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『追放者達』、依頼に赴く

 


「…………じゃあ、取り敢えずこの三つでお願いします」



「承りました!

 では、これらの依頼は冒険者パーティー『追放者達(アウトレイジ)』の皆様が受諾されました!

 可能な限り、迅速な解決をお祈り致しております!」




 結局、彼らが受諾したのは『不人気な魔物の掃討』『特定の素材の納品』『指定区域の探索』の三つであった。


 それぞれ、このランタオから近い、とはとても言えないが決して遠くも無く、それでいてそれぞれの場所が比較的近くにあった為に、こうして選ばれる事となった、と言う訳だ。



 必要な手続きと調査を取り敢えず終えた一行は、ギルドの建物を後にする。


 時間は未だに朝方と言っても過言では無く、日も未だに昇りきってはいない時間帯であった為に、これからどうするか、との話し合いが発生した。



 取り敢えず、面倒事はさっさと片付けてからその後の道程やら何やらを考えるべき、と言う形で意見を統一する事には成功したのだが、一つ問題点が浮上する。


 それは、今は宿の一室にて留守番しているナタリアの従魔達を呼んでくるかどうか、と言う事であった。



 元々、彼らの方針としては、この日に関しては遠出するつもりは無く、よって従魔達にも半ば休日的な扱いの日として与える予定であった。


 そして、現に遠出と言える様な距離にある依頼は選ばなかったのだが、それらの場所が絶妙に遠いと言えば遠い、みたいな距離感に在るのだ。



 地図を見て、説明を受ける限りであれば、彼らの足ならその日の内に到着するなんて事は勿論、日が出ている内に目的を達成し、そのまま帰って来る、程度は余裕で終える事が出来るだろう。


 が、ソレをするには微妙に遠く、かつ絶妙にしんどそうな距離である為に、一回宿に戻って従魔達を連れてくるべきか否か、との話になったのだ。



 彼らの現在地は、ほぼ通用門の近く、と言っても良い場所。


 そして、彼らが泊まっている蓬莱亭は、街の中心点を挟んでほぼ真反対の位置に在る。



 そこに移動するまでに、それなりに時間も掛かる。


 故に、そこまでの労力を払うだけの意味が在るのか?と言うのが現在の論題な訳だ。



 連れてくれば、確実に往復の道中は楽になる。


 それは、間違い無い。



 が、そうしてわざわざ呼びに行くだけの時間を掛ければ片道分は軽く片付きそうな距離である(人混みの多い街中を注意しながら歩くのと、外で他を気にせず全力疾走するだけで良い事、の差)し、それだけの時間差があれば復路に関しても大差は出来ないだろうと思われる。


 それに、合わせて考えれば、休ませる、と一度決めた彼らを働かせる様な事になるのは如何なモノでは無いだろうか?との思いも無くはない為に、少々躊躇う事態となっている、とも言える。



 尤も、本人(獣?)達としては、彼らの移動や戦闘を補助する事を『働かされている』と思って嫌っている、と言う訳では断じて無い。


 寧ろ、彼らと一緒に行動し、共にあちらこちらへと移動し、時に褒めて貰ったり、時にイタズラを仕掛けて叱られたりする事が大好きである為に、一緒に居ることこそが半ば報酬と化しているので彼ら的には『働いている』とはちょっと感覚が異なる状態となっているのだ。



 そんな状態である、とテイマーとしてのスキルで知っているナタリアが、別行動をする位ならば連れて行って上げるべき、と声を挙げ、何かと一緒に居る事が多いガリアンも、それに賛成した。


 最初こそ、休ませて上げるべきでは?との立ち位置を取っていたセレンや呼びに行くのが面倒だ、との事で主張していたアレスも、その声を聞く内にならそうするか、と意見を変え、結局従魔達の足によって依頼の場所へと向かうこととなるのであった……。






 ******





 従魔達の橇を走らせる事暫しの間。


 一行は、目的地としていたエリアに到着していた。



 初めての場所であり、かつ一応は地元民であるガリアンでさえ土地勘が在る場所、と言う訳では無かった為に、写し取った地図を頼りに移動する必要があったので、想定よりも時間が掛かる事となってしまっていた。


 とは言え、従魔達の移動速度と踏破能力を以ってすれば大概の悪路や難路はどうにかなってしまった為に、自分達の足で移動していた場合とほぼ同じか、もしくは少し早い程度の時間帯に到着する事に成功していたのだが。




「…………さて、取り敢えず到着した、っぽい訳だが、先ずはどうする?

