『追放者達』、宿に泊まる
女性陣が暴走して先行し、男性陣が追い掛けて合流を図る、と言った、彼らには珍しい状況が発生する事となったが、目的地は判明していた為にどうにか合流を果たす事に成功した『追放者達』一行。
彼らは目的地であった宿、『蓬莱亭』へと辿り着き、その暖簾を潜る事となる。
カンタレラ王国の様式とは異なり、宿本館に辿り着く前に展開されている前庭とでも表現するべき造形が彼らを先ず出迎え、視界からしてそれまでのモノとは一線を画していると伝えてくれていた。
木々が有り、池が有り、小型の橋が掛り、東屋が有る、との要素だけを取り出すのであればそれまでも無くはなかったが、カンタレラ王国では主に庭園や裏庭と言った、スペースを大きく使って様々な表現をしようとしているのに比較して、この仙華国では小さな空間で一つの世界を表現し、完結させようとしている風に彼らの目には写っていた。
物珍しくも美しいそれらの情景を眺めながら砂利の敷かれた道を進み受付へと向かうと、やはりそこには仙華国特有のモノと思われる装束を纏った獣人族がおり、礼儀正しく頭を下げながら彼らに対して対応を開始する。
一応、と言った感じで予約の有無を確認しながら、何人での宿泊なのか、部屋は幾つか、何日滞在する予定なのか、を彼らから聞き出し、帳簿に纏め、現在の空き状況と今後の予定とを確認すると、丁度大部屋が空いているので全員で泊まる事も可能だ、と告げて来る。
従魔達も同じ部屋にて泊まる事が出来る、との話であったし、幾つもの部屋に分散させるのも手間が掛かるだろうから、とソレを承諾して手続きを進めてしまう。
その後、本館内部を案内され、泊まる予定の大部屋へと辿り着き、内部の設備の説明等を受けて行く。
「お手洗い等はお部屋に備え付けのモノが御座いますが、廊下を出て突き当りになる場所にも御座います。
お水やお湯、お茶等に関しましては備え付けの火器をご利用になりますか、もしくは従業員へと一声お掛け下さいませ。
また、暖房が足りない、となりましたら火鉢の追加や囲炉裏への火入れ等をも行いますので、遠慮なさらずお申し付け下さいませ」
「了解した。
それと……ここには温泉が有る、と聞いて来たのだけど、それはどちらに有るのかな?
女性陣が痺れを切らして探索し始めるよりも先に、場所やらルールやら聞いておいた方が良いかと思ってね」
「あぁ、成る程畏まりました。
大浴場となっておりますが、こちらになります」
そう言って先導する従業員の背中に着いて行きながら、浴場についてのルールの説明も受けて行く。
とは言っても、以前ガンダルヴァにて経験した時と基本的な処は同じであり、違う点を挙げるとするのならば、男性用の浴場と女性用の浴場が時間帯にて切り替わる、と言った点だろうか。
なんでも、それぞれの浴場にて使用されている温泉の効果と浴場の内装、更には浴場から見える景色が異なる為に、そのどちらもを楽しんで貰いたいが故に時間帯にて入れ替えるシステムとなっているのだとか。
風呂の内装にまで拘りを持ち、その上で景観までも取り入れる、と言った様式に全く触れた事も無かったアレス、セレン、タチアナ、ナタリアの四人は多少不安になりながらも、生まれた国の様式として親しみがあるガリアンや、既に過去に似たような体験を幾度もしているヒギンズによって促されるがままに、取り敢えず一度部屋へと戻ってから皆で利用してみる事に決定するのであった……。
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綺羅びやかな装飾の施された木製の浴場に、楽しそうな声が水音と共に響いて行く。
彼ら彼女らの泊まる部屋、として通された大部屋よりもなお広く、下手をすれば建物の中でも最も広く設計されているのでは無いか?と思わせる程の面積を持つ浴場には、まるでプールか何かかと思わせる程に大きく、タップリと湯を湛えた浴槽が鎮座しており、その中には早速、とばかりに身を浸している人影が複数存在していた。
「…………っん、あぁ〜……!
最、高ね〜!
