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『追放者達』、森人族の国へと到着する

 


 地図とセレンによる案内によって森の中を突き進んでいた一行は、とある空き地へと到着していた。


 一応、地図の上だとそろそろだろうか?との頃合いであり、かつ散発とだが継続していた魔物による襲撃も少し前から途絶えた状態となっており、何かしらの間引きかもしくはそれに類する行為が日常的に行われている地域であるが為に、魔物も寄り付かなくなったのだろう、と予想する事が出来ていた。



 そうして進んでいる内に、森の中では珍しい程にポッカリと開かれた空き地に辿り着く事になったのだ。


 流石に、それらの条件が整っていれば、ソコが何の意味もない偶然作られた場所だ、とは誰も思う事は出来ず、若干の警戒をしながらも橇の速度を落としてその空き地へと乗り入れて行く。




「何者か!?

 そこで止まれっ!!」




 飛んできた誰何の声に、御者として手綱を握っていたタチアナが橇を反射的に停止させ、全員で声の方向へと視線を送る。


 するとそちらには、木々の間に一本の道が出来ているだけであり、静止の声を掛けて来た者は何処にもいない様にも見えた。



 が、ソレはあくまでも『地上には』と言うだけの話。


 アレス達の視線は揃って仰角を刻んでおり、高く生い茂っている木々の中程から少し上の辺りから生えている枝へと向けられていた。




「…………ほう?

 誘導される事も無く、私に気が付くとは、少しはヤる様だな。

 まぁ、この様な時期に、こうして出歩いている以上は当然、と言うモノなのだろうが。

 しかし、ここがどの様な場所なのか、分かって踏み入ろうとしているのか、分かって訪れているのであろうな?」




 そこには、迷彩の施されたローブをスッポリと被り、僅かに顔の隙間から長い耳の覗かせた人影が、枝に腰掛けた状態にて存在していた。


 その手には引き絞られた弓が握られており、言葉の通りに『この先には行かせてやるつもりは無い』との意思が込められており、アレス達が下手な行動を取ろうモノならば、即座に射掛けて来るつもりなのだろう事は、容易に見て取る事が出来ていた。



 鏃や弓自体に淡い魔力の光を纏っている事から見るに、恐らくは弓をその物が魔道具の類いか、もしくは矢にまで強化の魔法を使用して威力や速度を増した状態となっているのだろう。


 とは言え、彼らとしてはそうして射掛けられたとしても、回避するなり掴み取ってしまうなり、幾らでも対処出来てしまう自信があった為に、特に恐怖心の類いを感じる事も無く、何かしらの勘違いでもされているのだろうか?と首を傾げる事態となっていた。




「…………なぁ、ヒギンズや?

 この国って、入国しようとする輩に対しては弓を向けるのが礼儀、とかなってる蛮族じみた習慣でもあったりするのかね?」



「…………さぁ、どうだろうねぇ?

 オジサンが前に来た時は、歓迎はされてなかったけど、でもここまで露骨に拒否されてる雰囲気は無かったと想うんだけどねぇ〜」



「…………私としましても、風習はともかくとして、ここまで好戦的で他種族や他国を嫌厭している種族では無かった、と記憶しているのですが……。

 取り敢えず、同族たる私が交渉役として前に出ますね」



「頼んだ。

 でも、なにかされそうになったら、どんな手を使ってでも助けるから、そのつもりでな?」



「はい♡」




 アレスに掛けられた言葉により、嬉しそうに微笑みながら一人橇から降りて前へと進み出るセレン。


 そんな彼女の背後では、腰の得物に手を掛け、その上で何時でも魔法を放てる様に術式を隠蔽状態にて構築しているアレスの姿があった。



 彼の行動には、森人族(エルフ)と思われる射手も気付いていないらしく、前へと進み出て来たセレンの方へと注目していた。


 女一人で出て来た、との事もあり、警告の意味合いも兼ねて足下へと一射撃ち込むか、と若干ながら射線を下げようとした時、セレンが耳当てを取ってその長い耳を外気へと露わにし、その上で胸元へとしまっていた冒険者ギルドのタグを引き出して掲げて見せる。




「私は、貴方達の同胞にしてSランク冒険者、パーティー『追放者達(アウトレイジ)』に所属するセレンです!

