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『追放者達』、アルゴーを後にする

 


 ギルドマスターであるマレンコから受けていた依頼を、形だけとは言え終わらせた『追放者達(アウトレイジ)』は、その翌日にはアルゴーを発つ事にした。


 理由としては特にこれと言った何かが在る訳では無いのだが、同時に残り続けなくてはならない理由も無かった為に、本来の道程として想定していた東国へと向けての旅路を続ける事にしたのだ。



 元より、旅路の途中にて立ち寄っただけであったし、リーダーであるアレスの古巣であった、との事で他のメンバー達を説得して休養も兼ねて入った、との経緯もある。


 が、それで立ち寄る事を提案していたのもアレス本人のみであったし、そうやって立ち寄った結果としてアレコレ起きてしまっていた、との事を鑑みれば、やはり寄らない方が良かったのでは?と言われてしまっても仕方の無い事かも知れないが。



 とは言え、雪原を進み続けるのは負担としても大きかったし、多少とは言え消費していた物資を補給出来た事は良かった、とも言えるだろうから、差し引きで多少のマイナスには目を瞑るべきだろう。


 尤も、立ち寄られる事で波乱が起き、半ば強制的に様々な変化を遂げる事になったアルゴーとしては迷惑極まり無い状態であったかも知れないが。



 そんな訳で、諸々の手続きを終えた一行は入った時とは逆の門からアルゴーを出立する。


 流石に、前回の様な扱いを受ける事にはならなかったが、ナタリアの従魔達は手続きが終わるまでは終始警戒している様子を隠そうとしなかったし、メンバー達からも『分かってるよな?』と言わんばかりの視線を浴び続ける事になった警備兵には若干ながらも同情心が湧くような気もしたが、別段助けなくてはならない理由も特には無かったので、アレスもヒギンズも、苦笑いを浮かべながらそのままスルーしてしまう。



 そうして、再び雪原を駆ける旅路に立ち戻った一行。


 先の行程と同様に、未だに道に分厚く残る雪を掻き分け、蹴り散らしながらの行軍は派手に周囲の注意を惹き付ける事もあり、当然の様に魔物が群がる様にして襲い掛かって来る。



 が、当然の如く、唐突に真っ二つにされたり、矢で射抜かれたり、魔法によって丸焦げや氷漬けや撃ち抜かれたり、と遠距離攻撃の手段を持つメンバーによる、バラエティに富んだ撃破のされ方をしながら、その遺骸を当然の如く回収されて行く。


 その反面、近接戦闘に特化してしまっているが為に魔法を使えなかったり、遠距離攻撃をしようとすると投擲物を消耗する事になる為に控えていたり、と言った面々が純粋に暇だったからか、もしくは『気になる事項』として共通していたからかは不明だが、誰からとも無く口を開き、話題を提供し始める。




「…………そう言えば、結局アレって何だったのかしらね?

『ダンジョンマスター』が唐突に湧いてきたのも驚いたけど、そこに魔族が割って入ってきた、とかも割りと理解不能なんだけど?

 それってアタシだけ?」



「大丈夫。

 オジサンも正直良く分かんないからさぁ。

 ただ、あの立ち回りと言い、こっちに齎した情報と言い、何だか()()()()()()()()()って感じだったんだよねぇ」



「…………うむ、当方としても、その意見には賛成であるな。

 正直、あの場面では当方らに与するのは得策とは言い難い状況であった故な。

 特に当方らに味方する理由や得策が無い限り、あのままリーダーが倒されるのを防ぐのでは無く、放置して倒させておくのが妥当であろうしな」



「ねっ!そう思うわよね!?

 色々とこっちに協力したり、教えたりしてくれはしたけど、ぶっちゃけ半分位は良く分かんなかったのよねぇ。

 まぁ、例のアタシ達が『ダンジョンマスター』だと思ってた例のアレが()()()()()()()()()()()ってのは聞いてて理解出来たし、一番驚いた事だけど」



「あぁ、『ダンジョンマスター』が唐突に現れるのは自身の分体としての傀儡をアイテムとして特定の場所に転送しているから、ってヤツだよねぇ?

 だから、幾ら致命傷になる様な攻撃を当てた処で倒せるハズも無く、自身の身体じゃないから身体構造の限界を超えた様な動作だとか損傷前提での攻撃とかを躊躇い無く行う事が出来る、とか、流石にオジサンも反則じゃない?って思ったからねぇ……」



「それも驚きであったが、当方個人としては例の撃退方法に関しても気にはなったのであるな。

 確か……『ダンジョンマスター』本体と傀儡とを繋ぐ為に必要なアイテムと、傀儡を送り込む為に必要なアイテムがそれぞれダンジョンの内部に仕込まれているから、最低でもどちらかをどうにかしないとどうにもならない、だったか?

