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『追放者達』、殺気立つ

ブックマーク等にて応援して下さった方々に感謝です(^^)


日刊総合にランクインしていた、だと!!( ; ロ)゜ ゜

 


 名も無き(名乗ったが聞き届けて貰えなかった)哀れな警備兵が放った言葉と視線によって、通用門の周辺の空気が凍り付く。


 元々、積雪が嵩んでだけでなく、季節的にも気温はとても低い状態となっていたのだが、ソレに加えて物理的に凍り付きそうな程の冷気を肌に感じる様な、そんな空間が唐突に産み出される事となっていた。



 当然の様に、まだ日が高く、それでいて人通りも当たり前の様に多い通用門にてそんな事が唐突に発生すれば、間違いなく混乱が生じる事となる。


 が、幸いにして季節が冬季であり、通常であれば並み以上に活気が在って然るべきその場所も、今は閑散としていて一般人が混乱に巻き込まれて被害が出る、と言う最悪の事態には辛うじてなっていなかった。



 なってはいなかったが、そんな現象を間近で産み出された警備兵は、極寒、と評しても過言では無いであろう環境下に在りながらも、文字通りに顔を青ざめさせつつだらだらと冷や汗を垂れ流し、自身に向けて鋭い眼光を向けて来ている『追放者達(アウトレイジ)』のメンバーへと驚愕と怯えと混乱と困惑とが多大に入り交じった視線を向けて行く。




 …………通常であれば、守られる側の存在であり、かつ意図的に『ソレ』を向けられる側に居ないハズの自身に向けて何故『ソレ』が放たれているのか?


 何故、善良な一市民であり、別段盗賊の様な賞金が掛けられている訳でも無く、直前まで和やか、とまでは行かないまでもそこまで険悪でも無かったハズなのに、こんな事態になっているのか?


 そもそも、なんで自身に向けて殺意を剥き出しにし、今にも飛び掛からんとしている従魔を抑えようともせず、寧ろ得物を抜き放って攻撃せんとしている様な態勢で止まっているのか…………?




 そう言った彼の内心がアリアリと浮かぶ表情は、彼の目前にて微動だにしない『追放者達』から発せられる明確な殺気によって恐怖に染め上げられていた。


 通常であれば、彼も考えていた通りに、ただの一般人が高位にまで至った冒険者、しかも『Sランク』と言う最早人の枠組みからも大なり小なり外れつつある超人達から、明確な意思を以て殺気を向けられる事なんて有り得ないが為に、こうなるのも仕方の無い事だ、と言えばそうなるのだろう。



 とは言え、ソレは彼の言動に全く以て非が無い場合、の話である。


 彼は、彼らの目の前にて、特大の地雷を自ら踏み抜いて見せたのだから。




「…………貴様、今、何と言った……?」



「…………え、え?はぁ……?」




 食い縛り剥き出しとなった牙の隙間から、唸り声と共にガリアンが言葉を吐き出す。


 不自然に固定された姿勢は完全に前傾姿勢となっており、腰の斧へと伸びた手は確りと柄を握り締めているだけでなく、殺意と共に何時爆発して飛び掛かっても不思議では無いであろう雰囲気を醸し出しながら、少しずつではあったものの前へと進んで距離を詰めようとしていた。


 そして、そう言った傾向は二人を除いたメンバー全員に発生しており、従魔達も牙を剥き出しにして今にも飛び出さんとしている様に四肢に力を込めていた。



 そんな光景を目の前で繰り広げられてしまっただけでなく、直接的に殺気まで浴びせられる事となっていた警備兵は言葉を失っていたが、ガリアンから問われた事と、彼らの足が不思議と前へと出ようとしているのに出られていない、と言う状態から余裕を取り戻したのか、声を震わせながらではあったものの再び言葉を吐き出して行く。




「…………は、はぁ!?

 何を言った、ってそりゃ、当たり前の事を当たり前に言っただけだろうがよ!?

 あんたらだって、知ってるだろう!?そいつは、本当に役立たずで、使えないゴミクズ野郎だって!!

 もし知らなかったのなら教えてやるけど、何度も何度も、実力も無いのに上位の冒険者である『連理の翼』の二人付きまとって、その癖して当の二人は無傷で依頼をこなして来てるのに、そこの雑魚だけボロボロになって二人に迷惑掛けながら戻って来た、なんて事も数え切れない位あった事なんだからな!?

