第4回『闇夜に忍び寄るモノ・ゴースト2』
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皆様の暇つぶしになれば幸いです。
「さて、ゴーストの最大の特徴といえば物理的な干渉ができないという点ですね」
博士の言う通り、ゴーストには一切物理的な接触をすることができません。
攻撃は言わずもがな、普通に触れることすら不可能です。ゴーストを討伐するには、魔法か魔力を付加した武器の使用が必須になってきます。
しかし、言うならば全身が魔力によって形成されているため、シルバーベアの体毛と同じように高い魔力抵抗力も持っているのもゴーストという種族の特徴と言えるでしょう。
「そしてゴーストもまた、スライムと同じように常に魔力を求めています」
博士の言う通り、ゴーストの主食――存在するために求めるものは魔力です。
そのため、ゴーストは常に魔力を求めて移動しています。これはスライムに近しい習性に思えますが、スライムが常に魔力飢餓状態だから魔力を求めるのとは違い、彼らは魔力飢餓状態になることはありません。
それは彼ら自身が、小さな魔力炉のような構造になっているからなのです。
マナを取り込み体を構成する魔力に変換し、行動することで魔力を消費してマナへと還元し、それを再び吸収する――それを繰り返しているため、スライムよりもはるかに効率的に魔力を得ています。
「では何故ゴーストが魔力を求めるのか。その理由は学会で多くの議論が交わされてきました。
そして現在有力な仮説として、自分自身を強化するためだという説があります」
これはゴーストというよりも、魔力具現化生物全体に見られる特徴にも繋がってくる仮説です。
魔力具現化生物は、魔力を多く取り込むことで少しずつ自身を強化し、上位存在へと変異することができることが確認されています。
ゴーストが実際に変異をするかどうかは確認されていませんが、魔力具現化生物の特徴と合わせて、上位種へ変異するために魔力を求めているのではないかという仮説が立てられているのです。
「ゴーストとスライムの大きな違いは、しっかりと魔力を持っている相手を選んで襲うという点です。
しっかりと魔力の貯蔵量が多い相手を選んで襲撃するので、高い知性もあると言われています
これがゴーストが厄介な存在であるもう一つの理由です。
彼らは魔力を持った存在を複数感知した場合、少しでも身体の大きな獲物を狙います。魔力を求めるからこそ、少しでも多く魔力を持っている相手を選ぶ……そういった判断力も持ち合わせているモンスターなのです。
夜間は当然見通しが悪くなり、ゴーストを発見することは困難です。
そんな状況で襲われてしまえば、対抗手段を持っていたとしても撃退することは難しいでしょう。事実、ゴーストの襲撃による被害者は、探索者・一般人を問わず年間1000人近く報告されています。
ですが、それでもゴーストの危険度は低級に分類されています。
分類は3種類だけなので大雑把ではありますが、それでも低級はスライムと同レベル。討伐が難しく危険度も高いだろうゴーストが、それだけ低く分類されているのは何故なのでしょうか。
「討伐難易度こそ高いゴーストですが、被害に遭わないようにすることは容易だからです。
これは彼らが日没後にしか活動できず、かつ森林外縁部の周辺しか行動しないことが理由のひとつになっています」
ゴーストは太陽が昇る前に姿を消失させ、日中はその場所を通ったとしても襲われる心配はありません。ではなぜ日中ゴーストが姿を現さないのか。
それは、太陽の光を浴びるとゴーストは存在が消失してしまうからなのです。
「彼らが太陽の光で消滅する理由もまた、我々人間の想像から生まれたからです。
我々が想像する幽霊は、暗闇とセットで想像される場合が多いですからね」
私たち人間の想像から生まれた魔力具現化生物のゴースト。だからこそ、弱点や生態もまた私たちの想像に大きく左右される場合があります。
ゴーストにとっての太陽……というよりも光そのものが、自身の存在を否定する要素になってしまっているのでしょう。
そのため、太陽の光を浴びたゴーストは存在に矛盾が起きてしまい消滅する。
これは、生態に謎の多いゴーストの中でも数少ない明確になっている要素のひとつであり、彼らの危険度が低く分類されていることの理由でもあります。
事実、太陽の光だけでなく魔法による光度の高い光でも、ゴーストが消滅することは確認されています。
彼らにとっては、強い光を浴びるということは無条件で消滅と結びついてしまっているのでしょう。
「さらに、討伐するのではなく追い払うだけなら松明など弱い光であっても可能です。
討伐難易度が高いからといって、追い払うことが難しいというわけではないのも、危険度を低くしています」
明確な弱点が判明しており、活動時間と範囲も限られている。
だからこそゴーストは、その危険性とは裏腹にスライムと同レベルの危険度とされているのです。
お読みいただき、ありがとうございました。
その3へと続きます。
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