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『追放者達』、暗殺者の古巣に到着する

ブックマークや感想・評価等にて応援して下さった方々に感謝です(^^)

 


追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達が雪原を駆け始めて数日が経過した頃。


 彼らの姿は、カンタレラ王国の第二の都市と名高い『アルゴー』の近辺へと移動していた。



 元より、その立地と規模から『カンタレラ王国第二の都市』としての尊称を得ていたアルゴー。


 第一の都市であり、王都でもあるアルカンターラから数日の距離に在りながらも、それに劣る事の無い立派な外壁によって囲われた大都市は、雪化粧を施された状態に在ってもその偉容を少しも曇らせる事無く存在していた。



 そんなアルゴーの付近へと到着していた『追放者達』であったが、その速度は他の来訪者達とほぼ代わり無く、割合と常識的な時間を掛けての移動であった、と言える様な結果となっていた。


 とは言え、普通であればまずしない様な冬季かつ積雪が進んでいる状態での移動だったり、周囲から魔物が集まって来る中を蹴散らしながら猛進しての移動であった、と考えると中々に異常なまでの速度である、とも言えるのだがそれはそれ、と言う事で触れないのが吉とも言えるだろう。



 …………だが、彼らはあくまでも『アルゴーの付近』に到達しただけであり、未だにその内部へと足を踏み入れる事は無く、そのまま停滞していた。


 いや、言い方を選ばないのであれば、彼らはアルゴーに滞在する事に()()()()()()()()()()と言っても良いだろう状態となっていた。



 幾ら彼らが人類の到達点であり、ほぼ人外に等しい『S級』に至っている冒険者とは言え、人間の類いであることは間違いでは無い。


 故に、こうして本来なら有り得ない季節・状態であるにも関わらず強行軍を実行する事を可能としていたとしても、やはり辛いモノは彼らにとっても辛いし、寒いモノはやはり寒いので本来であればすぐにでも飛び込んで宿を取りたい、と言うのが本音であるし、リーダーであるアレスも『そうするべきだ』と言っていた。



 …………なのに、彼らは依然としてアルゴー近郊の雪原にて停止したままであり、進んでアルゴーに入る訳でも、テントを張ってビバークを開始する訳でも無く停滞している理由は、ただ一つのみであった。




「…………なぁ、皆?

 いい加減、そろそろ行こうぜ?

 確かに、あそこにはあんまり良い思い出は無いと言えば無いよ?でも、だからって使えるモノ使わないで、辛い思いしなくても良い盤面でしなくても良いと思うんだよ、俺は。

 たったの数日でしかないとは言え、これまでの道中寒かったんだから、さっさと入って暖まろうぜ?な??」



「…………ですが、アレス様はお辛いのでしょう?

 先程も仰っておられましたよね?『あまり良い思い出は無い』と。

 なのでしたら、別にここに立ち寄る必要性は、あまり無いのではないでしょうか?」



「うむ、その通りである。

 幸いにして、日もまだ高い。

 進めるタイミングにて進んでしまった方が良かろう」



「そうそう!

 それに、まだまだ装備も物資もたっぷり在るんだから、補給も必要じゃ無いしね!」



「なのです!

 この子達も、まだまだ頑張る処か寧ろ余裕!と言ってるので、今日中にもっと進む事も大丈夫なのです!

 それに、この子達がいれば、余程アレな所にテントを張らない限りはちゃんと暖かいのですよ?」



「そこについてはいやはやごもっとも!

