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『追放者達』、出陣する

皆さん明けましておめでとうございますm(_ _)m


まだ暫く続きますが最後までお付き合い頂けますと幸いですm(_ _)m

 


 アレスが指揮官として演説してから数日が経過した頃。


 彼らの出陣が本格的に決定する事となった。



 と言っても、別段スルトが一方的にしてきた約束を破って進軍してきた、とか言う事態になったりした訳では無い。


 ただ単に、出陣するための準備にそれだけの時間が掛かり、終わったのが本日となっていた、と言うだけの話である。



 当然、アレス達は指揮官として同行する事になるが、実際に赴くまでの間は手空きであった。


 時折、同じく最前線へと赴く者達が訪ねて来たり、あの時の演説を聞いた兵士達が宿へと押し掛けて来たり、といった事も有るにはあったが、それ以外は特に何がある、と言う訳でも無かった故に、彼らがこのピグマリオンへと来る原因となったオルグを探して訪ねたりした程である。



 尤も、そうしていただけ、と言う訳では勿論無く、その間にもアレス達は彼らに出来る事を可能な限り行っていた。


 集められるだけの現地の情報を収集し、可能な限りの状況への対策を講じ、必要となるであろう物資を王家の名の下に掻き集めた。



 その甲斐も在ってか、彼らの魔力庫はこれまでに無い程の充実を見せていた。


 メンバーの中でも最大の容量を誇り、かつ半ばソレが専門の役目となっているナタリアのソレでさえも、今回は持ち帰る際の事は考えなくて良く、その上で現地にも幾らか先んじて送ってある、との事であっても、珍しく限界近くまで詰め込んでいる状態となっていた。



 尤も、ソレはあくまでもナタリアの場合。


 魔力庫に詰めたモノの量に応じて魔力の最大値が減って行く仕様のため、必然的に戦闘要員かつ直接的な支援要員である他のメンバー達は魔力総量を確保する為に、詰め込むのはある程度、に抑えている状態となっているのだが、それでもそこには少なくない量が詰め込まれており、常人ではしまい込みきれない程のモノが揃っていた。



 そうして、住民達に見送られる形で出撃し、進む事暫しの間。


 冬季も終わりに近付きつつある頃合いであり、多少気温も緩みを見せ始めていた事もあって魔物の出現も多く見られ、当然の様に道中にて幾度も襲われる事となっていた。



 が、大概のモノであれば、出現の方がアレス達の元へと上がって来る事も無いままに蹴散らされ、何事も無かったかの様に行進が続けられて行く事に。


 時折、行進の中心近くに滞在しているアレス達でも遠目に確認出来る程に巨大な魔物が襲来する事もあったし、その時は流石に隊列が乱れたり行進が止まったりもしはしたが、それでも長時間そのまま、と言う事は一度も無く、流石は国の最精鋭の兵士達だ!と素直にアレス達が感想を溢す程に鮮やかな手順で打倒し、解体し、可食部は同行している輜重隊が回収して夕食にまで加工して見せていたりもした。



 そんな、事件とも呼べないモノを挟みつつ進む事数日。


 彼らは、無事に開戦の予定地へと到着する事に成功していた。



 早速、とばかりに工兵隊が陣地の構成と兵士達の宿営の為の野営地の制作に取り掛かって行く。


 元々、それ用に、とピグマリオンの方である程度加工しておいた資材を持ち込んでいたり、既に完成させているモノを持ち込んでいたり、との準備を行っての現在であった為に、まるで本を弾き捲りしているかの様な速度で、見る見る内に様々なモノが構築されて行く。



 そうして作られた陣地は、急造とは言え最早『要塞』と評するのに相応しく。


 また、その周辺には『敵に使わせるつもりかな?』と思わずツッコミたくなる攻城兵器の類いが着々と構築され続けており、最早どちらが何を使って戦おうとしているのか、端から見ている限りでは分からなくなりそうな状態となっていた。



