『追放者達』、聖女の旧友と交流する
「え〜っ!?
セレンって今、『教会』の聖女様じゃなくて冒険者やってるの!?
しかも、Sランク!?
本当に!?!?なんで!?!?」
「えぇ、本当ですよ?
しかも、仲間達も全員最高位のランクを保持しておりますし、当然パーティーのランクもSを頂いております。
ふふっ、凄いでしょう?」
「いや、ソレは凄いよ、疑う余地も無く。
私だって、セレン程じゃないけど外に出てた時期が在るし、現にこうして店を開いてるのだってその時の経験と、あとこういうのってこの国にあんまり無かったな、って思ったからだったんだし。
だから、そうやって冒険者として成り上がって、最高位のSランクを取る、だなんて事が簡単なことじゃないの位は理解出来てるつもりだよ?
でも、だからってなんで『教会』所属じゃなくなってる訳?
連中、セレンが聖女だって分かったから半ば無理矢理連れて行ったのに、追い出すハズも無いんだからもしかして自分から抜けたって事?」
「いえ、その『まさか』です」
「………………え?
もしかして、本当に追い出されたの!?
なんで!?!?」
「さぁ、なんででしょうね?
ですが、私としましては、そこまで悪くなかった結果だとは思っています。
そのお陰で、こうして仲間達とも出会えましたし、彼と巡り合う事も出来たのですから、ね♪」
そう言って、驚きを隠せない様子のヴィヴィアンを横目に、微笑みながらアレスの腕を抱き込むセレン。
先に婚約者である、と紹介された事も相まって、彼女が放つ『女』としての幸せオーラの前に半ば呆然となるヴィヴィアンであったが、アレスの腕を抱き込んだ事によって柔らかく形を変えた大質量の前に、何故か生唾を呑み込みながら会話を再開する。
「…………そ、そう。
まぁ、セレンがそう思ってるのなら、それで良い、のかしらね?
…………ところで、貴女。
また胸大きくなったんじゃないの?
連れて行かれる時から大きかったとは思うけど、そこまででも無かったわよね?
確か……そっちの娘位じゃなかったかしら?」
「………………えぇ、まぁ、否定は致しませんよ、否定は。
ですが、その様な事を、この様な時間から語るのは、些か不道徳に過ぎるのでは?
私は婚約者でパートナーたるアレス様が居りますので最早気になりもしませんが、貴女の方はどうなのです?
他に殿方のいらっしゃるこの場で、昔から貴女のお尻が大きい事を気にしていた、と語らっても良いのですね?」
「ウグッ!?
流石に、ソコを突っ込まれると痛いし恥ずかしいけど、でも気になるじゃないの!
前は、そんな何仕込んでるの!?って思う程暴力的な大きさしてなかったじゃない!
なら、何をしたのか、どうやったのか、それくらい教えてくれても良いんじゃないかしら?
それと、そっちのお二人も聞きたがってるみたいだけど?」
「…………えぇ、そうね。
その辺の話、アタシは軽く聞いてるけど、も〜っと詳しく聞きたいわねぇ……。
その山脈の秘密、いい加減白状して貰おうかしら?」
「なのです!
流石に、年齢的にも種族的にも、最早望みは薄いと言わざるを得ないボクですが、それでも谷間への憧れは止められないのです!
なので、キリキリと吐くのです!