これは、遥々ここまで来た甲斐が在る、ってモノね〜」
白濁し、独特の臭いを放つ湯に首元まで浸かりながら、両手を大きく上に伸ばしつつそう零すのは、タチアナであった。
元々、パーティー最年少と言う事もあり、髪もそこまで長くは伸ばしていなかったものの、備え付けられていた説明文に従って手拭いで頭上に一纏めにし、その上で温泉の湯によって磨かれつつ在る肌の艶と張りとを見てみれば、普段のソレとは別人に近しい外見へと変わりつつあった。
とは言え、言動までは変化を遂げてはおらず、またセレンの指導によって同年代・同族内で比較すればそれなりに豊穣を迎えつつあるものの、やはり比較対象が比較対象となってしまうだけに、その辺の成長速度を気にしているらしく、極力胸元を湯から出そうとはしていなかったりもする。
「こらこら、タチアナちゃん。
言いたい事は分かるのですが、流石に言い方には気を付けないとダメなのですよ?
完全に、ソレは中年のおじさんの言い回しなのです」
そう言いながら、タチアナの隣に足先から入湯して来たのは、パーティー内でも最小となるナタリア。
彼女の場合、種族的な問題にて極端に小柄な訳であり、好きでそうなっている訳では無い、とは本人の談ではあったものの、その容姿から半ばマスコット的な扱いを受ける事が多く、本人としても半ば諦めの境地に近い位置に居たりする。
とは言え、彼女とて年齢で言えば既に成人を迎えて久しい、謂わば『大人の女性』である。
そのスタイルは女児特有のぽってりとした硬さを含んだ丸みを帯びたモノでは無く、腰元には縊れもあれば女性として出て欲しい箇所には確りと柔らかな丸みを得ており、バランス、と言う点で言えば下手をすれば3人の中でも一番整っているとも言えるかも知れなかった。
まぁ、だからと言って、物理的な膨らみやそれによる異性に対する特効効果に興味が無いとは決して言えはしないし、何よりソレを得られるのならばどこまで出来る?と問われれば即座にどこまでも!と答えるであろう程度には、パーティー内部の他の二人に対して『羨ましい』との感情を持っていたりもするのだが、それはまた別のお話。
先んじて湯に浸かり、会話を交わす二人の元へと、更なる人影が近付いて来る。
軽く湯で身体を流してから早速、とばかりに浸かったタチアナや、軽くであっても先に身体を洗ってから浸かりに行ったナタリアとは異なり、本格的に身体を洗ってから浸かる事を選択していたセレンであった。
「お待たせ致しました。
やはり、沢山のお湯が使えるのは良いですね。
野営も苦にはなりませんが、それでも出来る事は限られてしまいま…………あの、どうかしましたか?」
「「………………」」
同性かつパーティーの仲間内、との事もあり、特に周囲からの視線を気にしていないのか、タオル等にて身体を隠す素振りすら見せずに浴槽へと歩み寄るセレン。
景観を取り入れる為に大きく作られている窓から差し込む光によって、その圧倒的なまでの質量を誇るスタイルが二人の目の前に展開されていた。
驚く程の質量を持ちつつ、その形を崩さず上向きなままで柔らかに揺れる胸部や腰回り、それでいて縊れて欲しい箇所には確りと縊れが出来ており、その姿は男の理想の姿の一つか、もしくは蜂か何かが人の姿として顕現でもしたのだろうか、と既に見て知っていたハズの二人に対し、そんな感想を抱かせる程に現実世界離れしたモノとなっている。
普段は、他の異性からの視線を気にしたり、依頼で動き回る事も多いから、と胸部を抑え付ける様な下着を多く着用している事も、最近の季節柄厚着も多くなっている事もあり、普段からして接する事も多かったハズの二人からして見ても、何だか更に大きくなったのではないだろうか?と思わせるだけの迫力を有していた。
そんな、女性としての自信を喪失し、敗北感に浸る二人へと不思議そうな視線を向けながら、セレンもその二人の横へと入り、幸せそうな吐息を零して行くのであった……。
もうちょっとだけサービス回続くんじゃ