『追放者達』、『聖国』へと移動する
さて、皆さん
とうとうこの日がやって参りました
皆さんがコレを読んでいる時、作者は間違い無くルビコンにてコーラルの炎によって焦がされている事でしょう
これまでも投稿はある程度ストックを作った上で予約してあるのでまだ暫くは続く予定ですが、唐突に普段の周期で投稿されなくなったら『あぁ、アイツ(作者)はルビコンから帰って来れなくなったか』と思って頂ければ幸いです(笑)
さぁ、皆さんもルビコンへと旅立ちましょう(フロムに脳を焦がされた重篤な患者特有の粘っこい笑み)
ワダツミにて発生した『暴走』鎮圧の翌日。
アレス達『追放者達』のメンバー達の姿は、『仙華国』と『サンクタム聖王国』との国境に位置していた。
当然の様に、その場に居るのは彼らのみ、と言う訳では無い。
彼らと同様に、『暴走』を鎮圧して見せた『聖王国』所属である第二遠征騎士団と、その団長を務めるセシリアも一緒であったのだ。
…………何故、戦友として引き続き宴に参加する様に、と引き止める冒険者達や、秘密裏に先の一件を有耶無耶にする為にどうにかして口止めしたかったマレニアからの取り引きのお誘いや、闇討ちしてでもマレニアへの侮辱を取り消させたかったマリケスの企みだとかを放置してまで、疲労の残った身体に鞭打って強行軍を敢行したのか?
その答えは、昨日セシリアからアレス達、正確にはヒギンズへと向けて託された例の書簡が原因となっていた。
「…………セシリアちゃん、だったよね?
これ、本当の事なのかぃ?
こうして、正式な書式でモノを作って来られたら流石に本物だとは思うけど、それでも内容が内容だけに、ねぇ……?」
「それは、妾にも正直分かりかねている事ですわ!
確かに、その様な事に心当たりがまるで無い、とまでは言いませんが、それでもなんとなく、コレかしら?と思い付く程度に過ぎませんので、妾程度では知り得ないレベルでの事柄、と考えた方がよろしいかと!
それと、やはりソレは本物でしてよ?
何せ、妾が直接教皇陛下から授けられたモノですので、間違い無いかと思いますわ!」
昨日受け取った書簡を魔力庫から取り出して再度広げつつ、確認する様にヒギンズが問い掛ける。
すると、さも当然の事だ、と言わんばかりの勢いと口調にて、彼らに対して名前で呼んで欲しい、と自ら要求してきたセシリアが、やけに張りのある声量にて応えて行く。
普段からして、騎士として部下を率い、戦場を駆け巡る事を生業としているからかその声量は大きく、下手をすれば周囲からの注目を集めるどころか盗み聞きの類いを容易に行われかねない。
そんな懸念から周囲へと視線を配るアレス達であったが、彼らの心配を余所に当の本人は大して気にしている様子も見せずに、胸甲に包まれながらもその存在感はキチンとアピールしている胸を叩いて朗らかに告げて行く。
「そう不安そうになさらずとも、妾にお任せ下さいませ!
確かに、書面の通りの事であれば、国が始まって依頼の未曾有の危機、となる可能性が高いですが、こうして皆様が助力して下さるのですから、心配するに及びませんわ!
寧ろ、皆様が教皇陛下と力を合わせられるのでしたら、如何なる事態を前にしたとしても、大概の事はどうにかなってしまうのではないかしら?」
「…………仮にそうだったとしても、情報は何処から漏れるか分からないモノでしょう?
今回の件も、敵対している存在が居る、と言うのは確定しているとは言え、どこの誰が敵対している、と特定出来た訳でも無いのですから、そこら辺は慎重に行く方が良いのでは?」
「うむ、リーダーの言う通りである。
仮に、依頼主たる人物がその可能性に気付いていない、と言う事態が発生していた場合、何故普段の通りにギルド経由で送らずに、セシリア嬢に送らせたのか、と言う話になるのである故に、その心配はしなくても良さそうなのであるな。
まぁ、その反面、敵対存在がソレなり以上の深部にまで至ってしまっている、と考えられている動かぬ証拠でもあるのであるがな」
「なんだろうねぇ。
少なくとも、彼はその辺は抜かり無い性格をしているから、そっちを使わなかった、って事はやっぱり何かしらの不安があるんだろうねぇ。
それが、ギルド側の人員やシステムに不安がある、ってだけの話なのか、それとも彼の周囲に不安が残っている、って事なのかまでは分からないけど、ねぇ〜」
「…………私としましては、直接お会いした事は無いので見識は無いのですが、教皇陛下とはどの様なお方なのでしょうか?
