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『追放者達』、『霧の中の化け物』と遭遇する

 


 セレンの昔馴染であり、友人でもあるヴィヴィアンから見送られる形にて街から出立したアレス達は、一路星樹国の真ん中に位置する首都の機能を持った街へと目指して進んで行く。


 一応、名前は付いていない、とは言え国の中枢である事には間違い無いので、どの街からも『こう行けば辿り着ける』と言う風に整備された道順が作られており、予めソレをヴィヴィアンから聞いていた一行は、忠実にソレを守って森の中を進んでいた。



 …………普段であれば、彼らも依頼によって縛られている訳では無いのだから、もう少しあちらにフラフラ、こちらにフラフラ、と寄り道の一つや二つもした事だろう。


 だが、今回に限ってはソレをするには少々国民性と地理に対する情報等が欠けている上に、普段であれば利用可能なのだが、この国には冒険者ギルドが進出出来ていない関係上、本来利用出来たであろう情報網が丸ごと使えない為に、下手に寄り道すれば二度と正道に戻って来れなくなる、なんて可能性すらも存在していたのだ。



 尤も、それはあくまでも『可能性』の話。


 元が付くとは言え一応現地民であった過去の在るセレンも一行には居るし、彼らも揃いも揃って方向音痴で目的地まで辿り着けません、だなんて愉快な特性を持っている訳でも無い上に、取り敢えず道沿いに進んでさえいればどこかしらの街には辿り着けるのだから、遭難してどうにもならない、なんて状態には天地が引っくり返ってもなりはしないのだか。




 ────なんて考えていた時期が、アレス達にも有りました。




 しかし、現状彼らはその『最悪の状態』に近しい状況に陥っている、と言えるだろう。


 より端的に表現するのであれば、遭難した、と言えるかも知れない。



 …………では、何故彼らが唐突に、最悪のパターンでもそうはならないだろう、と言われていた状態になっているのか?


 それは、彼らが突如として立ち込めた霧に呑み込まれてしまったから、だ。




「…………いやぁ、見事に呑み込まれたなぁ……」



「何を暢気な事を。

 コレぞ、噂に聞いていた事態その物なのではないであるか?」



「そう、ですね。

 こんな、昼を過ぎた辺りから立ち込める霧、だなんて例の件以外では聞いた事もありませんし、この付近もそんなに霧が掛かる様な地形では無かったハズですし……」



「本当に、いきなり発生したわよねぇ。

 と言うか、あの出方は最早煙の類いじゃない?

 突然、ブワッ!!って感じで出て来たけど」



「それには激しく同意するのですが、取り敢えずどうするのです?

 目の前で発生された、って事もあって、どうにか回避しようと多少無茶苦茶な操舵をした事もあって、今何処に居るのかも良くわからない状態になってしまっているのですよ?」



「まぁ、でもソレって仕方ないんじゃないかなぁ?

 この辺りの『道』って、遠くまで見通せているならソコがそうだ、って分かるけど、結局舗装されてる訳でも無い大きめな隙間の連なりだからねぇ。

 そりゃ、取り敢えず逃れようとして走らせれば、そういう事にもなるってモノだろうねぇ」



「まぁ、位置の特定なんざ、後で幾らでも出来るだろうから別に良いとして、問題は『今』だ。

 …………コレが例の噂話の通りのモノだとしたら、俺達結構ヤバい状態に在るって事じゃないか?」




 気軽にも思える口調と言葉遣いではあったものの、その視線は鋭く周囲を見渡していた。


 既に濃く立ち込めた霧によって周囲は閉ざされ、急いで焚いた光源(ランタン)の光では数メルト先すらも見通す事は容易では無かったが、ただでさえ尋常では無い状況に在ると言えるのに、その上で『何か在る』と噂話であっても聞かされてしまっていたとなれば、それだけで警戒するには充分過ぎる理由となっていたのだった。



『気配察知』や『生命探知』等の索敵スキルは、既に複数発動させた状態となっている。


 その上で、物理的な視線にて警戒を行っているのだが、アレスの表情はあまり芳しいモノとは言えない状態となっていた。




「…………何やら険しい顔であるが、如何した?

