ごめん寝スパーリングやきそばジュースかなしみ味(プリン)
ギャグです。すみません。某漫画風。
神奈川県の山中。
長い輪ゴムが、木にくくりつけられて震えている。
その一方を引き伸ばし、やきそばを仕掛けている鹿がいた。
木に引っ掛けてパチンコのようになっている仕掛け。
それが放たれると、渓流釣りのおっさんが勢いよく食いついた。
(やった!)
あたりのカッパたちは拍手した。
鹿はなにも考えていない様子で二足歩行で無感情に立ち去り、あたりにはちいさなイノシシの子供が途方に暮れていた。
「え?もう終わり?」
「終わりかな?終わりかな?」
あたりの風が回りだし、イノシシは踊りだす。
「終わりじゃないよね?大丈夫?」
「大丈夫やで……大丈夫やで……」
「ほんとかな?ほんとかな?」
「自分で考えなさい」
その声は厳しい女性の声だった。頭にマグロの刺し身を乗せたキツネが、そう言って立ち去った。
「ちらし寿司か……!」
近くで山の精霊と見紛うほどのただの老人(98)が悔しそうに吐き捨てた。
「わたしはパンダ」
そう言い切ったタヌキが、美少女に変身したが、ただちにマグロに変化した。
「そこはサワガニだろ!」
サワガニは山から大量にあふれだしながら山を降りていった。
「あ、遅刻遅刻〜ロケット発射時刻に遅れちゃう!お父さんに柿の葉寿司を届けなきゃ!」
マグロもそう言って跳ねながら下山した。
それを見て、悲しげに彼は言った。
「……もう、秋か……。」
ただの老人(98)はホウキで頭上の木を掃除しながら言った。
するとそこから夏の虫がぽろぽろ落ちてきて、老人は一匹の毛虫を掴んで叫んだ。
「ドレスコードがなってない!闇鍋パーティからやり直せ!」
「ヨーグルト!ヨーグルト!」
鹿は手拍子しながらしきりにうなずいた。
老人は毛虫を投げつけながら泣いた。
「そこはケバブだろ……!お母さん!」
あたりで鹿たちはさめざめと泣いた。
「サメ映画……サメ映画……」
「サメだけに?」
「いいえ、茶碗蒸しです」
「そこはプリンだろ!」
「いいや、シメサバじゃー!」
老人は蛾の群れを投げ付けた。一気に羽ばたいて蛾は飛び去る。
青い空の昼下がり。飛行機雲が入道雲の前を横切る。
そこへ、さっきの山に、飛んでくる気球。
そこには、恰幅の良いスーツの男性。卵をいくつもジャグリングしながら歌っている。
「人生万事塞翁が馬、背水の陣によってはかの豊臣秀吉公のごとく……」
そこへ、タヌキが走り寄り、さっきの美少女になりながら気球を蹴り抜いた。
「新種のハゼを発見!やったね!」
「うわあああオムライスになる〜、家康様にしとけばよかったー……」
「この山では、男は黙って、漁師の田中さんよ」
美少女タヌキは気球のカゴの側面に乗り、落下しながら親指立てた。
「この山と、あと世田谷では常識よ、覚えときなさい」
美少女タヌキは下半身からケムリを出しながら、徐々に姿を隠した。
「まさか、また変身するのか?」
「あのケムリ、さっきはなかったけど……」
すると、タヌキ美少女はいつしかキリンになっていた。
「てかLINEやってる?」
キリンは振り返って一言いうと、山を降りていった。
老人(98)はそれを冷ややかな目で見ていた。
暗くなり、海から花火が上がる。夏祭りの夜だった。
花火は人々を楽しませ、さっきの山の住人たちをも感動させた。
「たーまやー」
「かーぎやー」
「買ってきましたよ、やっぱり夏はビールですなあ」
「おつかれさま、枝豆もありますよ」
鹿たちは宴会していた。毎晩のように繰り返される宴会は、毎晩お酒が出ていた。
「こんな日々も何年目ですかな」
「114年目くらいですかな」
「もうそんなですか!早いですな〜」
鹿たちはだんだん変身していった。紐のゆるんだ甲冑に兜、折れた刀などを装備した、それは落ち武者たちだった。
「長くここにいますが、全く飽きませんな」
「成仏する気にもなりませんな!」
落ち武者Aは笑った。もうひとりはうつむいた。
「しかし、ずっとこうしていていいものか……」
まわりの鹿たちも酒で盛り上がっていたが、その言葉に急に静かになった。
「あのじいさん(98)を森の精霊と勘違いさせ、口座番号を聞き出し、勝手に酒台を引き出しては飲み続けているが……」
「心配ない。あのじいさん(98)は年金ぐらしだ」
「わし(98)は森の精霊じゃ」
老人(98)はホウキを振り回した。美少女タヌキがセーラー服以外タヌキに戻った姿で言った。
「おじいさん、ニンテンドースイッチ買って〜。クラスで妖怪をウォッチしたことないの私くらいなのー。」
「妖怪はわたしたちだろうが」
鹿の一頭が言った。
「ふーん、じゃあもういっか。もうシャワーあびてねよ。」
タヌキ美少女はマグロに変身して、跳ねながら下山した。
「息が苦しい!これはそう、鯉……してるから!」
「マグロだろうが!」と鹿の一頭。
山の老人(98)は酒をつぎながら言った。
「そろそろわしも、高校デビューするかの……はじめての女子校だと色々不安はあるが……まあ、若さがあるから大丈夫じゃろう!」
その顔に、勢いよくどこからかやきそばが当たる。やきそばを投げて涙に濡れた渓流釣りのおっさんは、泣きながら叫んでいた。
「でも……あなた、ホグワーツ中退じゃない!アロホモラもできないくせに!」
「もふもふふぁー?」
タヌキ美少女が全裸で戻ってきた。全身タヌキの毛皮姿で。
「うわ、服着ろよ!」
カッパがさわぐ。
「いいじゃん、気にすることないよ」
「もふもふ毛皮が好きなんでしょ?ほらもふもふ〜!」
「わああ!やめろ!もふもふするな!離れろ!」
顔を真っ赤にしてカッパは逃げ出した。途中で何かが割れる音。
「あー!」
もはやただのタヌキはあたふたして、土下座のようなポーズをした。
「わたしのせいで!ごめん寝!」
ありがとうございました。