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『追放者達』、宥める

 


 艶めかしい曲線美を誇る魔族(推定)へと、二条の凶刃が迫る。


 ソレを振るうのは小柄な影と、ほぼ子供と言っても良い背丈しか無い影の二つであり、突如として飛び出した為に誰しもが反応する事が出来ずに唖然としていた。



 しかし、そんな事はどうでも良い、と言わんばかりの様子にて、真っ直ぐにお色気過剰な魔族(仮)へと突っ込んで行くタチアナとナタリアの二人。


 その瞳は溢れ出る殺意で真っ赤に染まっており、物理的に相手を八つ裂きにしないと最早自分達は止まる事は無い!と無言の内に物語っていた。



 それなりにあったハズの彼我の距離をあっと言う間に食い潰すと、闇夜に二つの銀閃が閃いて行く。


 普段は前衛として上がる事はほぼ無い二人であったが、だからと言って武器の扱いが出来ない訳でも無く、また幼い頃からスラムにて命のやり取りを嗜んで来たタチアナは、人の意識の隙間や視覚的な死角を利用しての攻撃に慣れているだけでなく、スキルとしても短剣王術にまで至っている事もあり、その鋭さは外見からは想像する事も出来ない域にあった。



 そんな二人によって振るわれる銀閃の向かう先は、当然の様に大きく開かれた胸元であり、今にも零れ落ちそうな程に豊満な双子山であった。


 深く長い谷間を顕にしているそこには、異性を誘惑し視線を誘導する為だけにある様な黒子が一点存在しており、それらを最大限アピールする様な構造となっている衣服は最早『服?』と言った様相を呈しており、下手に動けば即座にはだけてしまうであろう事が見て取れた。



 が、魔族と思われるそのお色気過剰な人物は、艶やかに悲鳴を挙げながらも、それらの攻撃を華麗に回避して見せる。


 闇夜に於いても油を塗布した様に滑らかな感触が伝わって来る様な肌にも、最早衣服としての機能を放棄している様にしか見えない服にも一筋も掠めさせる事をせず、それでいて立ち姿から伝わる色気を損ねる様な事もせず、時にその豊満な胸をわざとらしく跳ねさせて揺らし、時にそのスラリと長くもムッチリとした肉感が伝わって来る様な脚を顕にし、時にやや厚めな唇に舌を這わせながらも笑みを浮かべ、時にその難産とは無縁だと思わせる形の良い臀部をアピールして見せていた。



 それらの素振りの一つ一つが、未だに傍観に徹するしか無く、介入するタイミングを図っていた男性陣に向けられているアピールである、と同じ目線で事を眺めていたセレンは気付いていたし、同様に二人も気付いていた。


 故に、ソレを自分達に対する挑発であり、相手は分かっていた事ではあったが、やはり撃滅するべき怨敵である、と認識を強めると、より強く殺意を漲らせながら刃を振るう速度を増加させ、誰がどう見ても相手を斬り刻んで豚のエサにしてやる、と意気込んでいる勢いにまで昇華されて行く。



 流石に、そこまで行ってしまっては、アレス達男性陣の視線を意識した回避(お遊び)では対応仕切れなくなったのか、未だに妖艶な表情と仕草を見せながらも、今度は真面目に回避を行う魔族。


 タチアナと同じく生えている尻尾だとか、腰の中程から生えている翼だとかの、人には無い器官が当たり判定の範囲を広げており、回避を困難なモノへと変化させている様にも思えるが、当然の様にそれらの部分も含めた身の熟しや動作を範囲を熟知しているらしく、確かな術理の込められた足捌きと体運びを行っている事が見て取れた。



 それだけの技術を修めている者が、攻撃に転ずる動きが出来ないハズが無い。


 現に、幾分か真面目に動くようにはなっているものの、それでも動作にはまだ遊びの余地が残されている様であったし、二人を翻弄している事からもその気になれば何時でも攻勢を仕掛けられるハズであった。



 その為に、アレスはガリアンと一つ目配せすると、二人でその戦いの場へと飛び込んで行くと、ガリアンが魔族との間に割って入り、アレスがタチアナとナタリアの二人を脇に抱えて距離を取る。