 サクッと魔物の殲滅辺りから始めるか?」



「うむ、ソレが良かろうな。

 下手に暴れられたり、感付かれて逃げられたりすると面倒であるし、何より採らねばならない素材を傷付けられてしまう恐れがある。

 故に、さっさと潰してしまうのが良かろうよ」



「んで、依頼になってたのが確か……『邪森華魔人(イヴルドリアード)』だったわよね?

 半分人みたいな見た目してる、動く華って言うか、草って言うか?そんな感じの」



「えぇ、そうだったハズです。

 一応、意思疎通は出来なくは無いですが、それでも我々人類に対して敵対的ですし、その上いつの間にか増えていたりする事から、魔物として認定されている存在ですね。

 それと、人の様な見た目をした上半身はある意味飾りで、本体は草の様な下半身みたいですよ?」



「まぁ、その飾りの部分が結構人に近いから、やっぱり嫌厭されるんだけどねぇ〜。

 で、そうやってこの一帯の邪森華魔人狩り終わったら、そいつらが邪魔して調査出来ていなかったこの森の奥を確認して、ついでに素材も回収して今日はお終い、って感じかなぁ?」



「なのです!

 素材として指定されている薬草なら、ボクが形やら特徴やらを知っているので間違えはしないのですし、暴れられて傷付けられたりしなければ大丈夫なのです!

 それに、調査と言っても大体どんなモノがあるのかは予測されているらしいので、ソレが在るかどうかを確認するだけで十分みたいなのです!」



「んじゃ、そう言う訳なんでサクッと殺っちまうか。

 まさか、この中に人型だから、って『攻撃出来ません!』とか言う情けないヤツは居ないよな?」



「「「「「当然!」」」」」




 目的を再確認したアレス達は、目の前に広がる森に対して、無遠慮にも思える仕草にて足を踏み入れて行く。


 特に音に気を使う様な事もせず、気配を隠そうともしないその姿勢に、その森の支配者を自認するそれらは無作法な侵入者達を迎え撃ってやろう、と彼らを包囲する様に姿を顕わにして行く。



 地面から、木々の梢から、木そのモノから。


 様々な方法と、様々な場所から姿を現して行く邪森華魔人の群れに対して、アレス達は特に驚く様な素振りも見せず、同時に得物を構える様な事もしないでいた。




『∀Å≦Ⅸ!⊃¥〓♂!!』




 それに対して気を良くしたのか、嘲る素振りを隠そうともせずにその群れのリーダーと思わしき個体が謎の言葉を放ちながら、人を模していると思われる上半身の顔を醜悪に歪めて行く。


 そして、上半身の腕に備わった鋭い鉤爪だけでなく、下半身からも伸びている根の様な部分を鋭い槍の様に変化させると、アレス達へと目掛けて穿かんと放って行く!



 …………が、ソレが彼らの身体を貫通する事は無く、それどころか彼らの身体へと届く事すらも無く空中にて分解され、呆気なく地面へと落とされてしまう。


 一瞬、自身の身体に何が起きたのか理解出来ない、と言った顔をしていたリーダーの個体は、いつの間にか得物を抜き放っていたアレスへと怯えを含んだ視線を向け、一歩二歩と後退りながら周囲の個体をけしかけて行く。



 それに応える形にてアレス達『追放者達』も大きく前へと踏み出し、魔物と冒険者とによる生存の為の闘争が開始される事となるのであった……。




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