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『追放者達』、部屋にて寛ぐ

 


 スケベ心丸出しでセレンへと視線を送っていた愚か者共(自殺志願者)を殺気一つでアレスが撃退した少し後。


 彼らは、取っていた大部屋へと戻っていた。



 つい先程、不愉快にも程がある視線を山程向けられた、と言う事もあるし、未だに周囲に何が在るのか、すらも知らず、また部屋に従魔達を置き去りにしている形となっていた為に、一旦部屋へと戻った方が良いだろう、と判断したが為だ。


 …………決して、自分の女に下衆な視線を向けてくれた連中を後で抹殺しようと企んでいたアレスだとか、そうして怒ってくれたり想ってくれたりしている事が嬉しくて、下火になったハズの『何か』が再燃しそうになったセレンだとかを鎮静化させる為、と言う訳では無い。無いったら無いのだ。



 大部屋へと一行が戻ると、内部で思い思いに待機していた従魔達が一斉に視線を彼らへと向けて送って来る。


 カンタレラ王国では見られなかった、何かの草を干した物を編み込んだモノが敷かれている床へと寝そべったり、寝転んだりしていた森林狼達が、それぞれの速度にてそれぞれが懐いている相手の元へと尻尾を振りながら歩み寄って行く。



 当然の様に、一番懐いているのは、主であるナタリアに対してだ。


 これは、ただ一頭腹を出しながらいびきを嗅いている月紋熊であるヴォイテクを含めた全頭がそうである、と言えるだろう。



 そして、他のメンバーに対しても、懐いてはいない、と言う事もまた無いと言える。


 何だかんだと言って、何度も死線を共に潜って来た間柄であるし、普段からして可愛がってもくれるので、全員に対して懐いている、と言える状態だ。



 だが、ソレはそれとして、個体毎に『好きな相手』として懐いている相手は別々に存在していたりもする。


 撫で方が一番好みであったり、良くオヤツをくれたり、散歩のペースが最も合っていたり、遊んで欲しいタイミングで遊んでくれる事が多かったり、と言った要素の積み重ねだ。



 なので、一旦は必ずナタリアの元へと歩み寄り、舐めたり匂いを嗅いだり、身体を擦り付けたりするが、それらが終わると思い思いのメンバーの元へとハヘハヘ言いながら向かって行く。


 そして、それぞれの相手が座ったのならばその膝下に、まだ立っていたのならば足元に、寝そべっているのならば顔を一舐めしてから自身も寝そべり、荷物を整理し始めたのならその尻へとイタズラを仕掛けて行った。



 当然、そうなれば撫でる者、抱き上げる者、抱え込む者、反撃する者、等々の反応を返しつつ、それぞれで遊んだりして和んで行く。


 とは言っても、広い部屋の中で人目も無いから、と巨大な本来の姿に戻ってのそれらの行動であった為に、傍から見た限りでは巨大な狼に埋もれたり、潰されたり、襲われたりしている様にしか見えない状況となっているのだが。



 そうして過ごしている内に漸く落ち着いたらしく、ヴォイテクに凭れながら右耳の折れている個体を膝に乗せつつ撫でていたアレスが、尻尾が白くなっている個体の背中を優しく叩いて寝かし付けている、彼と同じく落ち着いたらしいセレンへと向けて言葉を放つ。




「もう大丈夫そうだし、実際今の格好は相当似合ってるからもう良いけど、もう少し危機感ってヤツを持とうね?

 実際、あの時はかなりヤバかったからね?周囲の目があったからどうにか我慢したけど、そうでなかったらどうなっていたが、どうしていたか分からないからね?

 分かってらっしゃる?」



「…………それに付きましては、大変にご迷惑を……。

 ですが、敢えて反論させて頂きますと、あの時は私本人としましてもどうにも抑えが効かなかったと言いますか、制御が難しい状態であったと言いますか……」



「寧ろ、そう言う状況だったからこそ、変な色気ぶち撒いていた事を理解して欲しかったんだけどなぁ……。

 あんなに急いで出て来なくても、多少時間が掛かってでも落ち着くまで待ってからの方が良かったんじゃないか?」



「そう、ですね……。

 今になって思い返してみれば、確かにそうだったのですが、待たせるのも悪いかと思ったのと、その…………少しでも、早く……アレス様に今の姿を見て、頂きたくて……」



「……………………あぁ、もう!

