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『追放者達』、小人族の国を後にする

 


 アレス率いる『追放者達(アウトレイジ)』と魔王軍六魔将たるスルトが激突した戦争から数日が経過した頃。


 彼らの姿は既に戦場には無く、ハーフバギンズの首都であるピグマリオンの王城へと移っていた。



 とは言え、今回案内された先は、前回の様な謁見の間では無く。


 王や高官が私用にて個人的に面談する際に使われる、比較的こじんまりとしながらも家具の類いは格調高く、それでいて過ごし易い様に整えられた応接室へと通される事となっていた。



 そこに居たのは、オブシダン王を始めとした、複数の高官。


 共に、対巨人戦線を生き抜いた間柄であり、中にはアレス達と肩を並べて最前線を駆け抜けた者も居る為に、国の高官を前にしている、と言う状況ながらも、アレス達の肩からは力が抜けて良い感じにリラックスしている様子であった。




「それで、調子はどうかね?」




 部屋の主として、アレス達へと着席を促しながら、オブシダン王が口にする。


 その視線は、彼らの装束の間から覗く、身体へと施された治療の後と、未だに残る包帯や三角巾へと向けられていた。



 普段、彼らが負傷した際、基本的に緊急事態だから、とそのまま回復魔法等にて直しきってしまう。


 が、それは本来であれば身体が時間を掛けてゆっくりと治し、不調を整えながら正常な段階へと至る仮定を、外部からの力によって無理矢理に回復させる行為でもある。



 故に、喪った体力や血液は簡単には戻らないし、本来であれば消耗せず、負傷の回復と共に戻るハズの『生命力』とでも呼ぶべきモノまで削り取る事になってしまう。


 なので、半ば一般的な常識として、四肢の欠損や命に関わる重症、重体、又は重要箇所の骨折等の事態を除いて、肌に跡が残る様な状態でなければ、基本的に魔法では大雑把に治した後は、自然治癒に任せた方が隅々まで治って良い結果になる、と言われており、彼らもそれに従っている、と言う訳だ。



 流石に、女性陣としても、そのままは無理、と言う事で、火傷の類いや跡の残りそうなモノは先んじて治してしまっている。


 が、その他の軽い裂傷は内部の負傷、一部の骨折等はそのままに敢えてしている為に、こうして所々包帯が覗いている状態となっている訳なのだ。



 …………そしてこれは余談だが、未だに彼らは揃って包帯が取れていない。


 故に、負傷が悪化する可能性があるから、と夜のアレコレ等は今の所控えられる事となり、表には出していないが女性陣の間では中々にフラストレーション(意味深)が溜まっており、包帯が取れてから搾り取る(意味深)か、回復魔法を行使してでも早急に搾り取る(意味深)かのどちらかを選ぶかで日夜議論が重ねられており、男性陣は背筋を凍えさせているのだとか。




 と、そんな事は欠片も知らないアレス(日に何度か背筋が凍える)が促されるままにソファーへと腰掛けながら、問いへの答えを口にする。




「えぇ、まぁまぁ、といった所でしょうかね。

 今の所、可もなく不可もなく、な感じで順調に過ごしていますよ。

 それで?

 ソレを聞く為だけに、こうして呼んだ訳では無いのでしょう?」



「まさか。

 それも、用事の一つだよ。

 何せ、君等は望んではいない様子だが、立派な国防の立役者にして、魔王軍の将を倒してみせた英雄なのだから、ね」



「流石に、それは辞退出来ません?

 あの時、あの場には俺達以外にも沢山の英雄達が居て、そのお陰でこうして守り切る事が出来たのですから、それまで辛く苦しい訓練を長く積んできた彼らにこそ、国防の英雄の称号は相応しいのでは?」



「勿論、彼らにも手厚く酬いるつもりだ。

 …………流石、我が国の誇る精鋭達であり、その獅子奮迅の活躍により国防は成った、とは言え、その半数近くを喪う形となってしまったのは、正直頭痛の元でもある故な。

 コレを期に、と次段の侵攻が在った場合、流石に諸君らが居たとしても、耐えられないであろう事は目に見えているからな」



「その『次』がもう無い可能性は?」



「あぁ、そなたらから依頼されていた件であるな?

