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昇格試験

 ギルドに帰っている途中、どうやってオークを討伐したのかという話になった。

 ちなみに、フィーユは寝てしまっている。きっとオークを目の前にした緊張や恐怖というあまり体験のない出来事で相当疲れが出たのだろう。実際戦ってはいないものの、子供なのだから精神的疲労が相当溜まったのだろう。今はサイノさんの背中の上で寝息を立てながらゆっくりと休んでいる。


 本題に戻ると、私はそのままのことを伝えた。私が一太刀でオークの首を切り落としたということを伝えると皆の空気というか、体までもが凍りついた。この状況が思いつかなかったわけではないが、まさかここまで固まるとは思わなかった。

 しばらくしてゴートさんがそれが本当のことなのかと尋ねてきた。私はその質問に素直にはいと答えると、理解ができないと頭を押さえていた。

 だか本当のことなのだから仕方がない。しかし常識ではこのことが有り得ないということは知っている。何せ普通のこのくらいの女の子はまず冒険者になることすらできないのだ。それに私は冒険者になりたてでランクはCなのだ。それなのにランク7のオークに勝つことができるのは有り得ないことなのだ。そんなことを実際にしてしまっているのだからそのような状態になるのはごく自然なことなのだ。


 暫くしてまた落ち着いたところで次は今後の方針について話し合うことになった。私がオークを倒したということは死体から見ても事実なのでもうこのことについては触れないことにしたようだ。触れたら触れただけややこしいことになるからだろう。

 そして今後の方針だが、今まで通りギルドで依頼を受け、それを達成してお金を稼ぐそうだ。実際それが一番効率的なのだろう。

 だが、一つ今までとは違ったことをするそうだ。それは私とフィーユをこれからどんどん鍛えていくということだ。今まではまだ早いからと特に何もしていなかったが、いつ何が起きるかわからないということでもう今のうちから強くならせるということらしい。

 

 だがまあ、正直私は蚊帳の外になるだろう。何せオークを倒してしまっているのだからもうこれ以上は望まれないだろう。

 それをゴートさんに伝えると意外な答えが返ってきた。


「いや、まだまだもっと強くなってもらうぞ。イムがどれほどの実力なのかはわかっていないが、俺たちが教えられることは全て教えるつもりだ。だからやることがないなんてことはないぞ。」


 な、なるほど。自分だけ楽ができてラッキー、なんて思っていたのに。まあ、仕方ないか。私が知らない魔法や剣術などもあるかもしれないしね。それじゃあフィーユと一緒に教わるとしよう。


 そんなこんなで歩いているともう街の近くまで来ていた。

 そこからも普通に歩いて行き、街に入ってギルドに着いた。ギルドに着くとゴートさんは受付の方に依頼達成を報告しに行った。その間私たちはいつも通りそこらの机に着くことにした。

 少しするとフィーユも起き出した。最初はここがどこかわからずにビクビクしていたが、暫くすると状況がわかってきたようでいつも通りに戻っていた。

 そうしてゴートさんが帰ってくるまで団欒していると暫くして帰ってきた。


「イムとフィーユ、少し着いてきてくれ。」


 帰ってきて早々にそう言ったゴートさんはそれだけ言ってまた歩き出した。よくわからないが、とりあえず二人でついていくと受付の前まできた。一体何をしにきたのだろう。


「ねぇねぇ、何しにきたの?」


「ああ、お前たちのランク昇格だ。オークを倒したんだ、そりゃランクくらい上がるに決まってるだろ。ましてや最低ランクが倒したんだからな。」


 なるほど、ランクの昇格か。それなら納得だ。いくつも上のランクの魔物を討伐したのだから、ランクが上がったって言い訳だ。というか、それが当然なのだろう。そしてランクの昇格には試験がある。だから私たちを連れてきたのだろう。

 けど、有無を言わさずに連れてくるのはどうかと思うのだが。


「でも、あのオークを倒したのはシーお姉ちゃんだし、私は何もしてないし、試験受けれないと思うんだけど。」


「いや、そんなことないぞ。お前だってその場にしっかりといた仲間なんだ。だから受ける資格は十分にある。まあ、まずは受けてみろ。試験に合格できなければそのまま、試験に合格できればそれだけの実力があるってことだ。」


「それはそうだけど、試験を受けるためには・・・」


「とりあえず受けてみようよ、フィーユ!私たちはチーム仲間で、一緒に戦ったんだよ!」


「そ、そっか・・・。うん、受けてみるよ。」


「よし、それじゃあ決まりだな。じゃあ受付さんに着いて行ってくれ。俺はみんなを呼んでくるから。」


 そう言ってゴートさんは戻って行った。私たちは言われた通りに受付さんに着いて行った。

 暫くすると最初に冒険者になるための試験を受けたところと同じところに着いた。

 そしてそこにはもう二人の試験官がいた。この二人は最初の試験官さんのトルネどさんとダイトさんとは違った。こう言っては悪いが、二人よりも明らかに強そうだ。

 一人は黒髪ですごく体つきがいい。いかにも厳しい試験官という感じだ。なんとなく騎士のような風格もある。少し老けて見えることからも、この職の前は本当に騎士だったのかもしれない。