 君達にも大変お世話になっております!」



「「「「「「「「ワフッ!!」」」」」」」」




 仲間達による自身への気遣いと心配の波状攻撃により、自らの提案を敢えなく粉砕されてしまうアレス。


 その顔は仲間が自身の心身に対して心配してくれている事への申し訳無さと、そうして心配してくれている事、かつての自身への扱いに対して憤ってくれている事への歓喜が入り交じった事によって赤く染まっており、成人済みとは言え未だに年若い彼にとっては余人に見せられはしない状態へとなってしまっていた。



 なので、アレスによって誉められた事もあって近付いて来ていた森林狼達の内の一頭に顔を埋める事で誤魔化しを図るが、当然の様にそんな程度で隠しきれる程にその面積は狭くは無く、周囲から向けられる生暖かな視線によってソレは更に程度を増してしまって行く。


 更に、と言う訳でも無いのだろうが、彼のその行動により誉めて貰えただけでなく遊んでも貰えるらしい、と判断したらしい森林狼達がアレスへと向けて一頭、また一頭とじゃれつき始め、最終的には熊も交じっての大変ケモケモしいモフモフまみれな団子へと成り果てる事となった。



 そんなアレスの事を、大変微笑ましく見ていただけであったヒギンズだったが、そろそろ助け船でも出して上げようか、と一人沈黙を守っていた口を開いて行く。




「まぁまぁ、皆もその辺にしておきなって、ねぇ?

 休める時に休み、使えるモノは使う。コレは、冒険者の鉄則だよ?

 なら、さっさと入ってとっとと休んじゃった方が良いんじゃないかと、オジサン思うんだけどなぁ?」



「ですが……!」



「ほらほら、その辺はもう本人が『大丈夫』って言ってるんだから、良いんじゃないの?

 リーダーだって、皆の気遣いだって事は重々理解しているだろうけど、同時に彼も自分の事情で要らない疲労を溜め込んだり、苦労を皆にして欲しくない、と思っての言葉なんだから、素直に聞いておこうよ?皆だって、寒い事には寒いでしょう?」



「…………だが……」



「それに、って訳じゃないし、オジサンとしても嫌いな訳じゃないけど、流石に『野外泊』の『テント』で『二人きり』って言うのは、少し厳しいでしょう?

 やってヤれない事は無いにしても、流石に防音の類いは全く無い訳なんだし、他のメンバーに気兼ね無く自分のパートナーと過ごす時間が欲しい、と思うのは、果たしてオジサンだけだったりするのかなぁ~?」



「「…………っ!?」」



「ちょっ、いきなり何言ってるのよ!?

 まだ、アルカンターラ出て数日しか経ってないでしょうが!?もう我慢出来なくなったの!?」



「…………いや、どっちかって言うと、オジサン的には人肌が恋しいと言うか、温もりが恋しいと言うか、ねぇ?

 あと、どっちかって言うと、そう言うのを積極的に求めて来るのってタチアナちゃんの方『チャキッ!』……いや、何でも無いです」




 ヒギンズが放った最後の方のセリフにより、若干二名が息を呑みながら目の色を変化させる。


 彼らが『冬籠もり』と言う名目にてパーティーハウスへと引きこもる(約半月程度であったが)切っ掛けを作った張本人達であり、その間に何かと理由を着けて自身のパートナーを補しょ……蹂り……貪……『味わって』いた為に、ここ数日のパートナーとの触れ合い(健全)すらも少なくなってしまっていた状態には、心の奥底では不満に近しい感情を抱く事となっていた。


 その為、と言う訳でも無いのだろうが、彼の提案は彼女らの心の天秤を大きく傾けるのには十二分な重さを持っていたのだ。



 二人の心が傾いたその瞬間、それぞれのパートナーであるアレスとガリアンの背筋に悪寒の様な背徳感の様な、何とも言い難い感覚が走り抜け、思わず同時にブルリと身震いする事となる。


 そして、抜き身の短剣を手にした恋人(タチアナ)に追い掛けられながらも、笑顔で振るわれる刃を弾いていたヒギンズに対して『やっぱり撤回を……』と持ち掛けるよりも先に賛成へと意見を転じられ、結局の処としてアルゴーへと立ち寄る事に決定する事となるのであった……。




取り敢えずストックが尽きたので連続投稿はここまで

予定では月・木の12時に定時で投稿する予定ですのでコレからもお付き合い頂ければ幸いですm(_ _)m

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