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『追放者達』、事後処理を済ませる

 



「結局、何だったんだろうな、アイツ……」




 戦闘の終わってから数日が経過した街の外周近くにて、破壊された外壁やツリーハウスの瓦礫の撤去を行いながら、アレスがそう零す。


 その言葉に反応する形にて、近くで作業していた他のメンバー達も口を開いて行く。




「…………うむ。

 当方としては、あの時も前回も、直接見えた訳では無かったが故にどの様な相手なのか掴みかねているのであるが、流石に何も無しであの様な行動を起こす様な種類の思考をしている風には、見えなかったのであるよ」



「ですが、だとしたら何故にあそこで引くような真似をしたのでしょうか?

 私の母を守る為、とは言え、アレス様が別行動を取り、パーティーの戦力としては二分される状態となった途端に姿を晦まし、同時に攻め手が乱雑になる、だなんて事をしそうな相手には見えなかったのですが……」



「しかも、アイツってリーダーが話した感じだと、アタシ達の事を確実に仕留めたい、って願ってた訳でしょう?

 だったら、遭遇自体は偶然だったとしても、そこで本人?だけ撤退する、ってのは不自然に過ぎるんじゃない?

 少なくとも、同じ退くにしてもアタシ達を仕留めてから、だとか、最低でも本来の目的だったらしいここの街を潰してから、だとかになるんじゃないかしら?」



「でも、遠目に見た限りだと、リーダーが離脱した直後位に敵さん達の後ろで霧が発生して、それっきり例の『傀儡』は見えなくなったのですが、それと同時に敵さんの数も減った様に思えるのです。

 特に、目立ってた巨大な個体なんて、こうして瓦礫と一緒に残骸を片付けてる訳なのですが、見えてた半分も見付かって無いのですよ?

 これって、割りと計画的に撤退した、って事じゃないのです?」



「確かに、そうとも取れるよねぇ。

 でも、オジサンが見てた限りだと、あの時って特に別の何かが例の指揮官に近付いてる様子も無かったから、咄嗟に何処かに招聘された、って感じでも無さそうだったんだよねぇ。

 だからといって、あれだけの局面で詰め切らずにアッサリ手を引いてる、って事を鑑みると、予め決められていた行動予定だった、って事なのかなぁ?」



「だったら、多少時間を掛けてでも俺達の事をキッチリ殺ってから退くんじゃないか?

 その後に急いで帳尻を合わせる、位なら多分やれるだけの柔軟性は有ったと思うから、そういう場面なら私怨も兼ねて真っ先に俺達の抹殺を狙って来てたと思うぞ?

 本体がかなり近接も熟せる、立ってるだけの木偶の坊指揮官、って訳じゃ無かったんだから、他の『傀儡』を操りながら自身も吶喊を、って手に出られてたら、多分終わってたしな」



「ならば、尚の事退く理由が無いのである。

 おまけに、当方等を分断させようと、こうして直接街を狙う様な真似までしておいて、本人はアッサリ引き下がる等と、全く以て理解出来ない事をしているのであるな。

 ………………うぅむ、考えても、全く以て分からんのである……」




 思わず腕を組んで唸りを上げながら首を傾げる事となってしまったガリアン。


 しかし、それはアレス達全員が思っている事を彼が代弁しただけの話であり、内心ではガリアンと同じ事をしそうになっていたりしたのはここだけの話であったりする。



 この国、星樹国を攻略する為に派遣された、とは後本人から聞いていた為に、あそこに居たのはほぼ偶然にしろアレス達としても納得は出来るのだ。


 だが、あの盤面で撤退を選択するだなんて事は、まるで自身の優位に進めていた盤上遊戯の盤を、自らひっくり返して反則負けに持って行く、だなんて行為に等しいモノであり、それをするだなんてとんでも無い!と言える状態であった。



 そして、既に会話にも出ていた様に、予めあそこで撤退する、と言う事が決まっていたとしても、それはそれで不自然なのだ。


 何せ、彼らとて無抵抗のままに討ち取られるつもりは欠片も無かったが、それでもあのままゴライアス本人が前線へと躍り出つつ総力戦を、となった場合、遊撃手にして攻め手の大駒であるアレスが欠けている状態では彼らに抵抗しうる手段は乏しく、そのまま磨り潰されていたであろう事はあの場に居た者ならば誰しもが理解していたのだから。