 もう一人はあまり強そうには見えない、背が高くひょろっとした体格をしている。だがその横には強そうな犬?というか狼のような魔物がいる。おそらくこちらの方がテイマーの試験官なのだろう。


「こちらは試験官のお二人です。こちらの黒髪の方はヘルトさん、そしてこちらの緑色の髪色の方がテスクさんです。」


「よろしくな。」


「よろしくお願いします、テスクです。」


 予想は合っていたようだな。そして二人とも雰囲気通り。ヘルトさんは短く低い声で挨拶をして、テスクさんが少し人見知りっぽく弱気な挨拶。ついでにフィーユはヘルトさんの厳かな雰囲気に緊張気味。戦いに支障が出ないといいのだが。


「それではルール説明をしますね。まず今回はランクAへの昇格試験。モンスターはAランクのモンスターが二体。この二体のモンスターを倒すか、降参、あるいは戦闘不能で試験終了です。」


「ん?あの、Bランクへの試験なのではないんですか?」


「いえ、Aランクへのランク昇格試験だと聞いておりますが。どうかしましたか?」


 どうなっているんだ?まだ私たちはCランクなのに、いきなりAランクへの昇格試験なんて。何か手違いでも合ったのだろうか。普通飛び級なんてないはずなんだが。

 するとそこへ遅れてゴートさんたちがやってきた。


「ゴートさん、何故かAランクへの昇格試験になっているのですが。間違っていませんか?」


「いや、間違えてなんかないぞ?何せオークを倒したんだからな。Aランクでどうかと言ってみたら案外普通に通ったぞ。」


 それはありなのか?まあ、二度も試験を受けなくていいのはありがたいことなのだが。というか、こんなことができるゴートさんはすごく顔が広いのだろうか。

 そんなことを考えていても仕方がないか。私たちはとりあえず中に入ることにした。


 中に入ると早速テスクさんは入口とは反対側へ行き、準備万端という様子だ。もう一人のヘルトさんはゆったりと、でも緊張感のある立ち振る舞いで腕組みをしながら立っていた。そして有無を言わせない様子で少し前を指差して行けと言ってきた。

 もう少し待ってくれてもいいと思うのだが。まあ、そんなことを言ってもしょうがないので前は出る。ここはまず私から試験を受けるべきだろう。フィーユの手本にもなるし、何より姉なのだから妹よりも先にやるのは当然のことなのだ。


 私が前へ出るとすぐに号令がかけられた。


「それではこれより昇格試験を始める。試験官は魔物を前へ出し、受験者は構を取れ。」


 この号令と同時にテスクさんは横にいた狼を前へ出した。

 だが意外だな。てっきりあれは自分の身を守るような相棒だと思っていたのだが違ったのだろうか。普通の試験用の魔物らしかった。それとも私なんかにやられるわけがないと思っているのか。そしてもう一体も同じ種類の魔物を出していた。やはり試験用の魔物だったのだろうか?

 まあそれは置いておいて、私は刀を下段に構えた。これは冒険者試験と同じだ。だがここで"同じ戦い方か、つまらないな"などとは考えてはいけない。そう、これもある種の作戦なのだ。


 私が構えをとったことが試験開始の同意とみたのだろう、ヘルトさんは大きく張りのある声で開始の合図を叫んだ。

 同時に私は前方の魔物の方へ駆けていく。それに同調して二匹の魔物も左右から私を挟むように攻撃を仕掛けてくる。そこで私はまず右の魔物を仕留めることにした。そう思ったのなら行動に移す、剣を持つ手に少し力を入れながら右へ向かう。

 もちろん左も追いかけてくるが無視でいいだろう。まずは一匹目だ。私に向かって突進して噛みつこうとしている魔物に対しすれ違うように躱す。そして華麗な動きで首に一太刀。勢いに乗って前へ突進しないように体を回転してストップさせ、そのまま首を切り落として動かない魔物を風魔法で浮かしてもう一匹の魔物の方へ飛ばす。

 驚いた様子の魔物は突撃をやめ回避する。その隙に風の刃を大量に魔物へ向けて放つ。避け切れる量ではない刃の数に魔物は体を切られて死んだ。


 私が試験官のテスクさんの方を見ると、試験終了を告げた。試験が終了するとチームの皆が近づいてきた。皆おめでとうやすごかったの一言をくれた。私からもありがとうと言い、次のフィーユの試験を促した。私自身フィーユの戦闘が気になるから早く戦って欲しい。いよいよ次はフィーユの番だが、彼女の方を見てみるとやはり緊張していた。


お願いするんだぜ!

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