として、彼らの自衛手段が挙げられるでしょう。
「岩ヒトデは何かしらの痛みを感じた時、体の皮膚を破裂させて、石のようになっている部分を飛ばして自衛します。ですが多少硬くてもしょせんは皮膚ですから、相手に当たっても少ししかダメージを与えられません。
むしろ皮膚を吹き飛ばしているわけですので、岩ヒトデの方が致命傷を負ってしまうんですよ」
彼らは何かが起きた時、反射的に行動をしてしまいます。特に自衛行動は痛みを感じた瞬間、本能的に命の危機だと思ってしまうようで、その瞬間に自衛行動をとってしまうようです。
読んでいただき、ありがとうございます。
その3へ続きます。
※誤字脱字などありましたら、感想などで教えてください。