 前者を破壊しない事には何時までも暴れられ続けるし、後者の場合は好きな処に転移される上にいざとなったら逃走にも使われる、だとか、聞いた時には思わず意識が遠のく感覚がしたのであるよ」



「そうそう!それも反則よね!

 必死に戦ってたら、実は相手が人形でした!痛くも痒くも無いから幾らでも戦えます!

 倒そうと思ったら目の前の人形は無視してダンジョン内部を探索しましょう!クソ硬い壁やら床やらの何処かに操ってるアイテムか、人形を送り込んだり引っ込めたりを自在に出来るアイテムがあるので壊せれば勝てます!とか初見で分かるハズが無いじゃないの!!」



「まぁ、確かにアレは無いよねぇ。

 もう、ダンジョンでしか出現出来ないとは言っても、どっちかって言うと『魔物』って言うよりも『罠』の類い的な存在に思えて来たんだけど、それってオジサンだけだったりするかなぁ?」



「…………確かに、最早アレは一つの現象、不意に踏み抜いてしまった罠の類いと思わなくてはやっていられぬモノである、とも言えるであろうな。

 ……とは言え、話を蒸し返す様だがそれらの情報を齎し、その上で撃退の手伝いをするどころかリーダーの救助までしたのが『魔族』であった、と言うのが最も不可解よな」



「ねぇ~。

 何でまた、アタシ達を助けたのかしらね?

 アタシ達って、魔族からは割りと敵対視されてるハズよね?

 少なくとも、例の幹部?達からは、そうなってるハズだけど」



「確か……『六魔衆』だったっけ?

 あの巨人とゴーレムの変異種みたいなヤツと、あと例のイカれた研究者みたいな小鬼(ゴブリン)も幹部を名乗っていたけど、結局あっちは同じ枠組みの扱いなんだったっけ?」



「その辺りは…………どうなのであろうな?

 尤も、あの実力を見せられて、あやつが幹部級では無い、と言われても納得は出来ぬと思わぬか?

 あやつ、当方らに例のアイテムを探させている間、単体で『ダンジョンマスター』を抑え切って見せたのであるぞ?」



「ぶっちゃけ、アレで幹部じゃありません、ただの平魔族でした、とか言われたら今後生き残れる自信が無いんだけど?

 と言うか、アレが平なら特殊技能持ちっぽかった小鬼はともかくとして、その他の二体は下手をすれば『自称幹部』って事にならない?

 正直、あっちの方が強かったと思うのよねぇ」



「確かにねぇ。

 あの二体も、正直な話今でも倒せる、とは断言出来ない程には強かったと思うけど、先の彼はソレを遥かに上回る程の力量の持ち主だとオジサンも思うんだよねぇ。

 …………仮に戦ったとして、勝ち筋が『何人か捨て石にして相討ちに持ち込む』位しないと見えて来なさそうな位には、出鱈目な強さをしていたからねぇ〜」



「…………うむ、それには当方も同意しよう。

 あの様な鋭く、重く、洗練された攻撃を、当方が幾度受け止める事が出来るのか、と考えると、そなたらを守り切れないであろう事に、忸怩たる想いで手が震える心持ちであるよ……。

 しかも、アレは全力を出してはいない様子ですらあった。

 故に、当方には計る事すら出来ぬであろうな……」



「…………マジで……?

 じゃあ、それって、もう遭遇しない事を祈る他に無い、って事になる訳?」



「そうなるだろうねぇ〜」




 半ば虚ろな目をしながら出された結論に、会話に参加していた他の二人は天を仰いだり橇の床へと崩れ落ちたりし始める。


 が、その程度の振動や動揺で止まる程に繊細な存在が曳いている訳でも無い橇は雪原を駆け続け、群がって来る魔物を変わらずに蹴散らして行く。



 そうして暫く放置されていると、何処か遠い目をしていた近接戦闘組も心持ちを取り直し、取り敢えず遭遇しなければ良いか!との結論を持ち直した事で気力を取り戻したらしく、景色の代わり映えがしない道中の盛り上げに貢献し始めるのであった……。




少し分かりづらかったかも知れませんがちょっとした説明回でした

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