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『追放者達』、纏める

 


 ヒギンズの口から飛び出すアレコレにより、思わず頭を押さえる事となってしまったアレス達。


 明かされた情報のどれもが所謂爆弾発言そのものであり、半ば理解を拒む脳を無理矢理にでも稼働させ、更にまだ口にしていないであろう部分に関しても問い詰めて吐かせる事に、無言のままの視線によるやり取りにて決定する事となった。



 それから暫く経った頃、漸くヒギンズに対する尋問(お話)が終了する事となる。


 その頃には、汎ゆる手段によって情報を吐き出させられたヒギンズが、まるでシオシオに萎びた雑巾の様な状態となっていたが、齎された情報密度によりアレス達がソレに気が付く事は無く、寧ろ気が付いていたとしてもソレを気にする余裕を持つ事すらも難しい状態となっていた。



 が、そうして絞り出す事に成功した情報曰く、どうやら『聖槍』には魔族に対する特攻効果が在る、らしい。


 何でも、『聖槍』と共に『聖槍の担い手』となった者には、先代からの口伝、と言う形にて様々な事が伝えられるのだが、その中に『聖槍』の効果についてのモノも在ったらしく、そこにそんな感じの言葉が混ざっていた、との事だ。



 尤も、その文言は割りとアバウトで、ハッキリとそうである、と語っている訳では無いらしい。


 おまけに、ソレを耳にした当時のヒギンズは、魔族の存在そのものを認識しておらず、おまけに現役で槍を振るっていた時に特に手応えが変わったりだとか、他の攻撃よりも大袈裟に痛がったりダメージが増えていたり、と言う様な事態は見た事が無かったので、ただのデマかそれとも当時に在った偶然の類いだろう、と一人納得する事となっていたのだとか。



 他にも、一度『聖槍の担い手』として選ばれたのなら、次の『担い手』が現れるまでは基本的にそのままであるし、『担い手』以外では『聖槍』に触れるのならばともかく振るう事は不可能な事だとか。


 呪いによって一時的に『担い手』としての必要とされる能力の下限を割ってしまったが為に所有権を喪い、半ば手放す覚悟にてこの里へと預けに来たのだが、その時に通った道は今回こちらへと来るのに使ったのとは別方向から伸びるモノであり、あちらがあんな事になっていたのは本当に知らなかったらしい事だとか。



 そんな、玉石混交な情報を咀嚼し、統合し、精査を経て判断に至る。


 その間、情報源たるヒギンズは床へと正座させられた状態となっており、時折腰から生えている尻尾が苦しげに先端をビクビクとさせているが、従魔達が気紛れに突くのみでアレス達は誰も構おうとはしていなかった。



 とは言え、結論が出るのに、そこまで長くは掛からなかった。


 全く関わりの無かった赤の他人の証言、と言う訳でも無く、元々仲間としての交流が多くあったヒギンズに対する信頼と、並びに齎された情報の真偽を問う事が彼らにはほぼ不可能である、と言う状況から、取り敢えずは信じてみようか、との結論に至ったのだ。



 何せ、先述した通りに、アレス達には齎された情報の真偽を問う方法が無い。


『聖槍』についても今さっきヒギンズから聞いた限りの事しか知らなかったし、その継承やら能力やらに関しても同様であり、寧ろどうやって知っておけと?とツッコミを入れたくて仕方のない程である。



 そんな状態であるのに、どうやって事の真偽を見分けて判断しろ、と言うのだろうか?


 アレス達は、ヒギンズと言う個人の性格や人柄をある程度は把握出来ているから『無い』と判断しているが、もしそこに嘘や偽りの類いが混ぜられていた場合、どれがそうなのかをどうやって判断すれば良いと言うつもりなのだろうか?