 そんな、容易に取れたハズの目の前の『(手柄)』を取らず、予定の道程だから、と引き返す冒険者(軍人)が居るのか?と問われれば、まず居ない、と返せる程度には当然の事だと言えるだろう。


 それは、魔物であろうと人間であろうと魔族であろうと変わらぬ、功名心から来る本能的な欲求であり、その上でアレス達を『仇敵』として定め、怨嗟の声まで吐き出して見せていたゴライアスであれば尚更の事であるのは、想像するのに難しいモノでは無いと言える。



 …………ならば、なんでまたあそこで退いたのだろうか?


 と思考が最初の地点へとループし、今度は揃って首を傾げる事になったアレス達。




「…………たっ、たたた、大変だーーーっ!?!?!?」




 そんな彼らの元へと、バタバタと足音を立てながら、大声で近寄って来る複数の影。


 声自体には聞き覚えがあり、以前にも似たような事があったな、と思いながら視線を向けるとそこには、ゴライアスとその配下による襲撃を教えてくれた森人族の若者達であり、一際特徴的な髪型をしたアレックス(リーゼント)が、血相を変えてアレス達の元へと駆けて来ていた。




「おいおい、どうしたよ騒がしいな。

 なんぞ、魔物でも出て来たか?」



「確かに、未だ外壁の修理にまで手が出ておらぬ状況故に、緊急事態だ、と言いたくなるのは理解出来ぬでも無いが、少々大袈裟にも思えるのであるぞ?

 もう少し、落ち着きと言うモノをだな……」



「それが!

 落ち着いてなんていられない事なんだって!!」




 駆けて来た勢いのままに、息を切らせながらそう吼えるアレックス。


 その表情は鬼気迫るモノであり、雰囲気は冗談や吉報の類いでは無い、と如実に語っていた為に、思わず『追放者達』一同は揃って『聞きたくねぇ』と思ってしまう。



 が、そんな彼らの様子に気付いていないのか、それとも最初から気にしていなかったのかは不明だが、アレックスが勢いのままに叫ぶ様にして言葉を口に出す。







「王都が、王都が陥落した!!

 この国は、もうおしまいだ!!」






「…………は?」



「ここに来たのと同じ様な『傀儡』の軍勢に、同じ頃に王都も襲われてた、って逃げてきた人から聞いたんだ!

 最初は、拮抗状態を作れてたんだけど、途中から敵の動きが的確なモノに変わって、あっという間に攻め落とされる事になった、って言ってた!

 その人は、防衛戦に兵士として参加してたみたいで、本人もボロボロで今治療を受けてるけど、一刻も早く周囲に伝える為に、必死になって逃げてきたんだって!」




 興奮した様子を隠そうともせず、一気に捲し立てるアレックス。


 その様子に、最初こそ間の抜けた声を出す事が出来いたアレスも気圧され、最後まで口を出せずに聞きに回るしかなくなってしまっていた。



 が、その内容は過不足無く理解出来ていた。


 そして、状況的に取れる選択肢はほぼ無く、彼らとして動けるモノとなっては一つしか無い、と断言出来るモノとなっていた。




「…………皆」



「言わずとも、分かっているであるよ、リーダー」



「……えぇ、その判断は正しいかと。

 傷付いた方々を救いに行けないのは残念ですが、仕方のない事だと思います」



「まぁ、そうよね。

 それしか、無いもんねアタシ達」



「なら、急いで準備するのです!

 でないと、間に合わなくなるのですよ!」



「そうだねぇ。

 目的を果たす為にも、準備は最大限しておかないとねぇ」




 それらの言葉を受けて、未だ彼らの近くに留まっていたアレックスは熱り立つ。





「…………そ、そうか!

 俺達の王都を、奪還しに向かってくれるんだな!

 やっぱり、あんた達はすげぇよ!

 俺、一生あんた達に付いて行くよ!!」




 そうして目を輝かせる彼に対して、六人全員が揃いも揃って『何を言っているんだコイツは?』と言いたげな視線を送った後、ほぼ偶然ながらも声を揃える事になるのであった……。






















「「「「「「いや、逃げるんだけど?」」」」」」








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