どうやって、その双子山を更に巨大なモノへと変化させたのですか!?」
ヴィヴィアンの言葉に煽られる形で、それまで静観していたタチアナとナタリアが参戦する。
身の危険を感じ取ったからか、より強くアレスの腕へと抱き着くセレンであったが、その暴力的なまでの質量が柔らかく変形し、冬の厚着を通しても分かる巨大さをより一層アピールするのみに留まり、ソレが三人をより強く刺激して行く事となる。
その雰囲気に中てられてか、もしくは単純に居た堪れなくなったからかは本人達にしか分からないが、尻の座りが悪く居心地悪そうにしていたヒギンズとガリアンが席を動き、退避しようとする素振りを見せる。
ソレに伴い、タチアナとナタリアもセレンへと接近するだけのスペースが生まれると同時に、アレスも至近距離にて女性同士の猥談を強制的に耳にさせられる、と言うある意味地獄の様な環境からの脱出と、その手伝いを二人に対して懇願する様な視線を向けて来る。
が、二人はアッサリと華麗にソレを無視。
面倒な予感しかしない事態に巻き込まれたく無い、との思いと同時に、ここで下手に割って入ると次の話題のネタにされかねない、と予測出来てしまっていたが故の緊急避難であった。
とは言え、アレスとして見捨てられた、と形容するしか無い状況であった為に、絶望の表情を浮かべる事になる。
そんな彼の事を慮ってか、もしくは状況的にコレ以上はあまり宜しく無い、と判断したのかは不明だが、セレンがアレスを抱き寄せながらメニューを手繰り、ヴィヴィアンへと向けて仕事へと戻る様に促して行く。
「…………ま、まぁ、その話は後にするとして、取り敢えず注文してしまいましょう?
皆さんも、お腹空きましたよね?
ほら、ヴィヴィアンも、お仕事の途中なのですから、ね??」
「…………まぁ、仕方無いか。
取り敢えず、今はそれで誤魔化されて上げるとしますかね。
それで?
ご注文は?」
「流石に、真っ昼間から話す様な事でも無かったわね。
さて、追求は夜に取っておくとして、アタシはコレとコレ、それとこっちの料理のお肉増量でよろしく!」
「確かに、それもそうなのです!
じゃあボクは、こっちのセットをお魚でお願いするのです!
飲み物は……この時間からエールって大丈夫なのですか?」
「何だか、後を知るのが恐ろしい様な単語がチラホラと聞こえて来た気がするのであるが、気の所為だと思いたいモノであるな。
当方、こちらのステーキセット肉大増量とワインを瓶で頼むのである」
「お、ガリアン君も昼から呑んじゃうかぃ?
なら、オジサンも行っちゃおうかなぁ〜♪
じゃあ、こっちの前菜三種盛り合わせと、オードブルの小を頼めるかな?
それと、こっちに書いてあるこの国で作ってる地のエールもジョッキの大でお願いしたいねぇ」
「…………普通に注文してくれてるが、見捨ててくれた事は忘れて無いからな?
後で、覚えておけよ?
それと、俺はこっちのセットのメインを肉と魚の両方でハーフに、って可能ならそれで、無理なら肉。
飲み物は……この、蒸溜酒の炭酸割り?ってヤツをグラスで」
「でしたら、私はサラダボウルと魚のセットに、蒸溜酒の瓶を一つお願いします。
食事が終わったら、部屋の方にも案内お願いしますね」
「はいはい、承りましたよ〜。
リーダーさんのオーダーはハーフのを両方で、って事で良いのよね?
なら、大丈夫だからソレで作って来るわね。
じゃあ、ちょっと待ってて下さいね」
「あ、じゃあ、アタシ達は果実酒でお願いね!
グラス二つで!」
「了解で〜す!」
そう軽く返事をしながら、注文を書き留めたメモを片手に厨房へと引っ込んで行くヴィヴィアン。
その後ろ姿をアレスが何となしに眺めていると、ジットリとした視線を向けつつ、頬を膨らませたセレンが彼の頬を突付きながら
「…………そんなに、お尻が大きい方が良かったんですか?」
と爆弾発言を放り込んで来た。
彼女らの姦しい会話を、至近距離にて否応無しに聞かされてしまっていたアレスとしては、不可抗力だ!と訴えたくなるも、聞いていた通りに大きく、それでいて形の良さが服の上からでも見て取れたヴィヴィアンの尻の事を思い出してしまい、より一層セレンにジットリとした視線を向けられてしまう事となるのであった……。