 半ば暴走に近しい状態となっていたとは言え、流石に仲間の気配すら忘れて暴れ回っている、と言う様な状態では無かったらしく、多少抵抗をされたものの、無事に捕まえて後退する事に成功し、ソレを目の当たりにしたガリアンも次いで元の位置へと同様に下がって来た。



 それにより、最初に相対した時と立ち位置として同じ物になったが、内心での警戒は天と地程にも差が出来ていた。


 何せ、片や支援術や妨害術によるバフもデバフも使っておらず、片や従魔達を従えての有機的な連携も取ってはいない故に、本気の全力で挑んでいた訳では無いが、それでも二人掛かりで斬り付けても一切の攻撃を受ける事もせず、呼吸を乱す様な素振りも見せずに平然として見せているのだ。



 否応無しに警戒のレベルが上昇し、殺気立ちながら一挙手一投足に凝視する様な対応になったとしても、致し方無い事だと言えるだろう。


 が、そうして警戒を顕にしている彼らの姿を見て、取り敢えずまた仕掛けて来る様子は見えない、と判断したのか、腰よりも長く伸びている髪を払いつつ、まるでかいた様子の見えない汗を拭う様な仕草を見せながら、彼らの目の前の存在は口を開いて言葉を紡ぎ始めて行く。




「はぁ、もぅ、びっくりしちゃったわぁ。

 いきなり斬り掛かって来るんだもの、流石にお姉さんでもちょっと焦っちゃったわよ?

 幾らワタシが魅力的だからって、いきなり襲い掛かって来るだなんて、おチビちゃん達ワ・ル・イ・コ♡」



「………………ねぇ、やっぱりアイツぶっ殺しても良いわよね?

 完全に潜り込んでマウント取って挑発し腐ってくれてるんだけど?」



「アイツは、殺らなくてはならないのです!

 コレは、ボク達の尊厳の為にも、あのデカ乳をもぎ取って泣き土下座させなくてはならないのです!

 だから、は〜な〜す〜の〜で〜す〜!!!」



「はいはい、君等が入ってくると話が拗れて先進まないんだから、後でね。

 …………さて、取り敢えず形式美として一応尋ねるけど、今回の騒動の発端にして、この国に侵略を仕掛けていた魔族ってアンタさんで間違いなかったか?

 そうでないと、アンタ以外にもまだ倒さなくちゃならない敵が増える、って事になるんだけど?」



「あらぁ〜?

 もしかして、ボウヤお姉さんに勝てるつもりでいるのかしらぁ?

 さっきのアレ、見てなかったの?

 ワタシ、結構強いんだけどなぁ~」



「質問には、是非とも答えて貰いたいのである。

 無関係を主張するのであれば、疾く立ち去る事を勧めよう。その際には、追わぬと約束するのである。

 が、そうでないのならば、当方等は契約と信義に基づき、そなたを討ち取らねばならぬ故な。

 返答は、早い方が互いの為であるぞ?」



「あらあらぁ?

 もぅ、ソコのボウヤだけじゃなく、そっちの毛むくじゃらの子までそんな固いこと言っちゃうのぉ?

 お姉さん、悲しいわぁ〜。

 …………でも、そうやって問われた以上、応えない事には魔族が、女が廃る、ってモノよねぇ。

 良いわ、名乗って上げる。

 でも、どうせ大方の見当は付いてるんでしょう?」



「えぇ、まぁ。

 と言うよりも、ここまで大規模な事をしでかした相手が、実は特に役職も無い様な戦力その一でした、と言われる方が衝撃が大きいですし、ね?」



「そもそも、事を動かした能力の規模を鑑みればぁ、君がどの程度の地位に在るのか、なんて簡単に分かりそうなモノだとオジサン思うけどねぇ?」



「…………あら、なかなか良い男。

 じゃ、そこまで期待されちゃったのなら、お姉さんも張り切って自己紹介しちゃおうかしら!

 …………ワタシはテンツィア。

 テンツィア=フラットウェル。

 偉大なる魔王さまの意思に共感する者にして、彼の方から魔王軍六魔将の一席を預かっている者よ。

 短い付き合いになるとは思うけど、よろしくね♡」




 そんな言葉と共に放たれたウインクは、ふざけた仕草とは裏腹にとても様になっており、思わず見惚れるような心持ちにさせられる事になるのであった……。




漸く3周目終了

後はオールSランクだけ(ここからが修羅の道)

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