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『追放者達』、巨人の大将と再会する

 



「我こそはスルト=ムスペルヘイム!

 この『巨神兵団(ティタノマキア)』を率いる六魔将が一つなり!」




 その名乗りを耳にしたアレスは、要塞の外へと向かわずに、迷う事無く合流していたオブシダン王と共に要塞の『上』を目指して歩み始めた。


 てっきり、正面門から出て相対するモノだ、とばかり思っていたらしい周囲は俄にざわめき、戸惑いを隠せなくなるが、予めスルトについての情報を渡していたオブシダン王は、何故アレスがその様にするのか、を理解している為に、特に戸惑いも見せずに彼と共に上へ上へと登って行く。



 結果、要塞の上部、本来ならば矢を射掛けたりバリスタ等を設置して射撃したりする場所へと到着するアレス達。


 そして、そこから平行に視線を要塞の正面へと向けると、そこで()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 燃える様な赤髪に、紅い瞳を持つ、文字の通りの『巨人』。


 通常のジャイアント種の魔物が五メルトもあれば大きな方、として認識される中で、飛び抜けて巨大な体躯を誇り、目算にて十メルトを超え、最早十五メルトにも届こうか、と言う巨体が、要塞の上へと出たアレス達と同じ目線の高さにて交わり合う事となったのだ。



 流石に、それなりに彼我の距離は離れている。


 が、それでいても普通に人が立っている、と言う様なサイズにしか見えず、思わずスケール感どうなってるんだよ、と言うか以前見た時よりも大きくなってないか?と内心にてツッコミを入れる羽目になるアレス。



 その思いは、どうやら他の仲間達としても共通していたらしく、直接戦ったメンバーは変な顔をする羽目に。


 更に言うのであれば、折角頑丈な建築物が在るのだから、上から見下ろす形にして威圧してやろう、と企んでいたにも関わらず、いざ事に及んでみれば目線の位置がほぼ変わらなかった、と言うふざけた結果になってしまっているのだから、全く以て笑えないとしか言い様が無いだろう。



 とは言え、実際にこうして顔を出した以上、応えない手は無い。


 何せ、先に相手に名乗られてしまったのだから、作法に従うのであればこちら側の大将も前へと出て名乗りを返さなくてはならないのだから。




「名乗られたからには、こちらも名乗ろう!

 我が名はオブシダン!オブシダン=ケテル・ハーフバギンズ!

 この国を治める王にして、此度の戦に応えし軍の総帥なり!!

 して、敵将スルト=ムスペルヘイムよ!

 如何なる用向きにて、敵陣まで参ったのか明らかにされよ!!」



「はっ!

 その、豆粒の様な体躯にして、ここまでの音量にて言葉を交わせる者が居るとは、思わなんだぞ!

 良いな!実に良い!!

 そこの、かつて我とも死闘を演じた、我らが宿敵にして『特異点』たる者達を雇っているのも、判断力に優れている何よりの証左と言えるだろう!!

 これは、単純な作業では無く、心躍る戦になりそうだ!!

 はっはっはっ!!!」



「上機嫌な所で悪いが、割り込ませて貰う!

 お前ら、俺達に何の恨みがあって、こんなに纏わり付いて来る様な真似してくれやがるんだ!?

 行く先々でこの始末、いい加減ウンザリしてるんだがな!?」




 小さな身体でスルトと相対し、その意気を認めさせたオブシダン王と、意外な所で意外なモノを目にした、と言わんばかりに上機嫌なスルトとの間に、アレスが割って入る。


 本来、大将同士のやり取りに際し、他の者が、しかも指揮官に任命されているとは言え、あくまでも『一指揮官』にして半ば部外者の立場に在るアレス達がそんな事をした日には、一体どんな罰を与えられる事になるのか、と言う程度には重大なやらかしであった。



 が、オブシダン王は特に咎める事も、遮ることもせずにソレを聞き流す。


 また、同じく咎める事が出来たであろうスルトも、面白そうに、とまでは行かないまでも、若干不思議そうな視線をその巨大な瞳から放ちながら、アレスへと向けて言葉を返して行く。




「…………ふぅむ?

