第5回『駆け回る弾丸特急・ヘッドバード4』
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皆様の暇つぶしになれば幸いです。
「いいところに気付きましたね。実は、ヘッドバードの死因でもっとも多いのは餓死なんです」
運任せの狩猟しかできないヘッドバードは、当然ながら必要とする莫大なカロリーを賄うことはできません。
ですが彼らはとても知能が低いため、お腹が空いたから狩りをしようと走り出したものの、すぐに何で走り出したのかを忘れてしまうため狩猟をしないまま走るのをやめてしまう。
こういった行動を繰り返すことが多いので、そのまま餓死してしまう個体が非常に多いのだそうです。
どうやって生きているのか不思議になる生態をしていますが、それでも絶滅せずかなりの個体数が確認されているのは、やはりモンスターだということなのでしょう。
「普通の動物なら、餓死する前に必ず狩猟を開始します。なぜかヘッドバードたちにそういった兆候が見られないのは、モンスターだからなのか、それとも知能の低さが原因なのか、それはわかりません。
確かなのは、平原で見つかる彼らの死骸のほとんどに外傷がなく、餓死による衰弱死だということだけです」
ちなみにヘッドバードは、平原においてもっとも簡単に死体を手に入れることができるモンスターと言われています。
餓死による衰弱死が多いことにより、平原を昼間中歩いていれば、戦闘をすることなく2・3体は見つけることができるでしょう。そのため、駆け出しの探索者の中には彼らの死体だけを狙って持ち帰る者も少なくありません。
ただ、そういった探索者たちは仲間内から『死体漁り』と呼ばれ、毛嫌いされてしまいます。
「まあ、そういった探索者が出てきてしまうくらい、ヘッドバードは毎日平原のどこかで餓死しているということですね」
ここまでの生態を聞くと、ただの間抜けなモンスターに思えてしまうヘッドバード。
しかし、実は彼らの危険度はシルバーベアと並ぶ程高く設定されているのですその理由は一体何なのでしょうか。
一般にヘッドバードが危険視されている最大の理由として挙げられるのは、やはり平原中を常に複数体で100km以上の速度で走り回っているから……というものがあります。
当たり前ですが、体長が2m以上になるヘッドバードの体重は、大きな個体になれば120㎏以上になります。
そんな物体と高速でぶつかればどうなるか、想像するまでもないでしょう。
しかもヘッドバードたちは常に走り回っているため、生息域が絞られておらず平原中で出会う可能性があるのも厄介なポイントです。他の個体のように、一部地域だけ気を付けておけばいいという訳ではありませんからね。
取材班が持つデータによれば、ヘッドバードとの衝突事故は年間で1万件を超えるとされています。しかも、そのほとんどが死亡事故ばかりです。
これは衝突による衝撃だけが原因ではなく、ヘッドバードが持つ硬い嘴も原因です。
「ヘッドバードの嘴は非常に硬く、厚さ20㎝のコンクリートの壁でも全速力でぶつかれば簡単に壊してしまいます。
そんなものが人間の体に当たるわけですから、当然人間なんてひとたまりもありませんよね」
しかしヘッドバードの体長は2m以上で、嘴のある位置は最低でも2mよりは上になります。
ですから普通の人ならば、嘴による被害を受けるとは思えないのですが、一体どういうことでしょうか。
「彼らは走る時、少し前傾姿勢になって走ります。そのため嘴の位置は本来よりも低く、大体1m50㎝くらいの位置まで落ちているんです。ですから、ちょうど人間の腹から胸の位置に嘴が来てしまい、大きな被害をもたらすんです」
なるほど、当たり前ですがより速く走るためにヘッドバードは前傾姿勢になって走るため、本来なら当たらない位置にある嘴が人間に当たってしまうという訳ですね。
ちなみにトラックなどの場合も、ちょうどエンジンのある位置に嘴が来ることが多いので衝突すれば、イコール廃車になってしまうという場合が多く、もたらされる被害額も大きくなりがちで、輸送業者からは疫病神のように忌み嫌われています。
走り回って事故を起こし、一般人と探索者の区別なく多くの人の命を奪うヘッドバード。
しかも質が悪いのは、彼らは走っている最中に衝突によって仲間が命を落とすとパニックを起こしてしまい、そのまま手あたり次第に周囲を攻撃し始めてしまうのです。
これもまた、ヘッドバードとの衝突事故で死亡者が非常に多い原因となっています。
そのため交通事故の常習犯、というよりも悪質な当たり屋という印象の方がしっくりくるかもしれません。
お読みいただき、ありがとうございます。
その5へ続きます。
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