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『追放者達』、暗殺者の古巣に踏み入れる

ハイファンランキング四十位、だと……!?( ; ロ)゜ ゜


応援、ありがとうございます!m(_ _)m

 


 アレスとヒギンズの説得(?)によりセレンとナタリアが意見を変えた事により、結局アルゴーへと立ち寄る事に決定した『追放者達(アウトレイジ)』。


 未だに反対派として意見を翻してはいないガリアンとタチアナは不満そうに見えるが、その不満もかつてこの都市を拠点として活動していた過去を持つアレスの事を思ってのモノである、と誰もが理解している為に、特に文句の類いが出される事無く待機していた場所から出発し、アルゴーの外壁に備えられた通用門へと向かって移動を開始する。



 一応、申請上では『魔物』では無く『その他の動物』として為されているナタリアの従魔達には不自由を強いる事になってしまうが、本来の姿(巨体)から偽装時の姿(平均的な大きさ)へと縮んで貰って橇へと繋ぎ直し、メンバーの内の何人かは降りて自前の足にて歩いて門へと向かって行った。


 その為、普段よりも多少時間が掛かる事になりはしたが、そのお陰で街へと入るのに不審がられる時間帯から外れる事も出来ていたので、結果的には悪くは無かった、と言っても良いだろう。



 とは言え、あからさまに武装している一団が、普通であればあまり往来しない様なタイミングにて赴いて来て、ソレがあまり見覚えも無い集団である、と言う事であれば流石に職務上止めない訳には行かないらしく、通用門に常駐している警備兵によって呼び止められ、身分証の提示を求められる事となる。


 通常、平時(冬季以外)であれば、その様な状況下にあったとしても、依頼を受けてきた冒険者の類いだろう、と言う事で呼び止めもしないのだが、状況が状況だけに、一応でも呼び止めて確認しておかないとならない、と言う事なのだろう。




「じゃあ、取り敢えず身分証の類いを出して貰えるか?

 拒否する様であれば、悪いが入るのを拒否させて貰う事になるがな」




 尤も、そうして職務に忠実な者が、同時に職務に対して真摯に向き合い、また愛して積極的に行おうとしている者である、と言う訳でも無かったらしく、彼らに対応している警備兵はその表情を忌々しそうに歪めていた。


 …………まぁ、確かに、周囲を溶けない雪によって閉ざされる様な環境で、かつ『極寒』と評しても間違いでは無い程の気温に晒される事が確定している様なタイミングでの来訪を、暖炉が焚かれた暖かな警備所から出て対応しなくてはならない、となれば否応なしにそう言う態度になろうと言うモノかもしれないが。



 だが、だからと言ってその様な対応をされた者が快く思うハズも無く、比較的気の短いタチアナだけでなく、元々の気質が温厚なセレンや当たりの柔らかなヒギンズですらその口元やこめかみをひきつらせたりしていた。


 その為、と言う訳でも無いのだろうが、あくまでもアルカンターラの市民証を出せば良いだけの状況であったにも関わらず、敢えて揃って『Sランク』の刻まれたギルドカードとパーティータグを提示して見せた。




「…………え?はぁ!?

 揃いも揃って、『Sランク』冒険者!?!?」




 目の前に突き付けられた事実に驚愕する警備兵。


 とは言え、それもある意味『当然』と言えるであろう反応だろう。



 何せ、世間一般的には既に『Bランク』にて『一流』と呼ばれるだけの実力が備わっている、と言われている中で、その上である『Aランク』は言わば『超一流』の証であり、ほんの一握りの実力者にのみ許された称号。


 更にその上の存在であり、収得の困難さと実数の少なさから『Sランク』の保持者が最早『幻の存在』染みた扱いを受ける事になるのは、半ば当然とも言えるのだ。



 更に更に言うのであれば、基本的に『Sランク』まで行ってしまった冒険者はどの国であれその身分の扱いとしては貴族のソレか、もしくはソレに準ずるモノとなるのが通例であり、ここカンタレラ王国でも同じ事である。