 普段であれば、もう少し余裕を見せるモノであったハズであるが?」



「…………そうだな。

 この際、黙ってても仕方無いから言っておくが、二つ程悪い知らせが在る」



「…………そういうのって、普通は『悪い知らせ』と『良い知らせ』が在る、って言うモノじゃなくて?」



「まぁ、そうとも言うな。

 じゃあ言い換えよう。

『悪い知らせ』と『もっと悪い知らせ』があるが、どっちから聞く?」



「聞くことは確定なのですね……。

 因みに、悪い方の知らせとは?」



「悪い方の知らせとしては、もしかするともしかする、かも知れない。

 具体的に言うと、『魔力探知』は霧で妨害されてる感じがするし、『生命探知』には俺達の反応以外には小動物が引っ掛かってる程度の反応しか返って来てない」



「…………なんだか、その状況って過去にも覚えがある気がするのですが、ボクの気の所為、ですよね?

 誰か、肯定して貰っても良いのです?」



「それは、ちょ〜っとオジサンにも厳しいかなぁ。

 何となくだけと、オジサンも嫌な予感がビンビンにし始めたからさぁ。

 …………で、一応聞いておきたいんだけど、悪い方の知らせ、じゃなくて、もっと悪い方の知らせ、ってどんなヤツなんだぃ?」



「あぁ、そっちは割りと単純だ。

『気配察知』と『動体探知』に幾つか引っ掛かる反応が在った。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だ。

 つまり、ソコのソイツみたいなのが何体もこの霧の中に潜んでいる、って事だよ!!」




 半ば唐突に、声を荒げるアレス。


 その手には複数の短剣が指の間に挟み込まれており、同じく橇に乗っていた仲間の方へと振り返りながら腕を振るい、それらを投擲して来た。



 突然の事態に、思わず固まり行動する事が出来ない一同。


 飛来した短剣の煌めきが自身に突き立つ、と思って痛みを覚悟したのだが、それらは彼らに命中する事無くその隙間を縫う様にして、彼らの背後へと飛び去って行く。



 そこで、ガリアンを筆頭として、御者席に居たナタリアと何かを理解している様子のヒギンズを除いた三人は、困惑の表情を浮かべる事になる。


 何故なら、彼が仲間に突然攻撃する、だなんて事はあり得ないし、また何かしらの方法にて強要された結果だとしても、この近距離で彼が外すだなんて事はあり得ない、と知っていたからだ。




 が、その疑念は次の瞬間には何か硬質なモノが壊れる音と共に瓦解する事となる。





 素早く音の方向へと向き直る一行。


 するとそこには、正しく『騎士鎧を纏ったナニカ』が剣を振り上げた状態で立っており、今にもその得物を振り下ろさん、としていた。



 しかし、ソレを実行に移す事は叶わずにいた。


 何故なら、肩や肘、手首といった動作の上で絶対に可動域が必要となる部分に対して、アレスが投擲していた短剣が突き刺さり、騎士鎧の装甲と干渉し合ってそれ以上振り下ろす事が出来なくなってしまっていたからだ。



 驚愕しながらも、事態に納得して反射的に得物を構える一行。


 そんな最中、一人この状況を予測していたらしいヒギンズが真っ先に手にしていた槍を突き出して、胸のど真ん中の一番装甲が厚いハズの部分を穿いて行く!



 …………が、何故かその穴からは鮮血が溢れる事は無く、また彼らの目の前に現れた『騎士鎧を纏ったナニカ』は活動を停止させる事も無い。


 また、振り上げた状態のままとなっている腕をどうにか振り下ろそうとし続けるだけに留まらず、もう片方の腕で自らを穿いた状態となっているヒギンズの槍を掴み、あろう事が自らの身体を更に深く貫き通させる事で槍を固定し、ヒギンズとの距離を詰めてまで見せたのだ!



 余りにも驚愕的な光景に、思わず立ち竦み行動出来ずに固まってしまう女性陣。


 しかし、いち早く驚愕から抜け出したガリアンが得物の斧を振るって頭を叩き潰し、動きが鈍った所で蹴り飛ばして槍を引き抜いたヒギンズが手足を落とし、最後にアレスが鎧の隙間から中身を掻き混ぜる形で刃を差し込み、数度の痙攣を経て漸くソレは活動を停止させる事になったのであった……。




生命探知にも引っ掛からない不死身の騎士鎧を纏ったナニカ

いったい何なんだ(棒読み)

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