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怒涛の学園見学

 事件の次の日に、吹雪たちは学園の見学に来ていた。吹雪はその圧倒的に大きな学園の大きさに圧倒される。さすが中高一貫なだけあって、吹雪達が通う中学校の3倍ほどの大きさだ。

 昨日泊まった寮も1人に一室与えられていたりと、かなり豪快だったが、やはりこの学園はかなりの投資をしているのだろう。


 隣では音月が同じく学園の大きさに感動しているようだ。2人は田舎者ということもあり、こんな大きな建造物を生まれて初めて見たのだ。

 周りの仮新入生たちは次々に学園見学をし始めている。この学園は見学は個人の自由でいいらしく、現在は吹雪たちは自由行動だ。


「ね、お兄ちゃん!! 早く行こうよ!!」


「あ、うん」


 吹雪は音月に腕を引っ張れられるがままに学園の敷地内に入っていく。その時、吹雪は鮮やかな青髪を視界の端に見つけ、吹雪は身を隠そうと咄嗟に音月の背中に隠れる。

 青髪の男は周りの他の見学生たちを避けることもせずに、肩でぶつかりながら、ずんずんと道の真ん中を歩いていく。顔は見えないが恐らく昨日のヤンキーでほぼ間違いはないだろう。


 昨日連れていた取り巻きも後ろに引き連れている。取り巻きは周りの見学生たちに睨みを聴かせながら、まるで虎の威をかる狐同然である。どうやら2人とも昨日の炎魔法の怪我は大したことないらしい。

 吹雪は心の中でホッとする。いくらあんな奴らとはいえ大怪我を負わせれば吹雪にだって、罪悪感ぐらいは残る。


(まぁ、この魔法主義の現代において怪我なんて回復魔法ですぐ治っちまうんだけどな)


昔は怪我をすると病院というところに行って、相応の手術や手当を受けたらしいが、現在は回復魔法一つで怪我の治療が事足りる。

 回復魔法でも治すことができない大怪我や病気の時のみに患者は魔法病院に行くぐらいだ。

 魔法病院とはその名の通り、病院が廃止されたあとにできた魔法による治療を行うところだ。



 突然背後に隠れこそこそし出した吹雪を音月は不思議そうに見る。音月からすれば、意味がわからないのも仕方がないことだろう。


「どうしたの、お兄ちゃん? あの男の人がそんなに気になるの? 殴ってこようか?」


「いや、なんでもないよ。 ほら、早く行こうぜ」


 吹雪は心の焦りを隠しながらも、笑顔で怖いことを言ってみせる音月の背中を両腕で押して青髪の男の反対の方向に足を速める。


(あいつ、同じ学園だったのかよ。 どうか入学しませんように……)


 あくまでもこれは学園見学であり、入学生というわけではない。それにあいつは昨日魔法警察に捕まったので入学に特別不利のはずだ。

 吹雪は出来るだけそいつらとは会わないように心の中で祈る。


 (どうかこの学園生活が穏やかなものとなりますように)

 

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