 そんなカスが暫く居なくなったと思ったら、こうして偽造したギルドカード片手に戻って来やがったんだなら、嫌味の一つや二つ溢して何が悪いって言うんだよ!?!?」




 最初こそ途切れ途切れではあったものの、途中から自身が置かれている環境が『理不尽な思い違いによるモノである』と認識したらしく、口調はより強くより滑らかなモノへと変化して行った。


 ソレを無言のままにて『追放者達』のメンバー達が聞いていた為に、本人は自身の主張が彼らに認められつつある、と勘違いしたらしく、大袈裟に身振り手振りを加えながら言葉を続け、最終的に彼らの背後にて一人腕を組ながら無言で立っていたアレスへと指差しながらセリフを締め括ろうとする。




「ほら、そうやって言い返さない、って事は何かしらの心当たりでも在るんだろう!?

 なら、さっさとそんな役立たずの無能なんて追放して、他に有能な奴を仲間にするべきなんじゃないのか!?

 あんたらなら、そいつのじゃまさえ無ければ『英雄』の称号だって手が届く範囲に在るんだろう!?

 だったら、そんな役立たずなんてさっさとすてて、もっと有能な奴を、それこそ俺みたいな将来有望なルーキーを勧誘するべ「もう、良い」……き?」





「…………もう、良い。

 貴様、ソレ以上、口を開くな……!!!」






 が、結局の処としては、セリフを言い切るよりも先にガリアンの放つ一言によって遮られ、最後の最後まで悪足掻きとして行われていた自身の売り込みも、彼の放った言葉と視線の鋭さによって無駄に終わったのだ、と言う事を無理矢理に悟らされる事となった。


 おまけに、それまでは良く良く観察しているか、もしくはそこだけに注視しているかしないと分からなかったであろう程に少しずつ動いていたハズの彼の身体が、端から見ていてもゆっくりとではあっても前へと出ようと動いているのが分かる程度には、動作が大きくなりつつあった。



 分厚い防寒着を着込み、その上から全身鎧を纏っているにも関わらず、身体の大きさが一回りも大きくなっている様にも見える程に全身の筋肉を隆起させ、殺意を漲らせながら前へと踏み出そうとしているガリアン。


 その背後にて、先程の姿勢よりも組んでいたハズの腕が外れそうになっている様な、不自然な状態にて顔をしかめつつ、足下を踏ん張っていたアレスが、ここに来て漸くその口を開いて行く。




「おい、ガリアン!

 流石に、そこまでだ!

 俺の為なんかにそこまでキレてくれるのは正直嬉しいがな、ソレ以上はもう洒落にならんぞ!

 いい加減、止まれ!この、馬鹿力!!」



「…………済まぬな、リーダー。

 流石に、ここまで『大事な仲間』を虚仮にされては、当方の矜持として黙っている訳には行かぬのだ。

 この愚か者は、ここで処す。それは、確定事項であるが故に、止めてくれるな!」



「……………あぁ、もうっ!

 一々、こんな程度の馬鹿に構っていたら切りがないんだから、この程度軽く流しておけって!

 それと、そこで一人『私関係ありません』みたいな顔してるオッサン!あんたも、止めるの手伝えよ!?

 あんただけ、俺の糸回避して、縛から逃れてるのを俺が分かっていないとでも思ってるのか!?」



「………ん~?

 そうだねぇ~オジサンとしては、どっちかって言うとガリアン君の側に立っていたい心情なんだけど、取り敢えずリーダーの命令なんだから、止めるだけは止めてあげよっかぁ~。

 …………でも、後でちゃんと、オジサンにも納得出来る様な説明はして貰うつもりだから、その辺はよろしくね……?」




 そう言って一人自由に動き始めたヒギンズは、未だにゆっくりと動きつつあったガリアンの方へと、その口元へと笑みを浮かべながら歩み寄って行く。


 しかし、その金色の瞳は縦に長く切れており、『龍人族(ドラゴニア)』が自身の逆鱗に触れられた際に発する怒気と同等の感情を孕んでいる事を如実に伝えて来ていた。



 それらの光景を、自らが『無能』として罵声を浴びせていた対象が、自身では逆立ちしても一矢報いる事すら出来なかったであろう存在を相手にしながらも、下手に出る事すらもせずに指示を出し、しかもソレを出された相手が取り敢えずは呑み込んで従っている、と言う光景を目の当たりにした警備兵は、今更ながらに自身のやらかした事態の重大さを悟ると同時に、その場に腰を抜かしてへたりこみ、床と衣服を自らによって汚して行くのであった……。



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