表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/220

『追放者達』、指揮官に就任する

 


 取り敢えず、大まかな方針だけは確定させられた為に、急遽開かれた軍議の場は解散する事となった。


 それに伴い、謁見の間であったから、とこれも簡易的にアレスの指揮官への就任手続きもその場で行う事となり、既に邪魔者も居なくなっていた事もあってか、スムーズに手続きを終える事が出来ていた。



 その翌日、アレス達『追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達は、再び王城を訪れていた。


 と言っても、目的地は前日の様に謁見の間、と言う訳では無く、寧ろ城の中では無く外に設えられている『練兵場』が目指す先となっていた。




「…………おや、遅れましたかね?」




 案内によって到着したアレスがそう声を掛けたのは、昨日の件にて真っ先に先鋒へと立候補していたオストレイ爵と呼ばれた男性。


 見た感じではまだ若く、小人族である、と言う点を除いてもそこまで歳は離れていないだろう、と感じさせるその貴族は、掛けられた声に反応して後ろ手に組んでいた両手を解き、大きく広げてアレス達の事を歓迎している、と全身で表して見せていた。




「おお!到着された様ですな!

 なに、こちらが早く着きすぎた、と言うだけの話です。

 現に、まだ時刻は指定されたモノよりも大分早いモノとなっておりますからな。

 気にされない事をお勧め致しますぞ」



「では、その様に。

 …………しかし、ここまでの景色は、早々見れる様なモノでは無いですね。

 こちらとしても、正に『壮観』の一言に尽きますよ」



「ははっ!それは、何よりですな!

 何せ、我が国が誇る最精鋭の軍人千名が、この場に集まっているのです。

 それが、貴方の部下として貸与される戦力であり、更にそこへと我の部下以外にも、他の方々の精鋭達も加わる事となるのですから、最終的にどれ程の数になるか、今から楽しみで仕方ないですな!」




 その言葉の通りに、彼らの目の前にはズラリと整列した兵士達が並んでいた。


 一糸乱れぬ整列だけで無く、微塵も身動ぎせずに直立し続けるその姿勢は、お飾りとして貴族の次男や三男が入る様なお遊びの騎士団では無く、実戦的かつ本格的な戦闘の為の部隊として厳しい訓練を受けて来た者達である、と一目で理解させられるモノとなっていた。



 そんな彼らが、昼も迎えていない時分にて、磨き抜かれた装備を纏って並んでいるのだ。


 陽光を反射して綺羅びやかに輝くその雄姿は同性であれば憧れを抱くと同時に見惚れる程に見事なモノであり、通常であれば目にする機会は皆無であるハズのソレは、ある意味では『絶景』と呼んでも差し支えは無いであろう程であった。



 そんな精鋭中の精鋭達の前に、何故アレス達が居るのか?


 今回の戦争に請われて参加することになった、とは言え、あくまでも外部協力者としての立場しか無く、本来ならば機密事項に値するであろう彼らの前に、どうして待機する事となっているのだろうか?



 その答えは、至極単純。


 アレスが、ほぼ名目上だけとは言え、彼らを従え、導き、指示する立場に就任する事となったから、だ。



 実際の指揮は別の人間が取り、目標は特異個体を初めとした通常よりも強力な個体。


 ほぼ、事実上の傭兵か、もしくは露払いの類いか、とも思われるが、アレス達に取っての『本命』は敵大将でもあるスルトの首であり、他の部隊長を勤めているであろう強大な個体であり、狙うのは文字の通りに巨人狩り(ジャイアントキリング)ただソレのみ。



 であれば、名目だけとは言え、率いる事となった部隊の世話はどうなるのか?


 そんなモノ、当然の如く専門知識も無く経験も皆無に等しい彼らが出来るハズも無く、専門の者が執り行う事となる。



 しかし、実情はどうあれ、例え名目上だけ、であったとしても、就任してしまった以上は必要となる事もある。


 それが、本人としては後方にてふんぞり返る気も、アレコレと指図して戦場を混乱させる気も一欠片たりとも無いだけでなく、寧ろ同じく最前線へと突撃して行くつもりで一杯な状態であったとしても、であるから面倒だと言えてしまうかもしれないが。



