三講:どのようなあらすじを書くべきか?:1
先述したとおり、あらすじを読んだ読者に本文の冒頭を読ませれば勝ちである。あらすじの目的は常にこれが基本。
今回はその文字数や段落の字下げなどの話について、次回は文章の内容について書いて講義を終える予定だ。
さて前講で書いたように重要度の高いあらすじの表記される場所において、Twitterカードでは冒頭100文字まで、目次では冒頭300文字で折りたたまれることに留意。
あらすじの長さがそれ以上であっても構わないが、それまでに読者に面白そうと思わせる、読みたくさせることを意識すべきである。
つまり注意書きや実績などは後回しにすべきだ。
Twitterカードの表示が、
『作者は初心者で、設定はゆるふわです、感想はお手柔らかにお願いします。10000PV突破!ブックマーク100件突破!読者のみなさまに感謝いたします!これからも応援よろしくお願いします! 主人公のテサシ…』
だったとして誰が読みたくなると言うのかね?
注意書きは短く、またあらすじの後に書くこと。
書籍化などに関しては、【〇〇ノベルより書籍化!】などとあらすじの冒頭に書いても良いと思う。やはり書籍化は興味を持たれやすい事象なのだから。
あらすじの長さはなろうの仕様では10文字以上1000文字以内ということになっている。
ただ、上記の理由により300字以内で面白そうと思わせるべきなので、あまり長く書くとその案件が満たせない。
するとあらすじ本文はそもそも折りたたまれないように300字に収めるか、長くとも400字程度。注意書きや実績等をその後にプラスするかどうかということになるため、全体としては500字に収まるくらいまでが理想的ではなかろうか。
先述の『テサシア』のあらすじで本文250字、全体350字程度。もう少し長くても良かったかとは思うが、日間一位とESN大賞の件が300字にちょうど見えるようになっているというデザインなので、これはこれで良いと考えている。
またランキング・検索・Twitterカードではあらすじが段落なしで表記されることも意識すべきだ。極端な話にはなるが、あらすじに縦読みネタを仕込んでも意味はない。
ここで、あらすじに段落の字下げを行う必要があるかどうかというのが関わってくる。
前回も書いたテサシアのあらすじをもう一度表示する。
テサシアあらすじ
――はぁ、今日もルートヴィッヒ様がステキで幸せだわ。
テサシア・ノーザランは、王都の学園に通う辺境の男爵家令嬢。
吹けば飛ぶような田舎貴族の娘として、学園で形成される高位貴族や聖女たちの派閥とは全力で関わらないように、息を潜めてモブとして過ごしている。
そんな彼女の人生の潤いはアーべライン侯爵家令息のルートヴィッヒ様。
銀髪に眼鏡の怜悧な貴公子をそっと陰から眺めることを至上の喜びとしている。
――無論、話し掛けるなどというような真似をするはずもなかったのだけど……!
なぜか距離を詰めてくる推しに翻弄されるモブ令嬢のお話。
日間総合ランキング1位達成。
第三回ESN大賞奨励賞の受賞により書籍化が決定いたしました。こちら中編ですが大幅加筆いたしますのでいずれそちらもよろしくお願いいたします。
みなさんの応援に感謝です!
これを仮に字下げなしにしてみよう。
――はぁ、今日もルートヴィッヒ様がステキで幸せだわ。
テサシア・ノーザランは、王都の学園に通う辺境の男爵家令嬢。
吹けば飛ぶような田舎貴族の娘として、学園で形成される高位貴族や聖女たちの派閥とは全力で関わらないように、息を潜めてモブとして過ごしている。
そんな彼女の人生の潤いはアーべライン侯爵家令息のルートヴィッヒ様。
銀髪に眼鏡の怜悧な貴公子をそっと陰から眺めることを至上の喜びとしている。
――無論、話し掛けるなどというような真似をするはずもなかったのだけど……!
なぜか距離を詰めてくる推しに翻弄されるモブ令嬢のお話。
日間総合ランキング1位達成。
第三回ESN大賞奨励賞の受賞により書籍化が決定いたしました。こちら中編ですが大幅加筆いたしますのでいずれそちらもよろしくお願いいたします。
みなさんの応援に感謝です!
どうだろうか?
そこまで違いがあるとは思わないかな。ただ、これが段落なし表示となると、字下げありだとこう。
――はぁ、今日もルートヴィッヒ様がステキで幸せだわ。 テサシア・ノーザランは、王都の学園に通う辺境の男爵家令嬢。 吹けば飛ぶような田舎貴族の娘として、学園で形成される高位貴族や聖女たちの派閥とは全力で関わらないように、息を潜めてモブとして過ごしている。 そんな彼女の人生の潤いはアーべライン侯爵家令息のルートヴィッヒ様。 銀髪に眼鏡の怜悧な貴公子をそっと陰から眺めることを至上の喜びとしている。――無論、話し掛けるなどというような真似をするはずもなかったのだけど……! なぜか距離を詰めてくる推しに翻弄されるモブ令嬢のお話。 日間総合ランキング1位達成。 第三回ESN大賞奨励賞の受賞により書籍化が決定いたしました。こちら中編ですが大幅加筆いたしますのでいずれそちらもよろしくお願いいたします。 みなさんの応援に感謝です!
