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『追放者達』、説明する

気付いたら『いいね!』が1000件を突破しておりました

歴代作品でも初の出来事ですので、至極感謝しておりますm(_ _)m

 


 遠目に見えて来た建物へと向かい、暫しの間魔物を蹴散らしながら進んで行く『追放者達(アウトレイジ)』一行。


 季節も既に冬期の終わりへと差し掛かっており、寒さも緩みを見せているせいか活動を再開している魔物も多く、まるでかつて訓練も兼ねて訪れた大森林を思わせる程に、雲霞の如く群がって来る魔物を止まる事無く薙ぎ払い、関所と思われるモノを目当てに進み続けて行く。



 そうして雑に討伐しつつ進む事暫くの間。


 流石に、建物の細部が目に見え始める位にまで接近する頃合いになれば、定期的に魔物を掃討して作る『安全圏』に近い場所まで来ていたのか、魔物の側としても危険地帯である、と認識を持っていたらしく、まるで潮が引くかの様に一斉に橇への追撃を諦め、元居た巣穴へと退却して行った。



 ソレに対してアレス達は、助かった、とは欠片も思ってはいなかった。


 寧ろ、星樹国にて消耗する事となった諸々の物資を、現金の形も含めて補充する良い機会であったのに、と常人であれば死を覚悟するどころか、最早逃れられない状況となりつつあったにも関わらず、タダの稼ぎ時、としか見ていなかった何よりの証左である、と言えるだろう。



 そんな彼らが速度を落とした、とは言え、近付いて来た関所は頓に騒がしくなる。


 ほぼ鎖国状態で交流も無かった国の側から突然飛び出して来た、と思えば、流石に手助けしないと命が危ない!?と遠目に見ても思えてしまう程の魔物に群がられていたにも関わらず、誰も欠けず寧ろほぼ無傷に近い様な状態で切り抜けて来る実力を見せ付けられる形となったのだから、どの様な対応をすれば良いのか迷い、戸惑うのは半ば当然の反応だと言えるだろう。



 とは言え、対応もせずに放置しておくのも、また不味い。


 自分達の職責を放棄する事にもなるし、何よりの先程魔物相手に披露して見せた力が、今度は彼らに対して向けられない、とはこの場の誰もが保証する事が出来ない為に、慎重かつ大胆な対応が求められる事となってしまっていたのだ。



 尤も、そんな事は当の本人たるアレス達には全く以て関係無く、また察する事もほぼ不可能に近い。


 何せ、まだ遠くから建物が見えている、と言う程度の距離に近付いただけであった為に、雰囲気も空気も読み取るどころか触れる事すら出来ていない状態であったのだから、察しろ、と言う方が無茶に近いと言えるだろう。



 そんなアレス達が関所へと到着する頃合いには、彼らも対応を決める事が出来ていたらしく、揃って外へと出て来てアレス達を出迎える形となっていた。


 但し、その手には既に抜き身の得物が構えられており、種族柄として幼く見られるその顔や身体から、一種の覚悟の様なモノを立ち昇らせながら、アレス達の到着を待ち構えていた形となったのだった。



 流石に、衛兵一人一人の表情や、ナタリア同様の頭身の低さから正直似合ってはいない、と言えてしまう装備を身に纏って居る彼ら姿を目の当たりにした段階で、アレス達としては自分達がどの様に見えているのか、を察する事が出来ていた。


 その為に、待ち受ける衛兵達のかなり手前にて橇の速度を大きく減速させると、その後はゆっくりと彼らへと向けて近付いて行き、その上で得物を手にしていない事をアピールしながら降りると、自分達の冒険者証を提示しながら説明を連ねて行く。



 何故こちらに来たか、の理由や、どうして星樹国側から来たのか、といった当然の疑問の解消に加え、彼ら本人の身分の証明と伝えなくてはならない情報の伝達まで全て行ってしまう。


 流石に、星樹国が陥落して既に『元』が付く状況となっている、と言う事を納得させる事には苦労したが、彼らが回収していたゴライアス配下の『傀儡』の残骸を見せたり、今後こちら側にも難民達が来る可能性が在るから詳しくはそちらに聞いてくれ、と説明すると、どうにか納得させる事に成功したらしく、唖然としながらも落ち着きを取り戻させる事に成功していた。




「…………はぁ〜、そんな事になってたんだ……。

 俺達としては、こっちに来る人は殆どいないから周囲の掃討を、って言われてる位だったから君等が来た時には思わず驚いたけど、それよりももっとヤバい状況になってるみたいだよね?

