表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/220

『追放者達』、受諾する

取り敢えずクリスマスですが特別編等でも無く普通に更新



 


 アレス達を侮り、見下していた様子を隠そうともしていなかった貴族達。


 そんな彼らへと王から向けられたのは、冷ややかな視線と絶望的な言葉であった。




 そんなに囀りたければ、自分達で真っ先に突撃しろ。




 ド直球に投げ付けられたその言葉に、貴族達は顔を青褪めさせる。


 国が危機に瀕し、その難局を覆せる可能性を持つ救世主達を、事が済んでもいないのに嘲笑い、喰い物にしようとするのならば、これまで貴族として傲慢に肥え太って来たその身を国に捧げる事を義務と知れ、と一喝して見せたのだ。



 それには、わざと錯乱した様に見せていたアレスも、流石に反応せざるを得ず、チラリと視線を上げて様子を垣間見る。


 既に、彼の内に滾っていた憤怒は無く、ただただここからの流れがどうなるか、どの様に場を作って行くつもりであるのか、を観察する、凡そ依頼人に向けて良いモノでも、また一国の王たる者に向けて良いモノでも無い、値踏みする視線となっていた。



 当然の様にソレに気付き、一瞬とは言えアレスと視線を交わらせる王。


 だが、さも当然、と言わんばかりの様子にて、憤慨も指摘もせずにアレスから視線を外すと、一転して温度を無くした絶対零度の視線にて、周囲の貴族達を射抜いて行く。




「どうした?

 先程までとは打って変わって、随分と静かになった様であるがな?

 どれ、他には居らぬのか?

 我こそは、と武勇を誇る、民の上に立ち、彼らの糧にて養われ、彼らを守る義務を抱える者こそが我ら貴族である、との自覚の有る『本物の貴族』は、どれ程の数が何処に居る!?」



「…………ハッ!

 では、当家にこそ、先鋒をお任せ下さいませ!

 領地こそ広くは無く、領民も多くは無い当家ですが、我らの口が民の働きによって満たされている事を、忘れた者は一人たりとも居りはしません!

 我が血族、我が門兵の最後の一人に至るまで、一歩も退く事無く華々しく戦い抜いてみせましょうぞ!

 ですが、これだけはお約束頂きたく…………」



「皆まで言うな、オストレイ爵よ。

 そなたの献身、我が王家は幾度となく助けられて来た。

 そなたの心、疑うハズも無いではないか。

 また、万が一、そなたの血が途絶えたとしても、そなたの領地、領民達には、不自由させる事は決して無いと、ここに我が名『オブシダン=ケテル・ハーフバギンズ』が保証致そう!」



「…………ハッ!有難き幸せに存じます!」




 真っ先に声を挙げ、跪くオストレイ爵が涙ぐんだ声を出す。


 オブシダン王が彼の家系の働きを認め、ソレを褒め称える、その上で事の次第では考えられた最悪の後処理を受け持っただけでなく、自らの名前まで持ち出して約束したのだから、忠臣として仕える者としては最大の『誉れ』と言うヤツに該当するのであろう。



 そうしてオストレイ爵と呼ばれた人物が感涙に咽び泣いていると、彼に続く形で幾人かが貴族達の群れから進み出て来る。


 いずれも、雰囲気はとてもオストレイ爵と似ているだけでなく、その場に居る貴族達の中でも実力は抜きん出て高い事が雰囲気からも読み取れる程の手練ればかりであり、先の囀りにてアレス達を馬鹿にせず擁護する言葉を口にしていた者達ばかりであった。




「王よ!

 よもや、この国の忠臣がオストレイ爵のみ、等と世迷言を申される訳は御座いましょうな!?」



「然り!

 先の戦乱も、その前の『暴走』の際も、オストレイ爵家は先鋒を仰せつかっていたハズ!

 であれば、そろそろ我が家にもお命じ下さってもよろしいのでは?」



「おお、それは良い事を申した!

 手柄と忠義を一所に集め過ぎるのは、些かよろしい事では御座いましょうや?

