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第4回『闇夜に忍び寄るモノ・ゴースト5』

「そういえば、ゴーストも討伐すると素材を落とすということはご存じですか?」



 姿を消していくゴーストたちを見ながら、博士が不意に我々取材班にそう尋ねてきました。

 ゴーストは体全体が魔力で構成されているため、今まで紹介したモンスターのように何か物理的な素材を落とすということは考えにくいのではないでしょうか。



「やはりそう思いますよね。ですが、しっかりとゴーストも討伐されると素材を落とすんです」



 これがその素材ですよ、と博士はポケットの中から赤い球形の宝石を取り出しました。

 親指くらいの大きさしかない小さな宝石……これがゴーストの落とす素材と博士は言います。



「これはゴーストの宝玉と呼ばれる素材で、ゴーストの魔力が結晶化したものです。

 この小さな宝玉ひとつで、なんと普通の人間10人分の魔力を貯蔵しているんですよ」



 たったこれだけの大きさの宝石なのに、人間10人分の魔力を持っているというゴーストの宝玉。

 確かに体全てが魔力で構成されているということを考えると、その素材としては納得できるものでしょう。しかし、どうしてそのような素材が採取できるのでしょうか。



「簡単に説明すると、ゴーストの体を構成する魔力がより強い魔力……具体的に言うなら、彼らの魔力抵抗を上回る魔力と衝突した際、その部分が結晶化することで作られるんです」



 2つの高密度の魔力がぶつかり合うことで、超高密度の魔力結晶ができあがる。

 なるほど体の全てが魔力で構成されているゴーストだからこそ起きる現象、ということなのでしょう。



「魔力結晶は形成された瞬間、密度に見合うだけの魔力を周囲から吸収する特性があります。

 つまりこのゴーストの宝玉が形成された瞬間、ゴーストはその体を構成する魔力を一気に奪われてしまうんですね」



 体を構成するための魔力を一気に吸収されてしまえば、ゴーストは存在を保つことができないため消滅するしかありません。つまりこの素材は、討伐されたゴーストが落とすというよりも、討伐する過程で発生する素材ということになります。

 そういった経緯で形成されたものであれば、普通の人間10人分という多大な魔力を有しているのも納得です。



「この小ささで多くの魔力を持っているので、ゴーストの宝玉は魔力エンチャントの素材や、魔法付加した装備品の生成など幅広い場面で重宝されています。

 さらに手に入れるためには、そもそもゴーストを討伐できるだけの魔力攻撃をしなくてはいけないなど、生成される条件を満たす必要もあるので、危険度の低いモンスターとは思えない高値で取引されているんです」



 博士から聞いたゴーストの宝玉の取引価格は、最低でも100万円からと高額です。

 これはシルバーベアの体毛よりも高い価格ですから、どれだけ貴重なアイテムなのかが分かります。それもこれも全ては、この宝石が生成される条件の厳しさがあるからなのでしょう。



「ちなみに魔力による攻撃なら何でもいいというわけではありません。

 このゴーストの宝玉を生成するためには、かなり高密度な魔力攻撃をしなくてはいけません。それだけの魔力攻撃ができる探索者の数は、あまり多くはありません」



 ゴーストを討伐するだけなら、朝日が昇るまで引き付けて逃げ回るなどの手段もあります。

 しかしゴーストの宝玉を入手しようと思うなら、ゴーストの魔力抵抗を上回るだけの、強力な魔力攻撃をしなくてはいけないのですから、その難易度は推して知るべしです。


 ちなみに魔力の宿った装備による攻撃でも結晶を作り出すことはできますが、それだけの密度の魔力を込めた装備品を購入できる探索者の数もまた、非常に限られてきます。



「そのため、中級探索者でも依頼が達成できるよう、ギルドに依頼が出る場合は武器などの貸し出しも行われています。

 さすがに上級探索者に依頼すると、素材価格よりも依頼費用の方が上回ってしまいますからね」



 討伐そのものが難しいゴーストは、それと同じくらい素材を手に入れることも難しいモンスターです。

 ですがゴーストの宝玉という高密度の魔力結晶は、さまざまな場所で使用されている需要が多いアイテムでもあります。

 ちなみに、ゴーストに襲われた際にも、このアイテムを放り投げることでゴーストがそちらに吸い寄せられるため、行商を行う人間の間ではお守りとしても需要があります。



「自分たちの仲間が討伐されたアイテムでも、ゴーストには関係ないですからね」



 彼らにとってみれば、それが何であれより多くの魔力を吸収できるものでしかありません。

 目も耳もないゴーストにとって、ゴーストの宝玉は何よりも魅力的なごちそうに見えるのでしょう。



 夜の闇の中、魔力を求めて徘徊するモンスター……ゴースト。

 物理的に触れることができない特性から、討伐するのは困難を極め、なにより短時間で相手の命を奪えるなど危険極まりないモンスターでもあります。


 ですが、彼らはその厄介さとは裏腹に私たちの想像から生まれたモンスターならではの弱点も持っています。

 そして魔力で体を構成しているからこそ採れる素材は、非常に有用な魔力結晶として取引され、需要も多いモンスター。しかし彼らは今日もまた、そんなことは関係ないとばかりに森の外縁部を漂っているのでしょう。


 私たちの想像を基に生まれたゴースト。

 彼らの生態を紐解くことは、私たちが幽霊に対してどのような意識を持っているのか、それを紐解くことにも繋がっているのかもしれません。






最後までお読みいただき、ありがとうございました。

作者のラモンと申します。


ゴーストはもともとの文章が短めだったのもあり、分割も5で終わりとなります。

実体がないモンスターの生態を考えるのは、なかなか難しいですね。



それではまた、次回でお会いしましょう。

ラモンでした。



※何度も書き直し、書き足しを行っているため、内容がおかしな場所があるかもしれません。

もし内容が繋がっていない、矛盾している、誤字脱字などお気づきの点がありましたら、感想などでご指摘ください。

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