表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/220

『追放者達』、巨人の軍勢と激突する・2

 


 彼らが事前に工作していたモノ。


 当然、それは今発動している落とし穴だけ、では無い。



 他にも、幾つもの仕掛けを用意してあるし、中には使用を躊躇う様なモノも在る。


 が、それでもやはり、それらを使わねばどうにもならないであろう事が予測され、実際にそうなりつつ在るのだから、やはりアレス達も使用には躊躇はしないのだろう。



 現に、アレス達は既に、落とし穴に落ちて身動きの取れなくなったジャイアント達に襲い掛かっている。


 端から見れば、先に戦場が指定されていた事を幸いに、自分達のみが優位になる様に、と罠を仕掛けまくった卑怯者の行い、として映る事だろう。




 …………が、当事者たるアレス達や兵士達としては、だからどうした!と笑い飛ばす事になるだろう。


 何せ、彼らとしては自分達の命が掛かっているだけでなく、友人、知人、家族の命に加え、国の存続すらもその両肩に掛かっている状態となっているのだ。



 そうなれば、多少なりとも卑怯な手段を用いようと、そもそも勝てなくては意味が無い。


 それに、情け無用の殺し合いを繰り広げる戦場に於いて、相手方にその手の仕掛けを()()()()()()()()()が間抜けであるのがお決まりであるし、この程度で『卑怯』の誹りを受けるのであれば、元より戦争なんてモノはしたくても出来なくなってしまうのだから、外様の身勝手な囀りなんて気にする者はこの場には一人も居ないだろうが。



 そんな訳で戦場では、哀れな被害者とかした十体程のジャイアントに向けて、無数の兵士達が群がって行く。


 一人一人の戦力は高く、士気も決して低くは無いとは言え、流石に体格差や巨体による質量の差は如何ともし難く、彼らのみが囮や特攻等の手段を使わず正攻法のみにて撃破を、と望んだ場合、流石に難しい、と返答するしか無いだろう。



 が、ソレを可能とするのが今発動している『落とし穴』だ。


 一度嵌めてしまえば、動きが取り難くなるだけでなく、諸々の急所がより地面へと近付く事となる為に、反撃を食らう事なく一方的な撃破を狙う事が可能となる。



 おまけに、この手の仕掛けに有りがちな、自爆発動、を未然に防ぐ事すらも可能としている。


 今回の相手は、極端なまでに体格が異なる存在であるが為に、味方側の体重では乗っても壊れず、それでいて相手方の巨体で踏めば確実に壊れて発動する、といった具合に、穴の上から被せる蓋の強度を上げる事で、自分達は足元をあまり気にせずに戦闘する事を可能とした上で、相手にのみ状況的不利を押し付ける事に成功していたのだ。




「ぐぉぉおおおっ!?」



「よっしゃ、やれる、殺れるぞ!

 このまま、ぶち殺してやれ!!」



「ここは、これから先は、俺達の国だ!

 テメェらみたいなウスノロの木偶の坊に、これ以上土足で踏み入られて溜まるかってんだよ!!」



「ぎぁああっ!?!?」



「「「「「さっさと死に晒せ、このボケがぁ!!!!」」」」」




 予想外の罠に嵌り、身動きの取れなくなったジャイアント達が、次々に討ち取られて行く。


 ある個体は槍によって貫かれ、ある個体は剣によって急所を斬り裂かれ、ある個体は魔法によって砕かれてしまう。



 ソレを受けて、自分達の手でも敵を倒せる、国を守る事が出来るのだ、と兵士達の士気が激増し、戦意やその他諸々も昂ぶりを見せて行く。


 …………流石に、精鋭、と呼ばれるまでに頑健な肉体と精神を持ち合わせている彼らであるが故に『この程度』で済んでいるが、そうであっても闘争に身を投じ、自らの手で血を流しで命を奪えば平静で居続ける事は叶わず、徐々に内へと秘めていた獣性が表へと顔を出し始める。