 なれば、先鋒の大役、我にこそお命じ下さい!!」



「いいや、此度こそ、我が家にその名誉を!!」



「いや、我が家にこそ!!」「我に!」「こちらにこそお願いしたく存じます!!」




 次々に、先鋒への立候補をして行く貴族達。


 元より、強者を重んじるのは強者、との事もあり、力も無く義務も果たさないのに地位ばかり高い連中に思う所が在った者達が、挙って立候補を続けて行く。



 戦の先駆けは戦士の誉れ。


 しかも、それが外部からの戦力を頼りにしないとほぼ負けが見えている様な、国の存続が危ぶまれる程の事態での先制攻撃にはその後の流れを決定付ける、と言っても過言では無い位に重要な行為となる。



 それだけに、危険性は半端なモノでは無く、また真っ先に敵陣へと突撃するのだから、やはり致死率と言うモノで見てもかなりのモノとなるのは間違い無いだろう。


 だからこそ、このままでは国が無くなる、自らの忠義を向ける先も、自身が守るべき民草達も好き勝手に蹂躙される事となる、と言う事に我慢ならない憂国の志を持つ者達が、立ち上がり志願しているのだ。




 自分達の命は使ってくれて構わない。


 だから、どうかこの国を存続させる対策を講じて欲しい。




 彼らが願うは、その一念。


 自らの血族が先祖代々に渡って守り、発展させて来た領地と民草の庇護も願うモノであろうが、やはりこの場で二心無く志願している者達にとっての悲願は、そこの部分に尽きると言っても過言では無かったのだった。



 そんな彼らの覚悟と悲願とに中てられたのか、徐々に他の貴族達に気まずそうな雰囲気が広がって行く。


 どうせ誰かがどうにかする、いざとなったら何かしらすれば良い、自分が出る様な事態になればもうほぼ終わっている事だから、と理由を着けて現実から目を逸らし、一歩踏み出して声を挙げる事が出来なかった臆病者が大半を占めていた。



 いや、寧ろその場に居た者達の殆どは、そういった類いの者達であった、と言えるだろう。


 寧ろ、先の調子に乗っていた愚か者達や、先鋒へと志願している覚悟ガン決まり勢の方が圧倒的少数な立場であり、日和っている内にどちらとも態度を現す事が難しくなってしまったのだろう。



 そんな彼らの中から、比較的若い(と思われる)者が続いて志願する。


 自分には先鋒を務めるだけの武勇は無いが、それでも先鋒の英雄達を支援し、その帰還の手助けをする事ならば出来る、かも知れない、と。



 そうして声を挙げた若者に対して、先鋒へと志願していた歴戦の戦士達は歓迎の声を挙げる。


 道を切り開き、戦局の流れを作るまでは自分達が出来るだろうが、その後に開かれた道を押し通り、出来始めた流れを決定的なモノへと後押しする者が欲しかった、こうして立候補してくれるのであれば、自分達の背中も安心して任せられると言うものだ!と。



 中には、平時では若者では仰ぎ見るのも憚られる様な高位の者も、そこには居たらしい。


 が、相手はそんな身分差等欠片も気にする事は無く、寧ろ気さくに若者の肩を抱いて歓迎し、彼がまだ独身である、と知ると生きて帰れたら自らの娘を嫁にはどうだ?と薦めて来る始末であった。



 ソレを目の当たりにしたどっち付かずであった連中は、先を急ぐ様にして参戦を表明して行く事となる。


 中には、勇気を出した若者に乗っかる形で、勝手に軍議まで始めていた歴戦の戦士達の輪に入ろうとする図々しい者も居た様子だが、怯懦に塗れた臆病者は黙って指示を待っていろ、とけんもほろろに蹴り出される結果となってしまっていた。



 そんな、一部の連中は今後にどう転んでとしても破滅が待つ未来に歯噛みし、一部は先んじて声を挙げなかった事に後悔している様を晒している状態を眺めていたオブシダン王は、次はそちらだ、と視線をアレスへと差し向けて来る。


 それに対してアレスは、先に披露した嘆きの内、なんで自分達の周りばかりで事が起きるかなぁ、と内心にて苦笑いを零しながらも、軽く目配せして仲間内の意思確認を終わらせた後、オブシダン王へと向けて




「…………では、状況と決戦地の説明と、概要で良いので戦力の数もお願いします。

 報酬の話しは、事が終わったその後で、と言う事でよろしいですね?」




 と言葉を返す。


 それにより、王の顔に喜色が浮かんだだけでなく、歴戦の戦士達の顔にも、どうにかなる可能性が高まった、と肩の荷が降りた様な色が浮かべられる事となるのであった……。




ac6にランクマが実装


思った以上に蠱毒の壺過ぎてまだCランクまでしか上がれて無い(^_^;)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