こちらが段落なし表示、字下げなし。
――はぁ、今日もルートヴィッヒ様がステキで幸せだわ。テサシア・ノーザランは、王都の学園に通う辺境の男爵家令嬢。吹けば飛ぶような田舎貴族の娘として、学園で形成される高位貴族や聖女たちの派閥とは全力で関わらないように、息を潜めてモブとして過ごしている。そんな彼女の人生の潤いはアーべライン侯爵家令息のルートヴィッヒ様。銀髪に眼鏡の怜悧な貴公子をそっと陰から眺めることを至上の喜びとしている。――無論、話し掛けるなどというような真似をするはずもなかったのだけど……!なぜか距離を詰めてくる推しに翻弄されるモブ令嬢のお話。日間総合ランキング1位達成。第三回ESN大賞奨励賞の受賞により書籍化が決定いたしました。こちら中編ですが大幅加筆いたしますのでいずれそちらもよろしくお願いいたします。みなさんの応援に感謝です!
お分かりいただけるだろうか。
テサシアのあらすじは三人称視点のものであるが、一人称的な独白が挿入されている。
この好みは読者によってあるかと思うが、段落なし表示で字下げなしにした場合、その境界が混ざってしまって分からなくなることを。
たとえそれがなくとも下の文は上と比較して詰まっているように見えるのは間違いない。
それを考えると段落の字下げは行うべきと考えられる。
話が前後してしまうが再度あらすじの長さに関して。
300字で折りたたまれることを抜きに考えてもあまり長いあらすじは読者に拒否感を覚えさせやすいのでそこは意識すべきである。
例えばランキングを眺めたときにあらすじが1000文字みっちりと詰まっている作品があったとして、一般論としては敬遠されやすい。
もちろん実験や統計を取っている訳ではないが、根拠はある。
書籍、特にエンターテインメントの書籍の背表紙に書かれるあらすじは文庫本だろうと新書だろうと概ね200字〜250字程度にしかならないからだ。
もしあらすじの文字数が多い方がより価値があると言うなら、文庫より紙の大きい新書ではあらすじがより長くならなくてはならないはずだが、無論そのようなことはない。
ではあらすじは200字程度の方が良いのか?
それで十分な内容であれば構わない。ただ個人的な見解を言うと、ライトノベルなどは表紙のイラストから読者は情報を得ることができる。
例えば女性向け恋愛物であれば主人公の女性とヒーローの男性の容姿や、服飾から現代なのか異世界なのか、平民なのか貴族なのかなどある程度想像がつくだろう。
一方でそれがないなろうのあらすじにおいては、文章量がもう少し伸びる、つまり300字を超えるのが自然であろう。
ただ、特に男性向けのハイファンタジーや現実恋愛の作品において顕著であるが、タイトルが説明文的な長文タイトルで、実質あらすじであることがある。
この場合既に100字近くの作品の内容をタイトルに要約しているので、あらすじがその分短くても構わないとも言えるが、そこにある程度書いている分、より詳細なあらすじを書く作者もいるというところか。
逆に、文字数の少ないあらすじはどうか。例えば一文で終わるようなあらすじは良いのだろうか?
答えは簡単である。
それで読者が読むなら良い。読まないなら悪い。
一文でいけると言えるセンスがあれば最高だな。天才のひらめきに近いところなので、再現は容易ではない。
一文のあらすじで、わたしが見た中でこのあらすじは最高だなと思ったのでぱっと思いつくのは、やはりランキングのトップに立ち、そして書籍化したよ。
燦々SUNさんの『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』だ。
引用すると、
タイトル:時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん
あらすじ:ただし、彼女は俺がロシア語分かることを知らない。
こうなっている。
再現が容易ではないと言うのは、そもそも短いのに満点のタイトルを作る必要があり、あらすじにそれに対するオチを置くという形であるためだ。
このタイトルの強さに関してここで分析を記すことはしないが、およそラブコメとして最高のタイトルである。もしこのようなタイトルが浮かぶことがあれば、一文のあらすじに挑戦してみても良いかと思う。
あらすじの文字数や形式についてはここまでだ。次回は文章の内容について記すこととする。
まとめ
どういうあらすじを書くべきか
・本文を読ませるのがあらすじの目的。
・冒頭100字で読みたくなる、冒頭300字で面白そうと思わせる。
・注意書きなどは書くとしてもあらすじの後ろに持ってくること。書籍化は冒頭でも良い。
・段落の字下げは行った方が段落なし表示の際に見やすい。
・あらすじの長さは本文300字程度が良い。最大でも本文400字程度+注意書きや実績等で100字程度で500字までに収める。
・書籍のあらすじは200〜250字程度。
・一文のみのあらすじは天才の所業。