 故に、アレス達は信じる事に決定した。


 どうせ、騙されたとしても、聞いた範囲の情報であればまだ致命的な状況にはなりそうにないし、魔族に対しての云々に関しても、あれば儲け物、位の感覚でいれば良いのだから、彼らに損として働く事は無いだろう。



 それに、例え嘘が混じっていたとしても、結果としてはあまり変わりは無いだろう、とすらアレス達は思っていた。


 例えヒギンズがやらかそうと、最悪魔族側と繋がって彼らを謀っていたとしても、最終的には恐らく敗れて殺される、と言うのがオチとしては精々だ。



 であれば、普段の仕事と大して変わりは無い。


 ミスをすれば自分が死ぬし、仲間も下手をしなくても死ぬ様な環境下に居れば、もしかすれば死ぬかも知れない、なんていう状況は脅しにもならないし、改めて考慮しないとならない理由にはなり得ないのだ。



 後挙げるとすれば、例の『聖槍』の効果だろうか?


 これまで幾度も交戦し、その尽くで打ち取る事が叶わなかった魔族に対して、絶大、とまでは行かなくともかなりの効果を発揮する……らしい武装があれば、万が一『次』があった場合に大いに彼らの助けとなる事だろう。



 尚、ヒギンズに伝わる口伝で『それっぽい事』が伝わっているだけだとか、そもそもそういった連中と遭遇したくないが故にこうして旅をしているんじゃないのか?だとかのツッコミは入れない方向の様子。


 アレス達とて、取り敢えず棚上げしておきたい事の一つや二つは存在するのだし、ソレを置く為の心の棚を作っておくのは、そこまで悪い事では無いハズなのだから。



 そんな訳で、一時的にとは言え開放されるヒギンズ。


 正座に痺れた足を突かれ、絞られっぱなしでシオシオになっていた彼であったが、取り敢えずは信頼して貰えた、と言う事と、ここで裏切る様な真似をすれば即座に切り捨てられる事になる、と理解出来ているらしく、最早お巫山戯なんてとんでもございません!と言わんばかりの表情をしている。



 …………が、足を痺れさせて床に転がる姿を憐れんだのか、それとも二人きりであれば比較的頻繁に行われているのかは、仲間であるアレス達にも分からない。


 分からないが、恋人であるタチアナの膝枕を受けながら頭を撫でられている様を見せられてしまっては、流石に『判断を誤ったかな?』と思わざるを得ないのは仕方のない事だと言えてしまうだろう。



 何故か女性陣は、今度自分もやろう、と気合を入れている。


 故に、残るアレスとガリアンは、現状使い物になら無さそうな四人を置いて二人で話し合いを始めて行く。




「…………で、こうして一応は纏めたものの、正直どう見ているのであるか?

 例の昔話にしても、どの程度信憑性が在るのか、それすらも分からないのであるが?」



「まぁ、魔族に対して云々、ってヤツは眉唾なオマケ程度に思っておけば良いんじゃないか?

 本当にそうなっていれば良し、そうでなければ残念でした、ってさ。

 これまで無くてもどうにかなったし、どうにかしてきたんだから、無いなら無いで幾らでも遣り様はあるだろうしな」



「…………言われてみれば、確かにそうであるな。

 此度も、確実に魔族相手に優位が取れる様になる装備が手に入る、では無く、戦力としてヒギンズ殿がある程度強化される(但し程度は不明)の方が正しく、更に言えば精神衛生にも良い、と言えるかも知れないのである」



「そうそう。

 それに、もう無いとは思うけど、ガッツリ魔族側と組んでいてアレコレし腐ってくれてやがった、とかがバレたら、その時はその時で殺っちゃえば良いんだし、気軽に行こうや。

 なぁ?」



「……………………仮にも、それなりの間パーティーを組み、仲間として認識していた相手を、躊躇わずに『殺す』との選択肢を提示出来るとは、やはりそなたは恐ろしいであるな。

 このメンバーの中で、最も敵に回したくは無いのであるよ」




 んな大袈裟な!と笑い飛ばすアレスであったが、後にガリアンが語る言葉を信ずるのであれば、その目は一切笑ってはいなかった、との事であった……。




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