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『追放者達』、傀儡騎士の部隊を蹴散らす

 


 …………現状として、アレス達は幾らでも文句を言ってやりたり気分で一杯であった。


 彼らが伝えた情報を、もう少しで良いから真面目に取り入れるか考えるかしていれば、この様な防御もへったくれも無い様な街で防衛戦をしなくてはならない現状は無かったのだから、当然の権利だと言えるだろう。



 また、もう少し真面目に事態を解決しよう、としてくれていたのであれば、まだ彼らの不満も少ないモノになっていた可能性は否定出来ない。


 一応、真面目に戦闘職としての役目を果たそう、とするだけの気概が在る者は多く居た様ではあったが、それだけでは無く精鋭中の精鋭を大部隊で送り込んでくる、とかをしてくれていたら、こうして自分達は無給無報酬で死に目に合わなくても良くなっていたのだから、最低限その程度はしてくれても良いのでは?と言いたくなっても仕方の無い言葉だろう。



 そも、相手は推定とは言え魔王軍の幹部級と、ソレが率いる無数の配下達なのだ。


 なれば、国としても最精鋭を出し惜しみする事無く開放し、戦力の逐次投入、だなんて愚策を犯す事無く一撃の下に一切合切を終わらせる位の居てほしかった、と願うのは、幾分かの肩書きをもち合わせているとは言え、身分的には一般市民とそう変わらないハズの彼らとしては、そこまで無茶な事を言っている訳では無いと信じたい所存であった。



 …………が、それはそれ、としてこの場で抗戦を選ばなければ、無惨に討ち取られるだけになる、とは彼らも否応無しに理解していた。


 以前遭遇した時の口振りから『人間死すべし慈悲は無い』を地で行く方針である、とアレス達は理解していたし、どうせこの状態となったら裏からコッソリと抜け出してトンズラ、だなんて事は望んでも出来ないだろうし、ソレをするにはカリンを始めとしたこの地の住民達を見捨てて行く必要が在る。




 流石に、それはアレス達としても寝覚めが悪過ぎる故にしたくはないし、彼らの矜持がそれを許すハズも無い。




 彼らの背負う肩書きがその選択肢を許さない、と言うのもそうだが、現状そもそも逃げる事が出来そうに無いのだ。


 ならば、自らの生を繋ぐ為にも、何らかの縁が合って出来た知り合い達の命を救う為にも、やはり戦って勝利し、敵を打ち倒して街を開放するしか無いだろう。



 と、言った具合に覚悟を決めたアレス達は、再び行動を開始した。


 具体的に言えば、現在防衛戦の指揮を取っているのが誰なのかを確認し、クズならば排除を、そうでないなら自分達が参戦する事を伝える為に、だ。



 流石のアレス達とは言え、飛び込みで戦地へと横入りして無事で済む、とは欠片も思ってはいない。


 もし万が一そんな事をしてしまえば、敵方からは当然として、本来味方側であり背中を預けられたハズの森人族達の方からも攻撃を受ける可能性が在る為に、安心して戦おうと思えばやはり必要な事なのだと言えるだろう。



 そんな心持ちで向かった先では、外壁の近くに急増された天幕が一つ。


 引っ切り無しに人が出入りし、かつ周囲の情報を求める怒号が響き渡っている所から、司令部として機能しているのはここだろう、と当たりを付けて向かって行く。




「急げ!

 少しでも早く、多く戦力を掻き集めるんだ!

 この際、内部班で経験が無いから、と言われようがどうでも良い!

 一人でも多く引っ張って来い!

 どうせ壁が壊される事になったら、全員殺される事になるんだ!」




 周囲へと怒鳴り声を挙げて指示を出しているのは、茶色の短髪でサイドだけを刈り込んでいる青年、に見える森人族。


 若干ツーブロック気味に見えなくも無いが、実際に現実を見ての指示が出来ていたし、セレンの元へと重傷者として運び込まれていた人達と同じ戦闘服(的な衣装)を纏っている事から、ここが『当たり』で間違い無いだろう、と判断したアレスは時間が惜しい、とばかりに声を掛ける。




「失礼「なんだこの忙しい時に」あぁ、別段そっちの話を聞く気は無いので一方的に。

 取り敢えず、今回の騒動の元凶はそちらに在り、かつ後払いの形で報酬を請求させて頂きますが、こちらとしても自衛の観点から勝手に参戦させて頂きます。

 なので、取り敢えず後ろ弾だけは撃ち込まない様に指示を出しておいて下さいね。

 でないと、先ず貴方達から潰さないとならなくなりますので。

 それでは」



「…………………は、はっ……はぁっ!?!?」




 言いたい事だけを一方的に捲し立てて、会話を打ち切るアレス。


 本来なら、この様に言い捨てる様にするのはあまりよろしい事では無いし、彼としても不本意極まる事態ではあったが、事は一刻を争う状態であった為に最低限伝わっていれば良い事だけを口にして、その場から背を向けてしまう。




 一方、言いたい事だけを言い捨てられた指揮官は、愕然としていた。


 自分達よりも遥かに若く、それでいてちっぽけな魔力しか持っていない人族に良いように言われ、反論する隙も無いままに『やるべき事はやった』と言わんばかりの態度で背を向けられたのだから、遥かに年上である彼の尊厳としても、無能極まる上司が起こしてくれたクソ忙しい現状としても、とてもでは無いが堪ったモノでは無かった。



 なので、さっさと天幕から出て行った若造相手に叱り付けてやろうか!と意気込んで後を追ったのだが、その姿は既に近くに無く。


 周囲へと視線を走らせれば、同じ郎党と思わしき者達と共に外壁の側にまで至ってしまっており、周囲を見回して出られる場所が無いのかを探している様子であった。



 が、次の瞬間には外壁の内側に手を掛けたかと思えば、そのままスルスルと登って行ってしまった。


 幾ら軽装であったとは言え、その動きは熟練した者のソレであり、傍から見る限りではハラハラさせられるが、動作自体は危な気の無い堅実さが感じ取れるモノとなっていた。



 突然の事態に、呆気に取られる指揮官。


 だが、その視界の中で、更なる驚愕として、同じ郎党と思われていた者達も同じ様に登り、或いは付き従っていると思われる獣達の様に跳躍して外壁を越え、現在霧が満ちて戦場となっているハズの外界へと躍り出てしまう。



 思わず目を瞠り、慌てて外壁を登る為の階段へと取り付いて行く指揮官。


 勝手にやる、と宣言された通りに、本当に勝手にやるつもりなのだろう、とは思っていたが、だからと言ってもここまで勝手に、かつ無謀な事をしでかすとは思ってはいなかった為に、慌てて状況を確認する為に外壁の向こう側を覗き込んだ。



 …………通常であれば、着地を失敗して手足を抑えて呻いているか、もしくは赤いシミへと成り果てた者達、がそこには居ただろう。


 また、現状を鑑みれば、着地の隙を突かれるのは当然として、霧の中から無言で襲い来る上に連携まで取ってくる『傀儡(ゴーレム)』の群れによって蹂躙され、参戦したは良いもののあっと言う間に物言わぬ無惨な骸へと成り果てているのでは無いだろうか、との予想は、思わぬ形で裏切られる事となる。






 ────そう、そこには、周囲へと立ち込めていた霧すらも吹き飛ばすだけの勢いにて暴れ回り、周囲へと群がる様に押し寄せて来る無数の『傀儡』を薙ぎ倒して行く、彼らの姿が写し出されていたのであった……。





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