 故に、今の今まで自分が、相手が『貴族(そう)』だとは知らなかった上に『季節外れな行動(お忍びでの移動)』を選んでいたとは言え、そう言った立場の相手にぞんざいな扱いをしていた、と言う事に気付き、今更になって顔を青ざめさせている、と言う訳なのだ。



 そんな警備兵を前にして、特に対応を変える事はせず、さっさと仕事を済ませてくれ、と無言で促す『追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達。


 自分達が『Sランク』だと明かしたからと言って偉ぶる訳でも、それまでの対応に対しての謝罪を求める訳でも無いその振る舞いは、別段彼らが慈悲深くて寛大な心で彼を許したが故に行動である…………と言う訳では()()()()



 ただ単に、相手も仕事であるが故に対応せざるを得ない状況であった、と言う事に対する理解と、それはそれとして不愉快である為にさっさとやること終わらせてこの場から離れてしまいたい、と言う願望の現れであった。


 現に、彼らは表面上大人しく手続きが終わるのを待っている素振りを見せているが、その目付きは鋭いままであり、一人を除いて利き腕を各自の得物へと掛けている状態となったままであった。



 半ば臨戦態勢に近しい状態となっている彼らの現状に気が付いていないのか、それともそれまでの扱いを抗議して来る気配が無かったからかは不明だが、一時の動揺から回復したらしい警備兵は口元を緩め、顔を上気させながらペラペラと口を回し始める。


 それこそ、聞いてもいないのに自分の名前だとか、所属している部隊だとか、得意な事だとかを仕事の手を止めた状態にてさも自慢気に語り始めていたのだ。



 問い掛けてもいないのに語られるそれらを、当然の様に聞き流して行く『追放者達』。


 一応、自分達が滅多にお目にかかる事が出来ない類いの人間となってしまっている、と言う自覚はあり、その為に似たような絡み方をされた際には多少であれはちゃんと付き合って上げる事を心掛けていたセレンやヒギンズですら右から左に言葉を聞き流し、自らの爪の垢の詰まり具合を確認したり、ささくれを取ってしまおうとしたり、じゃれて来る従魔達を構って上げたりし始めていた。



 流石に、そこまでぞんざいな扱いをされていたら、所謂『有名人に出会って思わず夢中になっていた』状態だった警備兵(結局名前も聞き流していた為に知らない)が、若干ながらも気まずそうにしながら手続きを再開し始める。


 渡されているギルドカードやパーティータグを確認し、そこに書かれている氏名や所属地等を手元の書類に記入して行くその手付きは、流石は本職の人間か、と言った手慣れた感じを醸し出していた。



 そうして、漸く本来の手続きが始まり、それぞれが持ち込んでいる武装だとか、ナタリアが連れている従魔達についてだとかの質問が為され、一人一人着実に必要な処理が終えられて行く。


 そして、メンバー六名の内で五人までが終了し、最後の一人としてアレスの番が回って来たその際に、ソレは起こったのであった……。







「…………はい、それでは最後になりますが、お名前は……アレス、様?

 姓は無し、でただの『アレス』……?

 ……お前、もしかしてあのアレスか?『連理の翼』に付いて回ってた、無能で役立たずなあのアレスか!

 なんでそんなゴミが、Sランクなんて名乗ってやがるんだ?また、彼女達みたいに寄生でもし腐りやがったか??」








 その言葉を放った警備兵の視線には、隠し様の無い侮蔑と嘲笑の色が込められていた。


 そして、その言葉が放たれると同時に、通用門周辺の空気は一気に凍り付く事となるのであった……。



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[良い点] 自ら地雷原に突っ込んでいくスタイル、嫌いじゃないぜ!(・ω・)b [一言] 盛大もチクチクも、どっちもイケますw
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