 と言っても、精々が暴言を吐き散らし、苛烈なまでの攻撃を加える程度。


 何時でも殺せるのに敢えてソレをせず嬲り続けたりだとか、不必要に苦痛を与える形での攻撃を繰り返したりだとか、性的に痛ぶり犯す様な真似までしている様であれば流石にアレス達も割って入るが、そこまで箍が外れた素振りを見せる様子も無かった故に、特に問題無し、としてスルーしてしまう。



 それはそうとして、橇に乗ったままで突き進んで行くアレス達『追放者達』。


 最先鋒とは言え、基本的には今彼らが戦っている、事前に構築した仕掛け陣地へと誘い込んで彼らに優位な場所にて戦う、と言うのが予め決めていた事であった。



 が、周囲の兵士達が獣性を発揮し、普段以上の戦闘力を発揮している事で、多少の余裕が見て取れた。


 具体的に言えば、今落とし穴に引っ掛かって身動きの取れなくなっているジャイアント達だけならば、彼らでどうにか出来るであろう目処が立つ程度には、だ。



 …………しかし、ソレで終わってくれないのが、戦場と言う存在だ。


 現に、考え無しに陣地へと踏み入り、落とし穴に嵌っているのは極一部の前衛のみであり、大多数は陣地の手前で立ち往生している状態となっている。



 幸いな事に、追加で手出しは未だにされていない。


 が、あくまでもそれは『されていない』と言うだけであり、唐突に罠に掛かった、との動揺が引き、更に同胞はもう助からないだろう、と判断されてしまっては、半ば囮として使われて遠距離からの火力に兵士達が晒される事となるのは間違い無いだろう。



 流石に、雇われとは言え指揮官として着任している以上、部下となる彼らを見捨てる様な事になるのは頂けない。


 兵士であり、命を捨てる覚悟でこの場に居るとは言え、流石に助けられる盤面で見捨てて反感を買ったり、戦力を著しく下げたりする様な真似はしたくないし、出来ようハズも無いのだから。



 そんな訳で、アレス達は一塊となって陣地を擦り抜け、ジャイアント達の足元へと滑り込んで行く。


 巨体を誇り、怪力と頑強さに定評の在るジャイアントと戦う上で、その足元に入り込むのは常套手段であるが、同時に危険地帯へと自ら突っ込む行為でもある。



 何せ、こちらからすれば視界から外れて足を潰し、身動きを取れなくして一方的に攻撃するチャンス、ではある。


 が、同時に、される側からしても、見えないのならば、と足元を適当に踏み荒らしてやれば勝手に相手が潰れてくれる状況となる為に、危険性で言えば割りとドッコイと言っても良いかも知れない。



 なので、当然の様に、自らの足元へと滑り込もうとしていたアレス達の姿を目視していた彼らは、コレ幸いとその場で足を踏み鳴らす。


 それだけで近くの地面は飛び跳ね、うねり、アレス達の足を止めようと彼らを突き上げる。



 仮にその場に留まってしまえば、末路は一つ。


 上から降って来るであろう巨大な足の裏により、地面に汚らしい赤い花が咲く事になる、それだけの話だ。



 尤も、アレス達がソレを許容するハズも無く、揺れる地面や橇に構わず飛び出して行く。


 狙うは、踏み鳴らす為に上げられた足…………では無く、軸足として地面に残された方の、踵や脛といった直立する上で重要な部分。



 足を取られる事なく地を駆け、巨人達の踵や脛へとアレス達の振るう槍が、斧が、刃が叩き込まれて行く。


 流石に、それらの急所への攻撃は頑強な彼らを以てしても堪え難い激痛を産み出すモノであったらしく、時に踵から続くアキレス腱を、時に脛そのものを抱えて地面へと倒れ込み、その場で藻掻き苦しむ事になる。



 そうして下がり、地面へと近付く頭部(急所)


 そこへと目掛けて、容赦無く鎚と同化した杖が振り下ろされてスイカもかくや、との勢いにて砕け散る事となったり、眼球や耳の穴を狙われて短剣や矢が襲い掛かって行く事となるのであった……。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