 取り敢えずは出来たから、と工兵隊の隊長によって内部へと案内されるアレス達。


 一応、名目上だけ、とは言え指揮官の一人であり、今回の戦闘に際して重要なポジションとなる先鋒を一応は任されている立場でもあった為に、真っ先かつ直々に、となったのかもしれないが、何故か異様に丁寧な接し方をされて若干ながらも戸惑う事になる。



 が、設備の説明等に関しては、真剣に聞き入って行くアレス。


 戦場に於いて、一つでも多くの情報を把握し、ソレを活用出来る者が最終的に生き残り、勝利する者となる、と彼は知っているが故に、一言一句聞き逃すまいと集中し、聞いた事は脳内で反芻して決して忘れまいと刻み込んで行く。



 そうこうしている内に野営地も完成したらしく、周囲に柵や囲いも作られて歩哨も立てられて行く。


 それと時を同じくして、周囲へと斥候が放たれると同時に詳しく調査も開始され、地図に誤りが無いか、地形の変化の兆候やその原因になりうるモノが無いか、等の情報が掻き集められて行く事となる。



 更に、敵情視察、の名目にて、敵戦力の規模の確認等の決死の任務に就く者達が出立する事となる。


 未だに、その全貌が洋として知れないスルトの率いる軍勢は、何処かの街を滅ぼした、等の情報すらも碌には入って来ていない為に、率いる部下の巨人はどの程度の大きさでどれ程の数が居るのか、すらも良く分かっていないのだ。



 幸いな事に、向こう側が侵攻して来るルートと日時は、向こう側が公言している状態となっている。


 であれば、ある程度先読みして観測地点へと向かう事で、相手方の情報を、少なくとも外見的な大きさや大まかな数、といった程度のモノで良ければ比較的安全に、簡単に奪取する事も可能なのだ。



 ついでに、兵科の類いが分けられているのか、も武装の有無や隊列で見分ける事も出来るだろう。


 尤も、人も魔物もスキルを持つこの世界で、相手方が持つであろうソレを確認しようとした場合、それこそ命を賭けるなんて言葉ではまだ生温い程の、そんなレベルでの覚悟が必要となる事は、想像に難く無いハズだ。



 故に、決死の任務となる。


 また、ソレに就くのは相手に本気を出させられるだけの実力と、その状況から確実に生きて戻って来る能力か、もしくは共に肩を並べた戦友が打ち倒されたとしても、掌から血を滲ませつつ冷静に撤退を選べる心力の持ち主か、のどちらかが選ばれる事となる。



 情報を引き出すにも、ソレを持ち帰るにも、やはり相応以上の覚悟と実力が必要となるのだ。


 であれば、やはり実力、忠誠、精神力揃って飛び抜けている精鋭達にこそ任せるべき任務、と言えるかも知れないが、この切羽詰まっている状況で戦力を減らすのは極力避けたいのが正直な話しと言えるだろう。



 とは言え、やらねばならぬ任務である為に、旅立つ者達を見送るアレス達。


 半数も戻って来れば良い方か、と半ば諦めに近い感情を抱きつつも、彼らに続く形で到着し続ける本隊の受け入れや引き継ぎ、戦場となる予定地への仕掛けの作成や実際の動作確認等の、本当にコレ冒険者(俺達)の仕事か?と責任者を取っ捕まえて問い質したくなる様な作業に追われる事数日間。



 その頃には、送り出した者達もチラホラと戻って来る者も出始めており、彼らを迎え入れ、讃え、その上で持ち帰って来た情報を精査する事になる。


 そして、ソレを元に要塞を強化し、戦場へと仕掛けを増やし、或いは強化して対策を取りつつ、スルト側が到着するのを虎視眈々と待ち構えて行く事となった。




 そうして、アレス達が準備をほぼ万端に整えた翌日、大地を揺らしながら行進して来る、巨人達の頭の先端が、要塞に籠もる彼らの視界に漸く飛び込んで来る事になったのであった……。




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