 そんな事言われたら、これ以上小言零すなんて出来ないでしょうがよ、まったく!

 …………ほら、こっち来んしゃい」




 セレンが可愛らしく頬を染めながら放った言葉により、アレスは前髪をグシャグシャに握り潰しながら項垂れてしまう。


 彼本人としても、恋人のいじらしい側面を見せられたそれだけで、とチョロさを自覚してはいたものの、それでもそんな事を言われてしまっては小言を続ける事が出来ようハズも無く、自らの隣を軽く叩きながら彼女に移動を促して行く。



 元より、セレンに対してはそこまで怒っていた訳では無いアレス。


 ただ単に、あれだけの艶姿を、恋人である自分以外の男に対して無防備に晒していた事を咎めたかった、と言うだけの話。



 仕方のなかった側面もあり、かつそれだけ早く見て貰いたかった女心、との面を加味した結果、彼の内部の独自法廷では彼女の無罪放免即時釈放が可決され、可愛らしい彼女との触れ合いを対価として要求している、と言う訳だ。


 そして、当の本人であるセレンとしても、どうやら『そういう気分』であったらしく、嬉しそうに微笑みを浮かべながら尻尾の白い個体と共に移動し、彼の隣へとポスリと座り込むと、同じ様にヴォイテクへと凭れ掛かりながら彼の肩へと頭を預け、手を取ってスリスリニギニギし始める。



 時折見せる肉食的な側面が強いと思われがちなセレンであるが、それはあくまでも彼女が現在に至るまで長く永く禁欲的な生活を強いられる立場にあったからこそ。


 彼女とて、四六時中彼と交わる事ばかり考えている訳でも、ソレを実行しようと虎視眈々と狙って居る訳でも無く、普段であればこの程度の軽い触れ合いや穏やかな時間の過ごし方こそを好んでいたりもするのだ。



 尤も、初めこそはそう言うつもりが無いままに触れ合いを始めたは良いものの、途中から変な気分が盛り上がってきてそのままなし崩しに……と言ったパターンも無い訳ではない、とだけは述べておく。


 なお、大体の場合アレスの方に責任は無く、セレンの要望が押し通される事になる、とも彼の名誉の為に追記しておきたい。



 そうして、比較的健全な触れ合いを始めた二人に充てられたのか、他の恋人達も過激にならない程度に触れ合いを始めて行く。


 ガリアンとナタリアのカップルはその体格差を生かし(?)て組まれた足の間に入りながら群がって来る従魔達のブラッシングを始めているし、ヒギンズとタチアナのカップルは彼が伸ばした尻尾を枕にする様に従魔達と並んで寝転ぶ、と言った、傍から見ていると何をしているのかイマイチ理解に苦しむ触れ合い方をしていた。



 その後、アレス達のペアが互いの髪や耳を撫でたり揉んだりし始めたり、ナタリアがガリアンにまでブラッシングを始めたり、タチアナがヒギンズの尻尾の鱗をカリカリしたりモミモミしたりし始めた事により部屋の中が何やら妖しげなと言うか、艶めいたと言うか、とにかくそう言った方向性の雰囲気へと徐々に変わり始めて行く。


 大部屋、と一口に言っても現在彼らが居る場所のみが宿泊場所では無く、奥の方には小さいながらも個室めいた場所も無くはない。



 その為、何となくそんな雰囲気になってきたかなぁ〜?と言ったペアがそちらの方へと移動しようとした正にそのタイミングにて、部屋の外から食事の準備が整った、との知らせが入る事となり、結局男女での秘事はお預けとなるのであった……。




別段四六時中相手の事を喰っちまおうと考えている訳では無いのですよえぇ(目逸し)

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