表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/83

第7回『砂に潜む恐怖の鋏・アイアンクラブ5』

この小説に目を留めていただきありがとうございます。

皆様の暇つぶしになれば幸いです。

 浜辺に生息し、場合によっては狭いエリアに何匹もの個体が群れることもあるアイアンクラブ。

 ですが意外なことに、彼らの討伐依頼は頻繁に出されることはありません。その理由は、彼らが浜辺から移動することがなく、よほどのことが無いと一般人に被害が出ることはないからです。

 討伐依頼が出される基準は、放置することで一般人へどのくらい被害が出るのかの予想となっています。

 アイアンクラブは浜辺にさえ近寄らなければまず出会うことが無いモンスター。さらに、狭いエリアに多数の個体が群れている場合は、共食いをすることもあるなど一般人へ被害が出る可能性が低いのです。


 しかし、そんなアイアンクラブが唯一目の敵にされるシーズンが存在します。

 それは夏――海水浴が行われるシーズンです。



「海水浴場は存在していませんが、避暑地としてプライベートビーチを持っている人は少なくありません。

 そういった人たちが、安心して海を楽しむために避暑地の浜辺に生息しているアイアンクラブの討伐を依頼するんです」



 プライベートビーチを持つような人からの依頼ですから、討伐した後の報酬も高く探索者にとっては稼ぎ時です。

 さらに再出現した場合に備えて、ビーチから帰るまで同じ場所で過ごすことになるので、避暑地を求める探索者からすればまさに一石二鳥の依頼といえるでしょう。

 ですが、もちろん危険が全くないワケではありません。



「アイアンクラブは、討伐難易度が高めなモンスターです。というのも、左手で挟まれるだけで死の危険があり、さらに硬い殻に全身を覆われていますから、討伐するには技術が必要となる場合が多いのが主な理由になりますね」



 アイアンクラブを討伐するには、刀剣類ではなく打撃武器が推奨されています。硬い殻は傷つけることが難しいため、打撃武器を使って直接内臓に衝撃でダメージを与える方が有効だからです。

 しかし、武器によるダメージを狙う場合はアイアンクラブに近寄らなければならず、左手と右手の攻撃をかいくぐりながら攻撃し続ける高い技術が必要とされます。

 高い報酬と避暑地に長期間滞在できるという魅力的な条件と引き換えとはいえ、なかなかどうして命の危険も高いモンスターと言えるでしょう。



「一方で、彼らは極端に魔法に弱いモンスターでもあります。特に雷系の魔法にはまったく耐性が無く、低レベルのマジックユーザーが使う雷魔法ですら、簡単に仕留めることができるほどなんですよ」



 通常、魔力を求めて捕食をしているモンスターのほとんどが、魔力耐性を持っています。これは私たち人間も同じで、本人が意識していなくても、無意識のうちに薄い魔力の膜を体中に纏って魔力攻撃に備えているのです。

 しかしアイアンクラブは何故かこの魔力の膜を張ることをしておらず、魔法攻撃の威力が減衰されることなく、等倍以上のダメージを受けてしまいます。そのため、初心者が使うような魔法であっても彼らにとっては必殺たり得る魔法となってしまうわけですね。


 それでなくとも、内臓を直接攻撃される場合もあるのに、魔法に対する耐性もゼロ。

 研究者たちの間では、硬すぎる甲殻を持ったがゆえに魔力攻撃にまで対応することができなかったのではないか、と言われています。



「とはいっても、やはり彼らが討伐することが難しいモンスターであるという事実は変わりません。

 実際、アイアンクラブによって死亡する探索者は毎年少なくない数が出ていますからね」



 マジックユーザーになる……つまり魔法を使えるようになるには資質が必要です。誰でも魔法を使えるワケではなく、一部の資質がある人のみがマジックユーザーとして魔法を使えるわけです。

 探索者全体を見てもマジックユーザーの数は少なく、貴重な存在となっています。

 ですから、大半の探索者にとってはアイアンクラブは打撃武器などを使って、命がけで倒すモンスターであることに変わりありません。夏場に出るアイアンクラブの討伐では、マジックユーザーを擁していない探索者パーティーが複数合同で挑むということもよくあることです。



「複数の合同パーティーで討伐を行うのは、安全にアイアンクラブを討伐するための合理的な判断からなんです」



 アイアンクラブの攻撃方法である左右のハサミは、背中側に向けることはできません。

 そのため誰かが正面で攻撃を引き付けているうちに背後から攻撃することで、安全にアイアンクラブを討伐することができます。合同パーティーでの討伐ともなれば、より効率的に討伐をしていけますから、非常に合理的な判断と言えますね。

 この夏になると行われるアイアンクラブの大規模討伐は、多いものでは50人単位になることもあります。

 小さな市町村では、このアイアンクラブの大規模討伐をイベントとして、町おこしをしている場所もあるくらいです。



「ちなみに、素材としてのアイアンクラブの価値はほとんどゼロです。

 唯一素材となり得る硬い甲殻も、大体は打撃武器で殴られたり、魔法攻撃を受けたことでひび割れたり、壊れてしまっていることがほとんどなので素材としては使えないんですね」



 平時のアイアンクラブに対する討伐依頼が少ないのは、素材として求められていないというのも理由のひとつです。

 ソロ討伐が難しいモンスターで、かつ食料としても素材としても価値が無いわけですから、邪魔になる時以外で討伐依頼が出ないというのも納得できます。

 そして何より大きな問題が、運搬するのが難しいという点です。

 体の大きなアイアンクラブの甲殻を大量に持ち運ぶなら、専用のトラックなどを用意しなくてはいけません。わざわざ輸送費を支払ってまで、彼らの甲殻を手に入れようとはする人はほとんどいないでしょう。


 一方で彼らの内臓などは、珍味として有名です。

 しかし非常に傷みやすいという特徴があり、市場に流通することはありません。アイアンクラブを食べるのは、探索者たちの密かな楽しみとして、シーズンになると多くの探索者がそれを目的に討伐依頼を請けるのです。




 浜辺に隠れて獲物を仕留め、独特な食事方法をするモンスター……アイアンクラブ。

 何よりも砂に依存する生き方を選んだ彼らは、その中で生きていきやすいように生態を変化させてきた、進化していく非常に珍しいモンスターでもありました。


 硬い殻で攻撃から身を守ろうとしているものの、一方では魔法に対してまったく対策をしていない、自分で弱点となる部位の殻を閉めておけない状態にしてしまうなど、どこか生態がちぐはぐな点も彼らの特徴です。

 それもまた、砂に埋もれるという安全な生き方を選んだからなのかもしれません。


 夏場以外では存在を無視され、ただ砂の下で獲物を待ち続けているアイアンクラブ。

 今日もまた、彼らは砂に埋もれながら近くを通る獲物を虎視眈々と狙い続けているのです。






最後までお読みいただき、ありがとうございました。

作者のラモンと申します。


海といえばカニ型のモンスターということで、カニモンスターの紹介をしてみました。

それっぽい生態になっていればいいなと思いますが、どうだったでしょうか。

感想を聞かせてくれると嬉しいです。



それではまた、次回でお会いしましょう。

ラモンでした。



※何度も書き直し、書き足しを行っているため、内容がおかしな場所があるかもしれません。

もし内容が繋がっていない、矛盾している、誤字脱字などお気づきの点がありましたら、感想などでご指摘ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