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『追放者達』、攻勢に出る・2

 


 仲間と合流し、意志の疎通と意見の交換を行った上で今後の方針を固めたアレス達は、早速とばかりに行動を開始する。


 ……と言っても、先程までとやっている事はそう大きくは変わらない。



 周囲から群がって来る通常個体を蹴散らしながら、異常個体が仕掛けて来る根による奇襲を回避し、それに対して反撃する、言ってしまえばそれだけの事である。


 とは言え、別段完全なる焼き増しに過ぎない、なんて事も無く、相違点として挙げられるのが三箇所程。



 先ず一つ、最前線に出ているのがアレスでは無くガリアンである事。


 これは、本来のパーティーのポジションを鑑みれば盾役であるガリアンが前へと出ているのは当然の事ではあるのだが、先の会話にて自身が決める、と言っていた点から考えると少々違和感にも似た感覚を覚えなくも無い。



 次に、それまでとは異なり一箇所に留まる事をせず、最前線を押し上げる様に進んでいる事。


 これも、彼らの目の前に存在する異常個体を討伐する、と決定し、かつ遠距離からの攻撃等はほぼ無意味である、との結論が出た異常は最早必然と呼べる様な選択であるのは間違い無いのだろうが、それでもタチアナやナタリアを避難させずに伴ったまま、となるのは異様な部分と言えるかもしれない。



 そして、最後の三つ目の相違点として、リーダーであるアレスの姿がその一行の中に存在していない、と言う事。


 最前線をガリアンへと託して後衛の護衛に回った訳でも、中衛として活躍をするヒギンズと合流してその辣腕を振るっている訳でも無く、本当に文字通りの意味合いにてその場から姿が消えてしまっており、何処に居て何をしているのかすらも分からない状態となってしまっていた。



 …………彼の本職が『暗殺者』であり、修得しているスキルを幾つか組み合わせる事で、本当にその姿を晦ます事が出来る、と言うのはコレまでも幾度か在った事ではある。


 が、こうして戦闘中であるにも関わらず一人姿を現さず、また唐突に何処かで悲鳴が上がったり、突然胸を貫かれたり首を跳ばされたりして倒れ伏す個体が見当たらない事から、姿を隠して戦闘に加わっている、と言う訳では無いらしい、と言う事が窺えた。



 一人、未だに続く戦闘から離脱した?


 戦い続ける仲間を、恋人を見捨てて、たった一人で?



 彼の性質を考えればまず初めに切り捨てられる様な疑念だが、状況だけを鑑みればそれしか答えは出ず、また仲間達にも動揺や苛立ちと言った感情は見られないが為に、何らかの作戦の為の行動なのだろう、と予測はされるが、それでも答えは出て来ない。


 それに、たった一人の行方に意識を傾けている余裕を彼らが持てる程に楽勝、と言える程に温い戦場でも無いらしく、徐々に前へと進んでいるガリアンの兜によって隠された表情には余裕が浮かんではいなかった。



 それもそのハズ。


 何せ、一体一体は大した事は無いとは言えその数は膨大であり、ある程度の連携まで使ってくるのだから気を抜けるタイミングが無い上に、足下、と言う絶対的な視覚の外側にして死角から繰り出される奇襲に備えながら前進しなくてはならないのだ。



 幸いにして、群がって来る通常個体は防御篇重なガリアンでも鎧袖一触に薙ぎ払える程度であり、真正面から来るモノに関しては後衛に通してしまう心配は無いし、仮に通してしまったとしてもソレをフォローしてくれる中衛が居る為に安心は出来る。


 それに、死角からランダムなタイミングにて迫る奇襲攻撃も、その前兆としてそれなりに大きな地揺れが足下から感じられる為に回避は難しくは無いし、寧ろ攻撃するタイミングを教えてくれている、と後衛にて回復役と兼任にて打撃による攻撃役も熟しているセレンからは好評(?)となっている程だ。



 が、それはそれとして普段であれば防御に専念してアレスやヒギンズに横から刈り取って貰う様な密度で放たれる攻撃を受けながらも前進しなくてはならなかったり、受け止めてから対処すれば良かったのであろう攻撃を回避してから反撃する、と言った慣れない行動まで取る必要が発生していた。


