第2回『平原の厄介者・ディグラビット5』
この小説に目を留めていただきありがとうございます。
皆様の暇つぶしになれば幸いです。
巣穴を観察し終えた我々は、魔力球カメラを消滅させて、巣穴の主であるディグラビットへと視点を戻しました。
今は危険を感じていないのか、目を眩しそうに細めて日の光を浴びながら、のんびりと周りにある草を集めています。
我々のいる場所は遮音魔法で音が聞こえないようにしていますし、何よりその場所から2kmは離れているので、見つかる心配もありません。
とはいえ日中の平原なら、スケイルウルフや探索者など、数多くの敵の足音が聞こえていそうなものです。
だというのに、臆病なはずのディグラビットがなぜこうも落ち着いているのでしょうか。
「自分の方向へ近づいてくる足音が聞こえていないからでしょうね。
彼らにとって音は生命線です。我々が目で安全を確認するように、彼らは音で危険かどうか判断しているんです」
臆病なディグラビットは、聞こえてくる無数の物音を細かく判別しています。
自分の方向に近づいているのかどうか、距離はどのくらいなのか、餌を探しながらもそういった自衛に繋がる情報は決して逃しません。
「彼らが外に出ている時間は、それほど長くはありません。
草の根元を嚙みちぎって集めるだけですからね。時間がかかったとしても、せいぜい5分くらいでしょうか」
意外なことに、ディグラビットは草を根元から掘り返すことはしません。
これもまた彼らにとって大切な、自衛に繋がる要素なのです。
「彼らが背の高い草がある地域に好んで巣穴を作るのは、食糧が近いからというのがひとつではあります。
しかしもうひとつ、草の中に自分が隠れることができるからという理由もあるんです」
ディグラビットにとって食糧である草は、同時に姿を隠してくれる防壁の役目も持っています。
ですから、根元から掘ってしまっては周囲の草がどんどん無くなり、最終的には巣穴を放棄しなくてはいけなくなるでしょう。そうならないために、彼らはこうして丁寧に草を噛みちぎって持ち帰るのです。
「巣穴を忘れてしまうから意味が無いと思うでしょう?
でも、彼らは自分だけでなく、他の個体のことも考えてこういった行動をしているんですよ」
ディグラビットは単独で行動をするモンスターです。
ですが同じ地域に複数の個体が暮らしているので、連帯感は強いとのこと。草が無くなっていけば、自分だけではなく周囲に住んでいる他の個体にも食糧不足や、隠れ場所の減少といった迷惑がかかってしまいます。
そういった考えも、彼らが草を根元から掘り返さない理由となっています。
そうしている間に齧り取った草をまとめて前足で抱えるディグラビット。
彼らの発達した前足は、穴を掘るだけでなくこうして餌を運ぶ時にも使われます。今、こうして観察しているディグラビットも、器用に餌を抱えたまま巣穴の中へと戻っていきました。
しかし、先ほど巣穴の中を見た限りではまだまだ餌はあったように思えます。
なのになぜ、こうしてまた餌を集めるのでしょうか。
「単純に鮮度の問題ですね。時間が経つと傷んでしまったり、腐ってしまったりします。
そういった草を間違って食べないよう、定期的に草の入れ替えをしているんですよ。ほら」
促されて巣穴を見れば、先ほど潜っていったディグラビットが草を抱えて顔を出しました。
抱えられている草は、確かに先ほど持ち帰った草に比べると色も悪く萎びています。
「ああいった古い草と、先ほどの新しい草を定期的に入れ替えることで、安心して餌を食べられます。
それに彼らは餌の上で暮らしていますからね。草の入れ替えは巣穴の清潔さを保つためにも必要なことなんですよ」
草の入れ替え期間はおおよそ2週間から3週間。
この期間を長いと見るか、短いと見るかは人によって分かれるでしょう。しかしモンスターもまた、私たちと同じように清潔を気にする部分を持っているのです。
まあ、そもそも餌の上で暮らさなければいいのではとも思いますが、それは言わないお約束でしょう。
そうこうしている間に、ディグラビットは地上と巣穴を何度か往復して、古くなった草を巣穴の周辺に放り投げました。
こうして放り投げられた草もまた、彼らの巣穴を隠すカモフラージュになっています。
最後に草を放り投げたあと、それで入れ替えが終わったのかディグラビットが再び顔を出すことはありませんでした。
博士が言うには、おそらくこの後2週間は地上に出てこないだろうとのこと。
それを聞いて、我々取材班は今回の観察を終えることにしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
作者のラモンと申します。
ディグラビットの紹介その5です。
食べ物は誰だって新鮮な方がいいですよね。そこは人間もモンスターも同じだと思うんです。
それではまた、次回でお会いしましょう。
ラモンでした。
※何度も書き直し、書き足しを行っているため、内容がおかしな場所があるかもしれません。
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