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『追放者達』、調査を開始する

 


 斯くして依頼を引き受ける事となった『追放者達(アウトレイジ)』一行は、調査を始めるにしても先ずは腰を落ち着かせてから、と言う事もあり、用意されていた宿へと移動する。


 その宿は、首都でもあるセントユーディズの中心地付近に建てられたモノであり、それなり以上の高級宿としても知られているらしく、通常はかなり前から予約を入れるか、もしくは他国の重要人物でも饗す時位にしか入る事すらも難しい状態となっているのだとか。



 だが、今回は国そのものの存続に関わりかねない事柄の依頼である為になる、教皇グレゴリオが自らの名前と権力を動員してほぼ無期での部屋の確保に至ったのだそうだ。


 なお、継続して案内役兼護衛兼連絡役として付く事となったセシリアの住居はその宿に程近い場所に構えられているらしく、主本人やメンバーから『そっちで良いのでは?』との意見も出たのだが、セシリア本人が他人を饗す事に対しての技量がそこまで高い訳では無く、また住居の維持管理に関しても人を雇って行っている為に、情報の拡散や敵の手の侵入を防ぐ為にも宿を取る方が良い、との結論に至ったのだ。



 それに、下手をすればサンクタム聖王国へと攻撃を仕掛けて来ている、と推測されている魔族からの攻撃を受ける可能性すら在るのだ。


 ある程度ならば、料金の嵩増しにてどうにでも対応して、かつプロの仕事として口も固くサービスも最上級、といった宿の方が、公的な立場がある人物の家であり、かつある程度信用も置けるとは言え口に戸を建てられる様な相手とは言えない使用人を抱えているセシリアの所よりは、まだ後腐れも無く面倒も無いだろう、との意見が出たのも後押しになった可能性は否定出来ないが。



 そうして、確保されていた一室へと腰を下ろした一同は、部屋の中を落ち着かなさそうに嗅ぎ回って臭いを確認している従魔達の姿にホッコリしながらも、半ばを過ぎてもなおしつこく残り続ける冬季の寒気に抗うべく暖炉へと火を入れてから、中央付近に据えられていたテーブルへと着席した。


 アレス達六名に加えてセシリアも含めた七名となっていた為に、多少バランスの悪い席割りとなってしまっていたが、別段合コンの類いを開くべく集まっている訳でも無いので特に気にする者も無く、至極スムーズに議論が開始される事となった。




「…………さて、こうして一応依頼を引き受ける事となった訳だが、取り敢えず何から調べるべきだ?

 と言うよりも、何をどうすれば良いんだ?この件。

 どうなれば、解決した、って判定になるんだ?」



「…………まぁ、国の危機、って事で流石に『Sランク』としても、オジサン個人としても、この依頼は避けられなかったとは思うけど、それでももう少し具体的なゴールについては話しておきたかったかもねぇ。

 操られている原因を特定すれば良いのか、洗脳を解除しないと駄目なのか、それともソレをやってる魔族を倒さなきゃならないのか、ねぇ〜」



「操られている、と見做されている方々を元に戻す、と言うだけでしたら、私が出向けばそれで終わるかも知れませんが、その後も同様の事態に最早ならない、とは保証出来かねます。

 それに、魔族を打倒しろ、と言われましても……」



「うむ、ほぼ不可能であろうな。

 そも、当方等とて、確かに今まで幾度か魔族を名乗る存在と交戦し、生還する事に成功しているが、あくまでも『戦闘経験が在る』と言うだけの話である。

 あちらが期待している様な『魔族を撃破した経験』は無いに等しく、そもかつてのアレコレとて勝利したとはとても言えぬであろうな……」



「と言うか、今の所、アタシ達が遭遇した事のある魔族って、確か向こう側の幹部級の連中だったわよね?

 それだけで、後から考えたら『ナニソレふざけてるの?』ってレベルの運の無さだけど、今回の相手の能力を考えたらそのレベルでないと説明出来ないとアタシは思うんだよねぇ」



「なのです!

