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『追放者達』、合流する

今回ちょい短め

 


 アレス達男性陣が温泉を堪能し、ガリアンやヒギンズが腰ら肩やらが軽い!と喜びの声を挙げながら浴槽から上がり、備え付けられていた衣装に身を包みながら待つ事暫し。


 漸く、女性陣が女湯と書かれ、浴場の入り口に掛けられていた布を潜って姿を現した時には既に、彼らの湯上がりの熱は収まり、汗も残った湿り気も総じて乾いた後となっていた。



 とは言え、別段湯冷めした、と言う訳でも無い。


 男湯と女湯とで分かれる前の部分、ある種の待ち合わせ場所的な造りになっている所があり、そこでは暖房も効いていて暖かく、椅子に座って待機したり、有料ではあるが飲み物も買える様になっていた為に、ゆっくりと待つ、と言う点に関しては最適と言える環境にあったからだ。



 尤も、そうであったとしても相手を待たせていた、と言う事実には変わり無く、未だに髪に湿り気を残しながらも女性陣がアレス達の元へと歩み寄って来る。




「申し訳ございません。

 お待たせしてしまったみたいですね」



「いや?

 そんな、言う程待った訳じゃ無いから、気にしなくても良いんじゃないか?」



「うむ。

 元より、女性の入浴は諸々の理由により長引く、と言うのが定めであるが故に、大して気にはしていないのでな」



「なによ?

 その口振りだと、入浴時間は気にしてないけど、それ以外の点に関しては気にしてる、って言ってる様なモノなんだけど?

 少なくとも、そうとも取れる言い回しなのは気になるわね」



「なのです!

 確かに、遅れたのはボク達が悪いのは間違い無いのですが、その言い回しはタチアナちゃんじゃなくても気になるのです!

 流石に、何が気に触ったのか教えてくれないと、ボク達としても改善の余地が無いのですよ?」



「…………あ〜、その、なんだけど……。

 実は、別段ガリアン君も怒ってる、って訳じゃ無いんだよねぇ〜。

 いや、ある意味では、怒ってる、と言っても良いのかも知れないけどさぁ」



「「…………???」」



「…………いや、だから、ね?

 君達、どうやら、矢鱈とここの温泉が気に入ったみたいだ、って事は分かるよ?オジサンも、とても良い湯だったと思うし。

 それで、楽しくなって燥いじゃうのも、理解は出来るよ?一応はね?一応は」



「「…………??」」



「……でも、だからって、他のお客さんも居るであろう場所で、あそこまで騒ぐのは、如何なモノかなぁ?って、ね?

 ……それと、あの時の声、こっちにまで聞こえていたんだからね?幸い、オジサン達が入ったら他のお客さん達はさっさと出ちゃったから聞かれなかったとは思うけど、それでも、ね?」



「「っ!!」」




 ヒギンズの言わんとしている事に理解が及んだのか、思わず顔を赤らめるタチアナとナタリア。


 女湯での『戯れ』は主にこの二人によって行われた事であるが故に、その責任と羞恥心の行き先としては、やはりこの二人の元へと回帰するモノである、と言えるだろう。



 唯一、女性陣としては『被害者』と言っても差し支えは無いであろうセレンは、湯上がりで艶が出るまで磨かれた肌は上気し、かつ普段とは異なる装いにて普段は見る事の出来ない様な項等を露出している事もあり、大変に色気を放出している様な状態となっている。


 本人的には、ソレを向けているのはただ一人に対してのみであるのだが、浴場での一件によって本人が意図しているよりもより強く滲み出る様な形となってしまっており、彼らと同じ様に待ち合わせ場所として使用していた他の客達からも、彼女に対して強く視線が向けられているのが手に取る様に窺えた。



 セレン本人としても、それには気付いている様子ではあったが、先程の『戯れ』にて強制的に振り撒かれているモノであり、かつ未だに万全、とは言い難い状態であるが為に恥ずかしそうに顔を伏せ、恋人であるアレスの胸元へと押し付けながら彼の身体で隠そうとしているが、その様子が更なる欲情を周囲へと齎す、と言った悪循環を生み出そうとしていた。


 ソレを察したからか、それとも今回の元凶へと成り果てた責任感からか、もしくは友人にして仲間であるセレンを助ける為であったのかは定かでは無いが、殺意を全開にした二人が周囲に威嚇を撒き散らして行く。



 片や完全に後衛であり、従魔を操る事を主な攻撃手段とするテイマーであり、片やこのパーティーに於いては中衛に近く、必要とあれば自ら短剣を片手に敵へと目掛けて切り込んで行くとは言え、本来は後衛としてバフやデバフをばら撒く事を生業としている付与術師。


 本来であれば、そんな彼女らが周囲へと本気で威嚇したとしても大した効果は発揮されず、恐れて逃げて行く者がどれだけ居るのやら、と言った状況となるだろう。



 …………が、それはあくまでも『一般的な冒険者』であったのならば、のお話だ。


 彼女らは、既に世間的には『人の限界に迫っている』とされる『Aランク』を超え、『人の限界を超越した』とされている『Sランク』へと至ってしまっている。



 故に、後衛に過ぎず、素の腕力で言えばそこらの一般成人男性とどうにか張り合える程度、でしか無い二人であっても、威嚇や威圧を本気で放ったのであれば、それは即ち大型の魔物に遭遇した時のソレか、もしくは武術の達人が立会いの時に放つであろうモノと酷似した結果を生み出す事となる。


 当然の様に、命のやり取りや大型の魔物と遭遇した経験の在る者ばかりでは無かった様子で、一目で多少裕福であったのだろう一般人は目を逸らし、そそくさとその場を後にして行く事となった。



 中には、地元の冒険者なのか、それとも軍属としてそれなりに経験を積んでいたのであろう者も混ざっていたらしく、そう言った連中は二人からの威嚇に耐えて冷や汗を浮かべながらも、ニヤニヤとした締りの無い下品な笑みを浮かべながらセレンへと視線を送り続けていた。


 が、そうして色気に充てられて半ば不可抗力的に視線を向けていたのでは無く、故意に視姦し続けるのならば、と大本命かつバリバリの戦闘要員であり、対象の恋人としてしゃしゃり出る権利を存分に持ち合わせていると言えるアレスが、それまで見せる事無く胸の内に秘めていた怒りと共に殺気を顕わにして周囲へと放って行く。



 すると、流石にそれに耐えてまでスケベ心を発揮できる程に精神的に強くは無かったらしく、このあと無理矢理にでも連れ込んで、だとか、酒にて酔い潰して部屋で、だとかを予定していたり、妄想して膨らませていた夢と同様に下半身もしおらせながら、今度こそ顔を青ざめさせて退散して行く事となる。


 流石に、その段に至ればセレンも落ち着きを取り戻す事に成功したらしく、少し前とは別の意味合いにて頬を赤らめながらアレス達へと礼を述べつつ、それとは別にタチアナとナタリアに対して笑顔で雷を落として行く。



 とは言え、二人に対しては本気で怒っている訳でも無いらしく、ゲンコツを落としたり声を荒らげたり、といった様子は見られなかった為に、取り敢えずは、年長者でもあったヒギンズが軽く取りなして、部屋へと戻る事を提案するのであった……。




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