 アヤツめが、自爆めいた最後を見せてくれたお陰で、終わったのかどうかがハッキリとしていなかったからな。

 そこは、余らも気になっていた事であったが故に、無事であった斥候達に念入りに調べさせておいてある」



「…………で、結果の方は、どうだったんです?

 オジサンとしては、あのまま自爆して粉々に砕け散ってくれた、ってオチの方が安心出来て好きなんですけどねぇ」




 軽い口調で、ヒギンズが混じって来る。


 が、その表情は言葉とは裏腹に真剣そのものであり、絶対にそうなっていて欲しい、寧ろソレ以外の答えは要らない、と言わんばかりのモノとなっていた。



 そんな視線を真っ直ぐに受けたオブシダン王は、そっと視線を逸らす。


 たったのそれだけであったが、同じ戦線を経験した彼らからすれば、百の言葉を費やされるよりも遥かに判りやすく答えを出される事となってしまい、思わず頭を抱えたり膝から崩れ落ちたりしてしまう。




「…………ショックを与える様で申し訳無いが、あの爆心地から少し離れた地点にて、ジャイアン種のモノと思われる巨大な足跡が発見された。

 向きと間隔、それと途中まではまるで白骨が歩いている様な状態であり、ソレ以後は通常の足跡へと変化していた、と報告に記されている事から、恐らくは六魔将スルト本人のモノであろう」



「「「「「………………うわぁ……」」」」」




 半ば、前置きから覚悟はしていた事ではあったが、最悪の報せを前にして、思わず言葉が溢れる事になるアレス達。


 恐らくは、自爆紛いの焔の噴射により周囲を吹き飛ばしつつ、骨しか無い状態も利用して身軽なままで自らも跳んで距離を離し、その後どうにかして元の身体に戻った上で逃走を図ったのだろう、と推測されるが、それは本当に『無し』でお願いしたい、と言うのがアレス達の正直な本音であった。



 あそこで『自害』でも、『巻き添え自爆』でも無く、敢えて『逃走』を選択した、と言う事は、恐らくはヤツのプライドやら諸々はズタズタになっている事だろう。


 なれば、スルトの性格上、確実に報復しに来るのは間違い無い為に、アレス達としてはあそこで『自らの肉体と情報とを残して利用されるよりも、それらを纏めて消し去る自害』をしてくれた、と考えていた方が、精神衛生上よろしかったのだ。




「…………しかし、そうなると少々頂けない事態になってきた様子ですね。

 ヤツが何時頃負傷を癒して復活するか、そもそも復活出来るのかすらも不明ではありますが、確実に復讐には来るでしょう。

 その時に、俺達がここに居るのはかなり不味い、と言うことですね?」



「……………………言葉を飾らずに言えば、そうなる。

 心のそこから、救国の英雄達に告げる言葉としては不適格であり、余としても甚だ不本意であると思っているが、国を統治する者として、どうか言わざるを得ない言葉であると理解して欲しい。

 …………そなた達には、近い内にこの国を出て貰う」



「了解ですよ、と。

 まぁ、こっちも仕事でやったんで、ちゃんと報酬貰えるなら、特に文句は無いですよ。

 無関係な人達に迷惑も掛けられないですし、ね?

 それに、今直ぐ出て行け、と言われないだけ、まだ情が有る、ってモノでしょう?」




 そう言って、差し出された袋を受け取るアレス。


 そこには、小人族であればスッポリと入ってしまいそうな程の大きさの袋の中に、ギッシリと詰められた金貨の山が存在しており、国庫の何分の一かは詰め込まれている程であり、それは即ち国からの感謝の気持ちの現れでもあった。



 そして、ソレを受け取ったアレス達『追放者達』一行は、その数日の後、首都であるピグマリオンを後にし、次なる目的地へと駆け出す事となるのであった……。




私事ですが、最近嵌まっている神ゲーで直近にアプデが入ったのですが、そのお陰で愛機が武装諸共に産廃と化しました……orz

元々勝って負けてを繰り返しつつ若干勝ち多め、位だったのがほぼ勝てなくなりました……

フロム様、タンクだけここまで虐めてくれなくても良かないですか……?

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