 後ろに居るのは、私のパーティーメンバーにして、伴侶でもある方々です!

 私達は、この国への入国を求めます!

 返答は如何に!?」




 流石に、半ば鎖国に近い状況の国であったとしても、冒険者ギルドに関して聞いた事も無い、と言う者はいないらしく、そのランクを耳にして木々の間から動揺のざわめきが発せられる。


 先の射手以外も、半ば空き地を包囲する形で森人族の者達が展開していた様子だが、当然の様にアレス達は既にソレに感付いており、万が一警告無しに攻撃されようと対処出来る様に、と構えていたが、その心配はしなくても大丈夫そうだ、と若干ながらも警戒を緩めて行く。



 漏れ聞こえて来る内容には、強要されている様子は無いし丁度良い(?)からこのまま入れてしまえ、と言う意見が強いが、一方で、今は不味い(?)し対処は自分達の手で出来ないのは種族としての恥、として入国を断ろうとする意見が少なくない数出ている様子であった。


 流石に距離が在る上に、表情等はローブによって隠されている為に窺えないので具体的な事は分からないが、どうやら何かしらのトラブルかソレに類するモノが発生しており、ソレの対処を俺達に依頼する代わりに入国を認めるか、もしくは内々でどうにか対処するのだからソレを知られるリスクを避けるべき、として入国を断ろう、としている、といった所であろうか。



 …………ぶっちゃけ、そんな事をするのであれば、冒険者ギルドを通して正式に依頼として手続きを踏んでくれ、とセレンを含んだアレス達はげんなりとした表情を浮かべる。


 地方等では稀にこの様な、滞在を許すのだからこちらの事情を解決しろ、と言った事を強要されたりする事例が在ったりするのだが、ハッキリ言ってそれは不当な交渉、と言うヤツである。



 こちらは金は支払うと言っているし、他の旅人や商人にはソレで応じているのに、冒険者だけはダメ、他の事をしろ。


 流石に、ソレは道理が立たないし、何より余程ソコに泊まらねばならない理由が無い限りは『じゃあ良いですさようなら』となるのが冒険者であるし、ギルドも規約でソレを認めている。



 なので、その手の強要をされる様であれば、セレンには悪いが引き返す事にしよう。


 ハンドサインと目線とで仲間内での意見の統一を図ったアレスは、どうにかして一人離れてしまっているセレンへと伝えようか、と考えていると、木々の間から一人の森人族と思われる人影がこちらの方へと進み出て来る。



 何かしらの意見の統一を見たのだろう、とセレンもアレス達へと合流し、その人物が近寄って来るのを待ち受ける。


 あからさまに警戒している素振りを見せる彼らに対し、特に落胆する様子も見せずに口を開いて見せたその森人族は、声からするに最初に警告を放って来た射手である様であった。




「…………取り敢えず、そこの同胞が『仲間である』と証言した事で、諸君らの入国を認める方向で決定した。

 が、今この国はなか中に厄介な事になっていてな。

 碌な持て成しは出来ないであろうし、何なら何かしらの依頼を出される事すらあるだろうから、ソレは覚悟しておいてくれ。

 それでも良い、と言うのであれば、我らが『星樹国ユグドレミニア』は、諸君らを歓迎しよう」




 その言葉と共に、それまで被りっ放しであったフードを取り、自らの顔を晒して見せる森人族。


 声からして男性であろう、とは分かっていたし、隙間から覗いていた長い耳だとか、姿を露わにしたその丹精な顔立ちだとかから『やはり森人族か』との感想を抱いていたアレス達であったが、ソレが完全に取り払われた時にはそれまでに無い衝撃を受け、視線が彼の顔に集中して離れない事態となっていたしまう。



 …………いや、より正確に言えば、顔、と言うよりもフードから最後に現れた彼の頭部、更に言うのであればその髪型に視線が固定されていた。


 ソコにあったのは、サイドを剃り上げ、スキンヘッドにし、その上で中央部のみを残して長く高く伸ばした髪型、所謂『モヒカン』と呼ばれるソレが、美しい金髪によって形作られていたのであった……。




フードの下から出て来たのは金髪イケメンのモヒカン

誰でも見る(多分)

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― 新着の感想 ―
[一言] モヒカン(笑) あぁ、弓手だと横髪が邪魔だしなぁ。
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