 と言うよりも、そんな事が出来るだけの能力を持っている様な相手が、幹部級でも無いただの雑兵の一人でした、とかは流石に悪夢が過ぎるのですよ!

 ぶっちゃけ、『スキル』なのかそうでないのかは置いておくとしても、そんな戦力の持ち主がゴロゴロ居る可能性の在る魔王軍に、過去どうやって打ち勝ったのか理解出来ないのはボクだけなのです?」



「…………あの、皆様?

 ほぼ部外者の妾が言うのもアレですけど、ちょっと悲観的に過ぎるのではないでしょうか?

 対魔族の戦闘が予測されているとは言っても、教皇猊下の予測では単独であるハズですので、皆様のお力ならばどうにでも出来るのではないでしょうか?」



「…………俺達は、過去に三度魔族と対峙した事が在る。

 一度は、何も出来ずに撤退された。

 一度は、二体同時に交戦して、片方には判定勝ち、片方には判定負けして向こうが引いた。

 一度は、圧倒的な敵との戦闘に介入されて、結果的には寧ろ助けられた形になった。

 さて、それらの結果を前にして、さっきの通りに『俺達ならどうにでも出来るハズだ!』って本当に言えます?

 随分と、意地の悪い発言をしている自覚はありますけど、ね?」



「………………」




 アレスの口から飛び出た戦歴により、セシリアは沈黙を余儀なくされる。


 通常、冒険者であればそのランクを問わずに戦歴を盛る傾向に在るのだが、そんな彼らをしてそこまでボロボロな戦果を披露する、と言う事がどんな意味を持つのかを理解出来ない程に、彼女は人の心情に疎くは無かったと見ても良いのだろう。



 とは言え、これから彼らが行おうとしている事柄を鑑みれば、必然的に必要となる事ばかり。


 初戦はそもそも相手に戦うつもりも力も自称ではあったが欠片も無かったが故に交戦せず、その上で用意されていた戦力を助力込みとは言え倒せたので実質勝ちと言えなくは無い。



 が、次戦では上手く追撃できていれば魔族の一角を落とす事も出来ていたかも知れないが、同時に仲間を失っていた公算が高い。


 おまけに、三戦目ではそもそも戦闘に到れる程に力量が近い所に在ってはくれず、それどころか結果的にとは言え、ダンジョンマスターから彼らの命を救う行動まで示されてしまっているのだから、最早戦う云々の以前に完敗を期している状態であると言ってしまって間違いは無いだろう。



 そんな力量の持ち主達と、同格かソレに近しい立場に在る、と思われる魔族に対して真っ向から喧嘩を売る。


 能力の傾向やら何やらは異なるとは言え、正直な話をすれば勝算としては限り無く低い戦いとなるのは間違い無い。



 …………だが、勝率が低いから、と寄せられた依頼を蹴る様な者は、この場には存在していない。


 そもそも、そう言った類いの『勝機が見えないなら依頼は受けないし逃げ出す』との考えを持つ様な連中は、彼らの今居る『高み(Sランク)』へと至る事は出来ないし、そもそもソレを目指そうとは思えないだろう。



 故に、彼らはこの難事から逃げ出す様な事は決してしない。


 それが出来る立場に無い、と言うのもそうなのだろうが、やはり一度は受けた依頼を、努力の末に失敗した、と言うのならばまだしも何もせずに逃げ出す様な真似は流石に出来ないししたくは無い、と言うのが彼らの共通認識であったのだ。



 そんな訳で、彼らの会話は続けられて行き、為すべき事、為さなければならない事、が纏められて行く事となる。


 先ずは現状の確認、そして洗脳(と思われる状態)の解除が可能かどうか、といった情報の収集、最後に脅威たる魔族の撃退、または撃破、と言う事が決定した為に、この日は一旦解散となり、それぞれの部屋へと散らばって行く事になるのであった……。




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