 本当に、どうするんだろう……?」



「流石に、コレは想定外、ですかね?」



「想定外も想定外だよ!

 俺達が言われてるのなんて、精々が出て来た森人族相手にこっちからが別の国で、入るなら手続きが必要だ、って事を説明する程度なんだよ?

 それが、突然『隣国が滅びました』なんて言われても、本当だったとは思うけどどうしたら良いのか、見当も付かないよ……」




 関所のリーダーと思われる小人族の男性は、何かを諦めた様な雰囲気にて首を振る。


 仕草の端々や溜め息を吐くその姿からかは、それなりに年齢を重ねているのであろう、と察する事は出来ていたが、外見だけで言えばシワもヒゲも無く、頭身も子供のソレであった為に違和感がマシマシな状態となっており、率先して対応に当たっていたアレスとしても、脳が混乱する様な心持ちとなっていた。



 とは言え、流石は危険な辺境地域へと派遣される衛兵。


 得物は見れば業物と判るモノであったし、言動こそ軽くはあったが、立ち振る舞いは確実に強者のソレであり、実際に手合わせすれば流石に危うげ無くアレス達が勝利するであろうが、それでも片手間に勝つ事や、手を抜いて勝ち切る事は少々難しそうだ、と思える程度には高い戦闘力を保持している様に見て取れていた。



 そんな、リーダーと思われる人物は、そのまま腕を組んで考え込む姿勢へと入ってしまう。


 おそらくは、自らに与えられている権限を超える様な事態に直面してしまい、更にそれが客観的に見れば事実だとは理解出来るが、公的な発表の無いままでは未だに真偽不明となっている大事件に関する事となってしまっては、流石に『どう行動するか』の判断が付かずに頭を悩ませる事となっているのだろう。



 自らに与えられた権限の範囲を超えた行動を決断し、実行する。


 ソレが出来ない者を世間では『愚鈍』と呼び、出来る者を『賢明』と呼んだりもするが、それはとても難しいモノであり、早々に気軽く行って良い事では無い。



 何せ、自らが取れる責任の範囲を逸脱した事をしようとしているのだ。


 自身が死ぬだけであれば『まぁ良いか』で済ませる事も出来るかも知れないが、それが多くの他人を巻き添えにし、かつ最悪落命に至る、だなんて事であれば、その選択を即座に下せる者こそが異常者であり、悩み、立ち止まり、苦しみながらも考え続ける者こそが正常であり、賢い者、と呼べる存在であると言えるだろう。



 この場合、彼の判断によって星樹国へと調査に向かうなり何なりとすれば、その先にて星樹国を滅ぼした魔族と遭遇する羽目になるかも知れないし、彼が居ない間に難民達が押し寄せて来るかも知れない。


 そうでなかったとしても、この関所へと目掛けて魔族に率いられた魔物の軍勢が、彼らの国を滅ぼさんとして押し寄せて来るかも知れないし、逆に何処からか情報を掴んだ国が既に軍を派遣しており、それが何もしなくとももうすぐ到着する事となるかも知れない。



 半ば妄想に近いが、それでも可能性としては低いだけで『無い』訳では無い。


 そして、もしそうなった場合、勝手に動いた、として彼はその責任を取る羽目になるし、周囲にも被害が及ぶ事になる可能性が高い。



 …………そんな、諸々の可能性を考慮した上で出された結論は、一旦情報を上げるべく報告をする為に、リーダーとしての立場を持つ彼を護衛し、共に首都まで上がって欲しい、と言う依頼をアレス達が受ける事になるのであった……。




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