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第5回『駆け回る弾丸特急・ヘッドバード2』

この小説に目を留めていただきありがとうございます。

皆様の暇つぶしになれば幸いです。

 ちなみに博士が言うには、走り出して数秒後には最初に走り出した一頭も走り出した目的を忘れているとのこと。

 私たちが良く見かける集団で走り回っているヘッドバードたちは、つまるところ全員が衝動的に走り出し、そしてそのまま目的も忘れてひたすら走り続けているだけの集団というわけです。



「彼らが群れを作っているのかどうか、ある研究者が1年間付きっ切りで観察して突き止めようとしました。

 ですがその結果わかったのは、彼らは何も考えずに走っていて、群れているのは偶然でしかないということでした」



 苦笑と共にそんな事実を教えてくれる博士。

 1年もヘッドバードの研究に費やした研究者には、思わず同情してしまいます。まさか1年間を費やして観察した結果が、ただ反射的に走っていただけという結果でしかなかったわけですからね。



「そして彼らはしばらく走り続けたあと、走ることに飽きた個体から集団を離れていきます。

 ただ、走っている時間が長く1時間以上走り続けていることがほとんどですから、走っている姿を見た人たちに群れを作っていると勘違いされてしまっていたのでしょうね」



 一度走り出したら、他の個体も引き連れて長く走り続けるヘッドバード。

 だからこそ、彼らを長く観察することのない我々一般の人たちからは、モンスターにしては珍しく群れを作っているのだと思われてしまっていたのです。

 取材班も今日はじめてその事実を知りました。



「実際、研究者の間でも彼らが群れと作っていると思っている人は多くいます。

 私も先ほど述べた研究者から話を聞いて初めて知ったくらいで、ほとんど知られていない生態なんです」



 恐らく、今まで多くの人の間で常識と思われていたことが、根底から覆るような事実。

 研究者たちですら知られていなかったヘッドバードの生態。それは彼らがほとんど平原を走り回っているからこそ、常に同じ個体を観察し続けることが難しいということも理由なのでしょう。



「何故彼らの知能がそこまで低いのか。その原因はあの体にあります」



 ヘッドバードの体は、上から見ると横長の楕円形をしています。その中に内蔵やそれらを守る10㎝以上の厚い骨格が収納されており、さらに20㎝以上はある大きな瞳も二つついているため、脳の容量がとても小さくなってしまっているのです。

 特に目を引くのが、長時間高速で走り回るためにヘッドバードたちは4つの肺と2つの心臓を持っているという点です。

 そうすることで一度に大量の酸素を体内へと取り込み、老廃物を素早く排出することができるようになっています。



「そういった体の機能を支える内臓を中心として構成されているせいか、彼らの脳は10㎝ほどしかありません。

 1m前後の巨大な体でありながら、実際にはディグラビットと同程度かそれ以下の脳しか持っていないんです」



 なるほど、ディグラビットと同じ程度の脳しか持っていないのに、体を動かすためには大量の内臓を機能させなくてはいけない。そういうことならば、確かにヘッドバードの知能は非常に低いというのも納得です。

 恐らく10㎝しかない小さな脳では、体の内臓や感覚器官を機能させるだけで手いっぱいになってしまうのでしょう。

 今までヘッドバードは、体の大きさと群れを作ることから、賢いモンスターだと思われていました。しかし、実際にはディグラビット程度の知能しか持ち合わせていない――驚きの生態が明らかになりました。



「ちなみに、彼らは鳥型のモンスターではありますが、空を飛ぶことはできません。

 彼らはどちらかといえば、ダチョウなどに近いモンスターです。翼を持ってはいますが、飛ぶことはできないんです」



 鳥という名前を持っていながら飛ぶことはできないヘッドバードたち。

 実際、彼らは常にその走ることに特化した足を使って平原を駆け回っていますが、飛んでいる姿を見たことがある人は少ないでしょう。我々取材班の中にも、彼らが飛んでいるところを見た人間はいません。



「ただ、彼らはまったく飛べないというわけではありません。もちろん、普通の鳥のように飛ぶ……というよりは、高くジャンプしてから滑空しているというのが正しい表現になりますが」



 ヘッドバードは時速100km以上になる速度で走りながら、大きくジャンプした後に翼を広げることで、短い時間ですが滑空することができます。

 滑空できる距離は最大で300m前後と意外に長いですが、高度は3mほどなので少し浮いている程度です。

 ほとんど浮かばずに行う滑空ですが、もちろん意味もなく滑空をするわけではありません。



「彼らが優れた心肺機能を持っていたとしても、長時間全力疾走を続けることは不可能です。

 ですから走っている途中で滑空をして、移動をやめることなく心肺機能を休ませることができるんですね」



 ヘッドバードたちにとっての滑空は、休憩時間を意味しています。

 滑空中はほとんど体を動かさず、普段は使わない翼を使って滑空をするため、心肺機能を休めることができます。そうすることで、ヘッドバードたちは1時間以上も移動を続けることができるようになります。

 ちなみに、滑空での休憩を挟まなかった場合、ヘッドバードの全力疾走は長くて10分くらいだそうです。

 時速100km以上で10分以上も連続して走れるというのは、さすがモンスターというべきでしょうか。



「ちなみに、彼らの滑空する速度は平均して60kmほどです。

 さすがに全力疾走よりは遅くなってしまいますが、それでも十分な速度で移動を続けることができます」



 常に自動車と同じ速度で移動し続けることができるヘッドバードは、こうして移動しながらの休憩と全力疾走を繰り返すことで、1日に200km以上を移動すると言われています。

 走り出す理由は何であれ、一度走り出したら止まらない彼ら。

 そんな彼らの生態を支えているのは、強力な心肺機能と滑空による休憩だったのです。






お読みいただき、ありがとうございます。

その3へ続きます。


※誤字脱字などありましたら、感想などでご指摘ください。

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