確か、ヒギンズ様は親しくされているのでしたよね?少なくとも、個人的に文を交わし合う程度に仲がよろしい、とは聞き及んでおりますが……」
「あら?
妾としましては、その程度、で済む様な間柄では無い、と伺っていたのですが?」
「え、どう言う事!?」
「もしかして、教皇陛下とヒギンズさんって、そう言う関係だった過去がある、って話だったりするのです!?」
具体的な事は口にせず、それでいてシリアスな雰囲気のままに進んだ会話は、セレンの何気無い疑問により中断される事となり、最後には崩壊を迎える。
何故か、ヒギンズと教皇との関係性を興奮気味に疑うタチアナとナタリアの発言により、それはもう粉々に粉砕される事となったのだった。
片や、自身の最愛の人物の過去の遍歴に、その様な痕跡が残されていたのか!?との衝撃を受けて。
片や、意外とその手のジャンルに造詣が有り、忌憚無い表現をすれば『嗜んでいる』と言っても良い程度には理解があった為に、興味深々で。
そんな様子で会話に飛び込んでくれば、それはもう当然の如き結果として固く重苦しい雰囲気なんてモノは粉砕され、何処か彼方へと吹き飛ばされる事となってしまうのは当たり前だと言えるだろう。
同時に、何かしらの重大な勘違いをしており、ソレをそのままにしておけば自らの尊厳が壊滅的なダメージを受ける事になる、とこれまでの長い人生に於いて培って来た第六感が告げてきたヒギンズは、慌てながらも動揺はしていない、といった絶妙な口調にて口を開いて行く。
「…………あ〜、その、何だろう?
何かしらの勘違いをしているみたいだけど、彼との関係は別段怪しいモノでは無いからね?」
「怪しいモノでは無い!?
では、やらしいモノではある、と認めるのですね!?」
「いや、寧ろ何をどう受け取ったらそう言う解釈に行き着くんだい?
オジサンも彼も、見た目の通りに男の子なんだけどなぁ……」
「…………お、男なのに、男と……!?
ヒギンズ、あんた、今はソレ専門って訳じゃないのは知ってるけど、過去にそんな趣味を持っていた事が……!?」
「…………いや、いやいやいやっ!?
確かに、オジサンも若い頃にはイケイケで色々と遊んでいた時期もあったよ!?それは、否定はしないさ。否定は!
でも、だからってなんで同性に走った、と思われてるのさ!?
オジサン、こう見えて女の子大好き、おっぱい大好きだからねぇ!?!?」
「…………え?
むくつけき漢の大胸筋か、カチカチのお尻が好きなのでは無いのですか?」
「なんでそうなるかなぁ!?
普通に、柔らかくていい匂いのする女の子が大好きですぅ!!!」
半ば自棄に近い状態となっているのか、かなりあられもない発言をポンポンと暴発させるヒギンズ。
半ば決め付けに近しい尋問を、嬉々とした表情にて繰り出すナタリアに対して必死なのは理解出来るが、本来ならば秘して黙するのが正解なハズの単語までが、ポンポンと口から零れ落ちることとなってしまっていた。
その為、本人の恋人であるタチアナは耳まで真っ赤に染めて顔を手で覆って俯き、セレンはアレスを盾として一歩下がってから蔑む様な視線を送り、セシリアは若干顔を赤らめながらも聞いていないフリをして、アレスとガリアンは沈黙を守り通して石像と化していた。
…………なお、この後、どうにかタチアナからの誤解を解く事に成功したヒギンズは、この際にぶち撒けたアレコレによって地面へと蹲る事になったり、セレンと確実に距離を置かれる事となったり、自身への流れ弾を恐れたアレスとガリアンによって本来ならば受けられたであろうフォローをされずにいた為に、少々メンタル的なダメージを受ける事となったりもしたのだが、そうこうしている内に『サンクタム聖王国』の内部へと至った事もあり、半ば無理矢理普段の調子へと合わせて行く事となるのであった……。