 何を、不思議な事を言うのか?

 お主は、我らが宿敵にして、陛下が認めし『特異点』でろう?

 なれば、一度決戦を行い、その後にて如何なる形にて決着が着いた果ならば兎も角、我らと戦い、血で血を洗い、その果てを目指して闘争を続けるはお主が定めであろうよ。

 であるならば、現状はそのままその通りであると言うに、一体何が不満であると言うつもりか?」



「全部に決まってるだろうがよ!?

 お前らの殺し合いだなんて、誰が好んでやるかって言うんだよ!?

 毎回毎回、行く先々でお前らの様な、殺意マシマシな災害みたいな連中と殺し合いする羽目になるこっちの身にもなってみやがれ!!

 しかも、その『特異点』とやらも一体何なんだよ!?

 毎回毎回、お前らの同類は俺の事をそう呼びやがるが、一介の孤児にしか過ぎない俺に、何を期待してそんな御大層な呼び方してやがるんだよ!?」



「……………………ふぅむ?

 その口ぶり、どうやらお主ら人間の間では、よもや『特異点』に対しての認識と知識とが損失されている、と見えるな?

 しかし、それはそれで我らに対して優位に働くであろう故に喜ばしい事ではあるが、だからと言って流石にどうかと思うぞ?

 人間は、自らの命綱の強度も、使い方も知らず調べずに谷から飛ぶ程に、愚かな生き物であった、と言う事であろうか……?」



「………………?

 ちょっと何言ってるのか分からんのだが、一人で納得してないでちゃんと説明プリーズ。

 幾ら別生物とは言え、対話してる相手放りだして一人納得してるのは、お世辞にも行儀が良いとは言えないぞ!」



「はっはっはっ!

 それは、出来ん相談だな!

 お主が求めるモノは、確かに我が把握している。

 ソレは、認めよう。

 だが、だからと言ってこれから殺し合おう、と言う相手に懇切丁寧に説明してやる程、我はお人好しでは無い故にな!!

 聞き出したくば、力尽くで無理矢理にでも聞き出して見せるのだな!!」




 途中で思案を挟んだものの、何故か納得した様な様子を見せるスルト。


 アレスが説明を求める声を挙げるも、敵にソレを聞いてどうする?と逆に窘められる結果になってしまい、彼としては珍しく歯噛みして拳を軋ませる事しか出来なくなってしまっていた。



 そうして、上機嫌なままでスルトは踵を返そうとする。


 一応、開戦の使者にして宣戦布告をやり直す、と言う目的が達成された上に、仇敵たるアレス達も参戦している事も確認出来たが故の、死闘を前にした上機嫌さであったのだろう、と推測出来る状態であった。



 そんなスルトが、そう言えば、といった様子にて立ち止まる。


 そして、腰にぶら下げていた小さく見える袋を指で摘み上げると、何気ない様子にてアレス達の立つ要塞の屋上へと投げ渡して来た。




「あぁ、そう言えば、忘れるところであった。

 少し前、なにを考えたのか我らの元を訪れた者共が居てな。

 何やら、征服後の国を統治するのは我らには面倒だろうから、と自分達に任せる様にと主張していた故に、どれ程の益荒男であるか、と期待して少しばかり腕を見てやるつもりでいたのだがな。

 なんとも呆気なく、雑兵に嬲られて終わりおったよ。

 まぁ、それでも、一応首だけはそちらに返してやろうか、との気遣いで持って来てやったのだ。

 そちらで存分に検分して、納める所に納めるが良いよ」




 その言葉と同時に屋上へと着弾した袋。


 元々、赤く汚れていたその袋の口が着弾の衝撃によって開く。




 するとそこからは、アレス達も以前に見た覚えの在る首が、幾つも転がり出て来たのであった……。




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