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重戦士、混乱する

 


「万が一、拙がこの試合で勝利する事が叶った場合、ガリアン殿と婚姻を結び、その種にて拙を孕ませて頂きたいのです!」



「いや、二度言え、とは言っておらぬのだが!?」




 先の唐突過ぎる発言により、静寂が支配していた道場の内部へと、再び同じ内容の発言が同じ人間により放たれる。


 それには、思わず相対して言葉を向けられていた本人であるガリアンも声を挙げざるを得なかったらしく、少々方向性としてはアレながらも取り敢えずツッコミを入れてしまう事となる。



 自らの主張を遮る様な形での発言であれば、普通は気分を害するモノであるし、ソレが親しい間柄の人物でなければ敵意の類いを向けたとしても不思議では無い行為である。


 特に、彼女の様に、元々彼の事を敵視していた様な関係性であったのならば、よりその傾向は顕著なモノとなるのは間違い無いだろう。



 が、そう言った謂わば『普通の反応』による予測を軽く裏切り、カレンデュラはその場でしゃなりと佇まいを直すと、雰囲気すらも楚々としたモノへと瞬時に変化させながら再度口を開いて行く。




「あら、コレは失礼を。

 少々、拙も興奮が過ぎた様でした。

 細君として、夫の顔を立てられないのは恥ずべき行為でしたので、どうか平にご容赦を」



「…………お、おう?

 いや、その、突然な物言いに、少々驚いていただけ故に、そこまで大層に受け取って貰わぬでも良い、と言うか何と言うか……。

 それと、まだ勝負が終わった訳では無く、当方としてもそちらからの話を受けると決めた訳でも無いのであるが……?

 と言うか、仕草だけでなく口調まで変わりすぎではないであるか?本当にさっきまでと同じ人であるのか?」



「ふふっ、いやですわガリアン殿。

 先程までの事は、お忘れになって?

 流石の拙でも、それまで吹き込まれていた情報頼りで『最低な相手』と認識していた方と、自らの探し求めていた『最高の伴侶』とでは多少態度に差が出たとしても、仕方のない事だと思って頂きたいですわ」



「…………最早、誰だか分からぬレベルで口調が変化しているのであるが、その……『探していた最高の伴侶』云々とは如何なる事であろうか?

 流石に、ほぼ初対面になるそなたにその様な事を言われたとしても、理解し得ないと言うか……」



「まぁ!確かに、それもそうですわね、失礼を致しました。

 旦那様にご納得頂く為に説明させて頂きますが、拙が彼のハウル家へと養子として入ったのには、拙が求めていた『最高の伴侶』を見つけ出すのに最も適している、と判断したが故の事です。

 つまり、拙よりも強く、それでいてその『力』を次代以降にも色濃く残せるであろう種の持ち主であろう殿方、平たく言えば旦那様の事を探していた、と言う事です!」



「…………え、えぇ〜?

 それだと、そなたよりも強い異性であれば誰でも良い、と言っている様に聞こえるのであるが……?」



「まぁ、失礼な!

 流石に、その物言いは旦那様といえど看過出来かねますよ!?

 拙とて、誰でも良い、何でも良い、と思っている訳では無いのですよ!?」



「そう思っているのであれば、余計に当方の事を見定めないで欲しかったのであるがぁ……。

 と言うか、まだ試合に負けた訳でも無いのに『旦那様』呼ばわりは辞めて欲しいのであるが?当方にも既に、恋人と呼んで差支えない関係の人が居てだね……」



「あら?もう、側室を迎えられているのですか?

 拙は心の広い妻ですので、側室の一人や二人は迎え入れるのに否やはありませぬよ?

 ですが、流石に正妻としての座は譲れませぬし、初子は拙の肚に宿して頂かなくては、その……少々、悋気に触れてしまうと申しますか……」



「まだ言葉を交わしただけであるのに、もう正室認定を始めているのであるか!?

