第3回『森の王者・シルバーベア6』
この小説に目を留めていただきありがとうございます。
皆様の暇つぶしになれば幸いです。
一通り縄張りの巡回を終えて、ムーンが最初に寝ていた木の近くまで戻ってきたのは、もうすっかり夕暮れになってしまった頃でした。
おおよそ1km四方ほどある縄張りを、餌を探しながら見回ったのですから、この時間になってしまうのも納得です。
そしてこの日のムーンは、思ったように餌を集められませんでした。
この日、ムーンが確保できた餌は最初のスケイルウルフを含めてモンスターを3体だけ。
しかもスケイルウルフ以降は、体の小さい獲物ばかり……彼らが必要とする量を考えれば、満足にはとても遠い数です。
「まあ、1日満足に食べられなかったくらいでは、魔力の保持にそこまで大きな影響はありません。
腹は空いているでしょうから、明日出会う獲物に少し同情してしまいますが」
確かに今日確保できなかった分、明日はムーンも必死になって獲物を探すでしょう。
必死に餌を探すシルバーベアに出会ったなら……想像もしたくありません。
「とはいえ、縄張りの巡回を終えた以上、今日はもう動くことはないでしょう。
これ以上下手に動くと、日が落ちて森の中を動くのが難しくなりますからね」
日光を銀の体毛に反射させることで、薄暗い森の中でも灯りを確保できていたシルバーベア。
完全に日が落ちてしまえば、もちろん灯りを確保することはできず、闇の中を動き回ることになります。さすがに森の王者と呼ばれる彼らであっても、それは避けるべき事態です。
博士の言う通り、ムーンはゆっくりと朝眠っていた木の根元に座り込むと、そのまま朝と同じ態勢で眠り始めました。
そこで我々取材班はふと疑問に思いました。
いくらシルバーベアといえども、寝込みを襲われればひとたまりもないのではないか。夜行性のモンスターも多い森林地帯において、ああして無防備に眠るのは危険すぎるような気もします。
そういった危険を回避するために、巣穴を持つことはないのでしょうか。
「シルバーベアは特定の巣穴を持つことはありません。
何故かというと、寝ている間も体毛は常に魔力を纏っているため、変わらず高い防御力を持っているからです。
寝込みを襲われたとしても、いきなり致命傷を受けることはほとんどありません」
なるほど、最初の一撃で致命傷を受けなければすぐに起きて反撃ができる。
自分の体毛の防御力に絶対の自信があるからこそ、彼らはああして無防備に眠ることができるわけですか。
「そうなりますね。これは年齢などに関係なく全ての個体に共通する特徴です。
敵に怯えて巣穴で眠るなど、王者にはふさわしくない……そう思っているのかも知れません」
冗談めかしてそう言葉を続ける博士。
実際にそこまで思っているかどうかは定かではありませんが、確かに弱点を丸出しにしたまま眠るムーンを見ていると、そういった矜持を持っているように思えてしまうのが不思議です。
森の王として君臨する、恐るべきモンスター……シルバーベア。
その剛腕と無類の防御力を誇る銀の体毛は、多くの人から畏怖されています。
ですがその生態は、恐れられている評判とは裏腹に妙に人間臭い一面も持っていました。
森林地帯から出てこないことから、私たちに直接被害を及ぼすことはないものの、その体毛の有用性から多くの人に求められているモンスターでもある彼ら。
その関係は、まるでアイドルを追いかけるファンの姿にも見えてきます。
寝ている時まで王者としての風格を漂わせるシルバーベア。
その威風堂々とした姿は、まさに森林地帯の頂点捕食者にふさわしいものでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
作者のラモンと申します。
今回はわかりやすく強そうなモンスター、熊のモンスターの紹介となりました。
熊っぽさを主体に、モンスターらしく魔力の関係した体の構造なども考えてみたのですが、いかがだったでしょうか。
もし、分割版を読んでまとめて読みたいと思った時には、まとめて1話として投稿している世界モンスター紀行がありますので、そちらもご覧になってみてください。
それではまた、次回でお会いしましょう。
ラモンでした。
※何度も書き直し、書き足しを行っているため、内容がおかしな場所があるかもしれません。
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