第4回『闇夜に忍び寄るモノ・ゴースト3』
この小説に目を留めていただきありがとうございます。
皆様の暇つぶしになれば幸いです。
ゴーストが出現してから数時間が経ちました。
ですが彼らはほとんど同じ場所でユラユラと浮かんでいるだけで、獲物を探して移動するなど、分かりやすい行動を起こすことはありません。
これは、ゴーストに目や鼻といった感覚器官が存在せず、魔力を感知する能力も低いことが原因です。
「ゴーストにとって、魔力を奪うことは必須ではありません。
存在するだけなら自分が永久機関となっているので、それこそ無理やり魔力を奪う必要性がないんですね」
スライムのように存在するために必要だから魔力を奪うのではなく、あくまでゴーストが魔力を奪うのは上位種へ変異するためのもの。
私たち人間で例えるなら、ケーキなどの嗜好品を食べなくても良いのと似ています。
そのため、ゴーストは自分の近くに獲物が来た時だけ、活性化して襲撃を行うのです。
「ゴーストが自発的に獲物を探して襲うことがないのも、自分の陣地に入ってきた相手を呪うという、私たち人間のイメージが反映された結果かも知れませんね」
こういった行動一つひとつにまで、私たちの想像の影響が見え隠れするゴースト。
ある意味では、私たちに細かな生態まで支配されているとも言える彼ら。その生態を知るほどに、ゴーストというモンスターが魔力具現化生物であるということを、より強く認知させられます。
ゴーストへのそんな感想を我々が抱いたその時。
恐らく自分の巣を見失ってしまったのでしょう。ディグラビットが一匹、ゴーストの前へと飛び出してきました。
その場で巣を掘らず、ある程度移動してからにしようとしたのでしょうか。それはわかりませんが、ともあれゴーストはそのディグラビットを感知し、にわかに動き出しました。
「ゴーストが魔力を感知する範囲は、おおよそ自分を中心とした半径2メートル程度とされています。
その範囲内に自分以外の魔力を感知した場合、ああして獲物めがけて動き出すんです」
音に敏感なディグラビットは、本来なら夜であっても2メートルという距離まで何かが自分に近づく前に、気づいて逃げることができるはず。しかしゴーストは全く音を立てずに移動するため、ディグラビットはその存在に気付けません。
そしてあっという間に距離を詰めたゴーストが、シーツを被ったような体でディグラビットに覆いかぶさります。
「ゴーストの捕食方法は、ああして獲物に上から覆いかぶさり、直接魔力を吸収するというものです」
当然ですが、物理的干渉ができないゴーストが獲物に直接触れることはできません。
その状態でどうやって魔力を吸収しているのか、その構造はまだ判明しておらず、目下研究されています。
「一度ゴーストに捕食されてしまうと、ゴーストの移動速度以上の速さで移動しない限り逃げることは不可能です。
車などに乗っていれば何とかなりますが、それ以外では逃げることは難しいでしょうね」
ゴーストの移動する速度の最大は40kmほどと言われています。
それ以上の速度を出さない限り、振り払うなどができないというのは非常に恐ろしい事実です。私たち人間が走るのはもちろん、一部のモンスターでさえ逃げることは不可能。
もちろん、今捕食されようとしているディグラビットもまた、逃げられるだけの速度を出すことはできません。
魔力を吸収されていることに気づいて逃げ出しますが、ゴーストは慌てる様子すらなく覆いかぶさったまま、でたらめに逃げ回るディグラビットの上をぴったりと並走していきます。
「もう一つ恐ろしい点は、魔力の吸収速度が異常なほどに早いという点です。
恐らく、魔力吸収速度に関してならば、全てのモンスターの中でも5本の指に入ります」
魔力は生物にとって無くてはならないもの、ということは皆さん知っているでしょう。
体内の魔力が少なくなると、生物には3つ段階に分けて欠乏を示す症状が出ます。
軽度の欠乏ならば、倦怠感と脱力をはじめ眩暈や吐き気などの軽度な症状が。
そして中度の魔力欠乏になってくると、手足の感覚がなくなり立ったり移動することが困難になってしまいます。さらに症状進み重度の魔力欠乏が起きれば、意識の混濁……そして最終的には死に至ります。
ゴーストに魔力を吸収され始めると、この第2段階の強い倦怠感と脱力の症状が出るまで、人間であっても2分もかかりません。
つまり、人間よりもはるかに体が小さく、体内に貯蔵されている魔力も少ないディグラビットならば、それこそ1分もかからずに行動不能になってしまうのです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
その4へと続きます。
※何度も書き直し、書き足しを行っているため、内容がおかしな場所があるかもしれません。
もし内容が繋がっていない、矛盾している、誤字脱字などお気づきの点がありましたら、感想などでご指摘ください。