 故に、彼としては自身で言い出した事ではあるが、普段の様に基本的に攻撃は仲間に任せて防御に専心していれば良い、と言う訳では無い状況に疲労感と戸惑いとを感じ始めていたのだ。



 とは言え、彼も自身の腕前と実力にて冒険者としての実質的な最高峰である『Sランク』(一応『SSランク』もあるが【魔王討伐】や【災害鎮圧】等の有り得ないレベルでの功績によって与えられるほぼ名誉職)まで登り詰めた実績がある。


 彼本人としても、幸運と仲間に恵まれたが故の栄達である、とするであろうが、それだけで到れる様な領域であるハズも無く、またそうであったのならば疾うの昔にその命は尽き果て、野に屍を晒す事となっていたであろう事は、これまでガリアンが潜り抜けて来た死線の数々が証明していると言えるだろう。



 そんなガリアンだからこそ、ここまでの数の暴力に晒されながらも前進し続け、仲間を守りながら奇襲にも対応し、時に拘束を受けても持ち前の膂力にて無理矢理に引き千切る事によって解除しながら歩み続ける事が出来ていたのだ。


 彼以外の生半可な盾役であれば、一体であれば通常個体は余裕で対処できたかも知れないがその無尽蔵な数の暴力にあっという間に磨り潰されていたか、もしくはその大半を相手にする事が出来ずに後ろに流して役割を早々に放棄する羽目になったか、それか足下からの奇襲に対処しきれずに鎧ごと締め潰され、異常個体の腹に収まる事となっていただろう。



 尤も、彼をしても仲間からの援護や周囲の通常個体の掃討等を行っている従魔達の協力が無ければ前進までは出来なかっただろう事を鑑みれば、彼らが相対している事態こそが異常な状態であり、尋常な人材であればそうなる他に無い、と言えてしまうのは仕方無い事だろう。


 それに、何だかんだと耐えるだけであればガリアン単体でもどうにかなっただろう、と本人には思える程度のモノであり、かつ仲間同士として実力を把握している間柄であるヒギンズであれば、どうやって、かは置いておくとしても、どうにかして事態を解決に導いただろう、と言う信頼の様なモノが存在していた。



 そうして、ガリアンにしては珍しく疲労困憊の兆候を見せながらも、目的地であった異常個体の根本の付近へと到達する事に成功する。


 斧や剣を振るって攻撃するには些か遠く、かと言って槍を振るえばそれで即座に攻撃が通る、と言う訳でも無い、些か微妙に遠間な立ち位置。


 そこが、彼らが安定して進める限界の部分であった。




「…………ふむ、これ以上は迂闊に足を踏み込めんな」



「ええ、その様ですね。

 ここが、障壁の縁、とでも呼ぶべき場所の様です」



「ここから先は、アレの魔力で満たされてるのよね?

 そこに踏み込んだらどうなるんだったかしら?」



「別段、即死する様な事にはならなかったハズなのです!

 でも、生まれ持った魔力と相反する魔力に高濃度で晒されるので、普段の通りに平気な顔をして、って事は難しいハズなのです!」



「まぁ、高々毒を盛られた程度のダメージを受け続ける羽目になるだけだから、そんなに身構えなくても大丈夫だよぉ。

 倒しちゃえばどうとでもなるんだし、緊張しないで、ねぇ?」



「ソレを聞いて緊張するな、って言う方が無茶なんだけど!?」




 そんな彼らのやり取りを目の当たりにしてか、それとも本能による反射的な行動であったのかは定かでは無いが、異常個体はそれまでソレ単体のみにて運用していた根を複数本地面から突き上げ、自身と彼らとの間に展開してゆく。


 それにより、正に根の壁、とでも呼ぶべきモノが彼らの目の前に立ちはだかると同時に、それまで以上の数が産み出される様になった通常個体が彼らへと目掛けて襲い掛かって来るのであった……。





取り敢えずあと2話位で終わる予定(予定は未定)

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