 いや、そもそも、当方にとっては現在の恋人が最愛の人であって、そなたには特に感情や想いを抱いてはいないのであるが!?」



「ですが、旦那様。

 名門として名高いハウル家の直系である旦那様の御子を、次代以降のハウル家の当主として据えようと思えば、流石にどこぞの馬の骨とも知れない肚から産まれた者をお使いになるのは、些か無理が在るかと……。

 その点、拙は遠縁とは言えこのハウル家とも連なりの在る由緒正しき家系の産まれでありますし、職業も『剣巫女』を授かっておりますので、資質としても十分かと。

 …………それに、この様に乳も尻も十二分に大きくなっておりますので、強く元気な子を幾人でも産み落とす事が出来ます!なれば、旦那様の正室は拙を於いて他には無いかと!」




 家系やら家柄やら職業やらでアピールしてもガリアンの顔色が良い方向に変化しなかった為か、最終手段に出て来たカレンデュラ。


 なんと、防具として着けていた胸当ての肩紐を緩め、引き下げる様にして胸元を晒し、その真っ白で豊満な谷間を衆目の元へと暴露して見せたのだ。



 おまけに、それまでは体型を隠すようにしていた袴の方も、元々察する事が出来ていた腰の細さだけでなく、帯で調節したのか身体のラインに沿う様な形で締め付けたらしく、毛量も豊かな尻尾の下からは程よい大きさの臀部の形がくっきりと浮かび上がる事となってしまっていた。


 仙華国特有の下着を着けているからか、パンティーラインすらも浮かばずにダイレクトに晒されたその若々しく瑞々しくも成熟した柔らかさと曲線とを描く体型に、観戦していた男性陣や、既に敗退していた参加者達からは生唾を呑み込む音と共に、欲望が多大に入り混じった視線が一挙に注がれる事となる。



 …………流石に、未だに未婚の乙女としてはその状況下で羞恥心を覚えるな、と言うのが無茶な要求であったのは当然の事であったらしく、瞬時に衣服の裾を戻し、帯や肩紐を手早く元の状態へと戻して元々の通りに男装に近い形へと復帰させて行く。


 が、それでもやはり恥ずかしかった事には恥ずかしかったらしく、顔を赤らめて視線を俯向け、その上で抜き身の刃を握ったままとは言えモジモジと両手を捏ね合わせる様な素振りを見せ始める。



 先程までの大胆な発言と行動、並びに最初に見せていた男勝りな口振りと振る舞いに比例して、先の楚々とした立ち振る舞いと現在の乙女としての恥じらいの落差が絶妙に混じり合った結果として、凄絶なまでに『女』としての存在感を周囲へと放つ事となったカレンデュラ。


 そんな彼女の事を、確かにガリアンは『魅力的ではある』と認めるに至っていた。



 元々、酒場の席に於ける冗談として『総受けする』と放つ程度に、彼は女好きではあった。


 それも、元来は肉付きの良く、体格も良い様な女性であれば尚良い、とまで公言する始末。



 自身の体格が恵まれているが故に、相手のソレもそれ相応に大きくはないと相手に出来無い、との思いが根底に在ったとしても、それはそれとしてやはり『大きい事は良い事だ』の畑の人では在ったのだ。


 だから、カレンデュラの振る舞いのギャップから、確かに彼女の事を女性として認識し、同時に魅力的な異性である、とは彼の中で確認される事となった。



 が




「…………まぁ、そなたが確かに魅力に溢れている、と言う事は認めよう。

 そして、先の提案を受け入れても良い、とは返事もしておくのであるよ」



「まぁ、本当ですか!?

 それは、正しく重畳と呼ぶべきモノかと存じます!」



「だが、その上で宣言するのであるよ。

 当方はそなたには負けない。絶対に。

 故に、そなたと婚姻を結ぶ事は無いし、子を成す事も同時に有り得ない、とな」




 と、ナタリアの方へと視線を切りながら、そう言い切って見せたのだ。


 その剣幕に、思わず気圧されるカレンデュラと、最初から分かっていた、と言わんばかりの様子にて頷いて見せるナタリアの姿は、どこか対照的な絵画にも似た何かにも見えた。



 そんな二人の無言のやり取りに気付いたのか、一瞬視線が険しくなるカレンデュラ。


 だが、次の瞬間には気配を引き締め、手にしていた刃を握り直して構えを取る。




「………………そう、ですか。

 では、仕方のない事ですね。

 旦那様をそれとなく導き、悪癖を正すのも妻の勤め。

 なれば、此度は全力で行かせて頂きます!」




 そして、彼女として譲れない一線として宣言を口にすると、ガリアンへと向けて突っ込んで行くのであった。


下半身が反応したからと言って直接行動するのは人としてどうかと思うの(作者)

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[一言] 下半身にチン格あり…………(脱兎)
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