 そうこうしている内に、揃うべき面子が揃い出す。


 例の軍議にて、先鋒に立候補していた歴戦の戦士達が、全員では無いにしても少数ずう精鋭を連れて来ていた為に、先の整列の模様が変化し、行列が更に伸びて行く。



 装備の仕様の違いで、ここからここまではこちらで、そこからその先はこっち、みたいに見分ける事が出来ていたが、やはりそうして一度整列すると微塵も身動ぎせずに直立を維持している姿勢を見るに、やはり精鋭揃いであるのだろう、と実感させられる。


 …………コレまでの旅路を思い返し、自分達と同じギルドに所属していた冒険者達も、ここまでのレベルで、とは言わないが、それでも最低限のアレコレを何処かしらに置いて来ないで持っていてくれれば、また違った結果にもなっただろうになぁ、と一人遠い目をしていると、揃うべき人員が揃ったらしく、設えられていた壇上へと上がる様に促される。



 …………聞いた所、結構な高位に居るらしい貴族も居る中で、平民で冒険者で孤児出身の俺が?と流石にアレスも抗議した。


 そんな事したことも無いし、やった所で効果があるとも思えない。寧ろ士気が下がる事の方を心配するべきでは?と。



 しかし、ソレは有り得ないし寧ろ激励するなら君しかいない、とまで言われてしまい、結局引き受ける羽目に。


 アレス本人は未だに納得せず、かつ不安も不満もタラタラな状態であったが、それでも半ば押し付けられていても引き受けたのは自分なのだから、と壇上に登り、グルリと兵士達の顔を見渡して行く。



 …………すると、そこに並ぶのは、何故か憧れの存在を目の当たりにしたかの様な、喜色の混じった輝きに満ちた瞳の数々。


 中には、驚愕に溢れている者もいたが、僅かに表情に出しているだけで身体は小動もしていないところを見るに、やはり精鋭揃いと言えるのだろうな、と見当違いな事をアレスは思い浮かべてしまう。



 取り敢えず、無難に済ませてしまおうか、と半ば現実逃避していた状態から戻って来たアレスは、口を開き、演説めいた事を口にして行く。


 今回指揮官に就任した『Sランク冒険者』の肩書を持つ者である事、仲間達と今回の戦争に参戦させて貰う事、指揮官にはなったが指揮を執るつもりは無い事、寧ろ最前線へとお邪魔する予定な事。



 特に、差し障り無い程度の、なんて事は無い挨拶。


 最後に、自分達の目標は敵将の首である事を口にしてから、アレスは兵士達に語り掛けて行く。




「…………皆、今の今まで、指揮官として誰が座り、どんな戦いとなったとしても変わらず成果は貴族に奪われ、どれだけの手柄を自分達が挙げられたとしても、どれだけの苦境で戦ったとしても、結局は貴族の功績にされてしまう、と経験している者達も多いとは思う。

 だが、今回は違う!ソレを、俺は俺の肩書に賭けて宣言させて貰う!

 今回は、国の一大事、存亡に関わる事態であり、必然的に国王陛下も直々に参戦される。

 であれば!コレまでの様に、後方で踏ん反り返っているだけの無能に手柄を掠め取られる様な狡い真似も、事の成否のみを吹聴される心配は欠片も無い、と断言しよう!

 故に、戦え!!

 故国を、仲間を、家族を!大切な者達を守る為に!俺達と共に!!」




 最後は、半ばノリノリで叫ぶ様に言葉を放ったアレス。


 すると、それに感化されたのか、それとも最初からサクラが仕込まれていたのかは彼には分からないが、釣られる形で傾聴していた兵士達が拳を空へと突き上げ、歓声を挙げて士気を高めて行く。



 その様子に内心首を傾けながらも、まぁ良い結果になったのならば良いか、程度に思いつつ、アレスは軽く手を振ったりしながら壇を降りて行くのであった……。




(The平民顔が出た所でどうにもならんだろうよ?)←アレス


((((え、なんか英雄が出て来たんだけど!?))))←兵士一同



〜演説後〜



「「「「英雄バンザイ!野郎ぶっ殺してやる!!!」」」」←テンション爆上げな兵士一同



(えぇ、ナニコイツラ、怖っ)←アレス



((((こうなるだろうとは思っていたが、ここまでしろとは言ってないんだがなぁ……))))←まともな貴族一同

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あけましておめでとうございます 年末年始の忙しさが終わり、やっと休みでたまっていた分を読ませて頂いております。 今年も、宜しくお願い致します。 後、アレスはそろそろ自分の価値?凄さ? 自…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